サーファーが「波を予想する」ためには、日々の気象条件を把握し、実際に海を見て経験を積む必要がある。また、より高度な波予想をするには、一定の気象知識も必要だが、気象知識さえあれば、波を予想できるというわけではない。
本コラムでは、サーファー気象予報士である「Kazy」が、15年以上の波予報経験からなる統計知識と、それに基づく波予想のポイントを独自の切り口で紹介。定番のマニュアル知識とは異なる視点のテーマも含め、全10話でお届けします。
最初に
私がサーファー向けの波予報をやってきた15年間(2020年時点)で、利用者から最も多かった質問が「なぜ今日のサイズアップがわかったのですか?」です。
その回答として最も多かった “高気圧からのうねり” を今回は取り上げてみました。
この記事では基本的な事項に絞り、次回は少し専門的な内容を説明します。
そもそもうねりってなんですか?
超基本的な事項ではありますが、まずこれが理解できている必要があります。
うねりというのは近場で発生した波ではなく、遠くで発生した波が海面を伝播してきたものです。
「風」→「風波」→「風波+うねり」→「うねり」
というステップがあります。
うねりが発生する条件
遠くまで伝播するうねりは、まず上記の風波があることが絶対条件です。
その風波を起こしている風が下記3つの要素が必要です。
1. 一定の強さ以上の風であること
2. 一定の時間吹き続けること
3. 一定の距離を吹き走ること
高気圧の構造(垂直)
次に高気圧の垂直構造です。高気圧は上層(大気上層)で収束して下層(海面/地面)で発散しています。
高気圧の構造(水平)
次に高気圧の水平構造です。
高気圧は中心から外側に風を発散しています。その風によって波も発散するような向きに生成されます。
高気圧の波の成長
次に高気圧の風波の成長についてです。
前述の通りですが、まず風から波が起こります。そしてその風波は風が吹き走る距離に比例して成長します。
また風が吹き続ける時間にも比例して風波が成長します。
今回のポイント
今回のポイントは下記になります。
●「風」→「風波」→「風波+うねり」→「うねり」のステップ
●高気圧でも一定上の風の強さがあれば波が起こる
●風の吹走距離が風波を成長させる
●風の吹続時間も風波を成長させる
上記はいずれも高気圧からのうねりを理解するのにとても重要な基本事項です。
次回は、もう一歩踏み込んだ知識として「実践、うねりが入りやすい高気圧の位置」をお届けします。
(Kazy)
【サーファー的気象学】
第1回:数値予報資料のトリセツ
第2回:大気の立体構造をイメージする
第3回:高気圧からのうねりを見抜く
第4回:うねりが入りやすい高気圧の位置
第5回:停滞前線上のメソ低気圧のうねり
第6回:低気圧の位置ごとの波予測
第7回:実践“低気圧のうねり”特集
第8回:台風の嘘ホント
第9回:教科書では教えてくれない台風のうねり
第10回:自然で波を読むって楽しい