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ヨガ行者「ジェリー・ロペス」71歳

50年間のヨガ修行が、サーファー「ジェリー・ロペス」のサーフィンにもたらしたもの


「サーフィンが上手くなりたい」とサーファーは誰でも思っている。そのために何をするか?パドルアウトして波に乗る。もちろんだけれど、しかしこの道のエキスパートの多くは、サーフィン以外の方法も取り入れて、サーフィンの上達に役立てている。いつでもサーフィンができる準備を、陸上で整えておくのが理由だ。その方法としてサーフマスター、ジェリー・ロペスが選んだのはヨガだった。彼がヨガを実践していることはすでに広く知られているが、やはり50年というそのキャリアは相当な重みがある。改めて彼が語るヨガについて耳を傾けてみたい。

Gerry Lopez. Patagonia.com

ジェリー・ロペスのプロファイル:1948年ハワイオアフ島生まれのチューブライディングスペシャリスト。パイプランでの無駄を排除したエレガントなサーフィンで知られる。1970年にライトニングボルト・サーフボードを創立者の1人として立ち上げ一斉を風靡した。1972年と1973年のパイプラインマスターズチャンピオン。
(Encyclopedia of Surfingより抜粋)

https://www.gerrylopezsurfboards.com/

最初のヨガとの出会いはいつですか?

1968年の私がハワイ大学の学生だった頃ですね。ある日、女子学生たちが掲示板の前に集まっているところを見かけて、彼女たちに釣られて近づいてみたら、その夜、ヨガのクラスがあることが掲示されてあったんです。それでそのクラスを受けてみることにしました。彼女たちにまた会えるかな、なんて思ったりもしてね。笑

でもそのクラスで、思いがけないほどにヨガから大きな影響を受けて、ヨガが私の人生の大きな部分を占めるようになったんです。それを振り返ってみると、ヨガは人の人生に必要なときに現れるような気がします。ヨガは誰もが知っているが、いざ取り組んでみると思うようにはいかない。ぴしゃりと顔を叩かれたように、出会いが悪いこともある。期待とは異なっていたか、タイミングが合わなかったということもある。しかし私の場合、あのヨガクラスは、私にとってぴったりの出会いでした。そのときの先生は若いヒッピーのようで、サーファーのような雰囲気がありました。彼女のそのヨガの動きは流動的で、そのスムースな動きをサーフィンに取り入れてみたいと私は思いハマりました。完璧なタイミングでの出会いだったのです。

ヨガはどのようにサーフィンのパフォーマンスを補うのでしょうか?

まず初めに、サーフィンは波のあるときにしかできませんね。でもヨガはいつでもどこでもできます。サーフィンには体幹と柔軟性が必要です。この2つをヨガは向上させてくれますし、効果はすぐに現れます。体幹と柔軟性は互いに補い合います。またフィジカルな面だけではなく、メンタル面でもヨガは効果があるんです。ヨガは、呼吸がたいへん重要です。呼吸をヨガで学べば、呼吸をコントロールすることができます。

ワイプアウトしたとき、水中で呼吸ができなかったとします。苦しいときもあるでしょう。ヨガはどのくらい長く息を止められるかということだけでなく、そのようなシチュエーションで心を落ち着ける方法も教えてくれます。私はサーフィンを60年以上続けてきて、ヨガは50年になります、ヨガとサーフィンは、私の人生の陰と陽のような役割でバランスを取っています。これまで私はこの2つが並列に進む道のように認識してきましたが、しかし実践中にこれは1つの道なのではないかという気づきに至りました。この二つは一本の道で、一つの目標を目指しているが、ただそれぞれのやり方が違うだけだけなのだと。

The Surfers Journalより。ヨガマットなどまだ誰も持っていない時代に、彼は旅行の度に必ず携行した

サーフィンに効果のあるヨガの練習もしくはヨガのポーズを教えていただけますか?

誰でもそれなりに柔軟性はありますが、でもヨガを続けられないのは、フラストレーションを感じるからです。人は誰かのヨガのポーズを見て「そんなことできない」って思うんです。でもヨガを試してみると、できるポーズがあるんです。自分でできるポーズを見つけることは、やる気になり、別の難しいポーズへ取り組む上ではげみになるから重要です。完璧にポーズをすることではなく、ポーズを試みることが大切です。ポーズへの取り組みは、完璧にできないという袋小路にあなたを追い込むことではありません。その段階は進化の過程と考えるのです。その過程を自ら評価できればヨガの修練はやがて花開くでしょう。

私は長くヨガを続けていますが、いまだにできないポーズがあります。それを受け入れなければなりません。私がポーズをすると「どうしてできるんですか?」と質問されることがあります。私は「ヨガを長く続けているからですよ。サーフィンと同じです。サーフィンに費やした時間を考えてごらんなさい。その間、悩んだり、ワイプアウトもたくさんあったでしょう。良いことばかりではなかったはず。つまり何事も努力は必要、しかしヨガはサーフィンよりも努力が少し必要かな、笑」

ヨガはサーフィンの怪我や予防に役立ちますか?

通常のヨガの修練やプラーナヤーマの呼吸法は人の免疫システムに効果があります。またヨガは怪我の治癒を少し早めてくれます。プラーナをコントロールすることが鍵になります。

年令には影響はありますか?ヨガはサーファーを元気にしてくれるでしょうか?

一般論として、老化とは体の保湿力が衰えることや、可動域が減少することです。だからプロアスリートやスポーツをしている人が加齢によって怪我をするところは、足首や股関節や、腰、肩などの関節です。それらにヨガは、たいへん深く細部にわたって良い影響を及ぼします。それが、ヨガが加齢に有効な手段である理由です。長寿というだけではなく身体や心を鍛えてくれる効果があります。 

私はヨガを初めた頃よりも、現在のほうがつま先に手が届くんですよ。サーフィンと同じです。パドルを怠ればパドル力は衰えます。ヨガの修練を積めば、柔軟性を得ることができます。サーフィンへの取り組みを考えてみましょう。どのくらいパドルしたか、何回ビーチに行ったか?そして波が悪くてもパドルアウトしてみる。でどうなりました?気分は悪くないですよね?ヨガも同じです。クラスに出席してヨガをすれば、気分は良くなるんです。

サーファーはどのくらいヨガを行えば、サーフィンへの効果が自覚できるでしょうか?

毎日ですよ。笑

ワイプアウトで落ち着けるかどうかはともかくとして、一般論として、サーフィンはそのようなシチュエーションでの精神修養でもあるわけですが、ヨガはそのような修養の助けになるのでしょうか?

サーフィンを成功裏へと導くために、技術を磨くことも必要ですが、それと同じくらい、良い精神状態を得られれば、サーフィンを成功させることができます。言い換えれば深い瞑想状態に入らないと上手くいかないんです。海の中で精神を集中できていないと、つまり波に乗っていても他のことに気を取られているとワイプアウトしてしまいます。

この精神の集中は、人々が瞑想に入ろうと努力することと同じなんです。サーフィンの素晴らしさは、この精神集中に簡単に入り込めることです。集中して波に乗っている瞬間の精神状態はたいへん深いところに在り、鋭敏です。その瞬間あなたの意識は、何物にも囚われない世界にいるのです。それこそがサーフィンから享受される賜物で、崇高な精神統一の状態をあなたは維持(free ride)しているのです。じつはサーファーはそれを当たり前だと思っていますが、ヨギの行者はもっと過酷な修養でその精神状態を獲得しているのです。

インタビュアー:Dashel Pierson

ロペス氏のフィロソフィーが伝わる映像です。

この記事はサーフラインのHow Yoga Can Improve Your Surfing, with Gerry Lopez” を参考に構成いたしました。

(李リョウ)

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