五十嵐カノアの2017年を振り返る

CT2年目、五十嵐カノアの2017年シーズンのハイライトは生まれ育ったカリフォルニア・ハンティントンビーチで優勝した『Vans US Open of Surfing』
そして、最終戦『Billabong Pipe Masters』での3位だろう。

2016年に18歳でツアー入りを果たしたカノアの2年目のシーズンは決して楽な道ではなく、年初にハンティントンビーチで開催されたQSの『Shoe City Pro』は優勝こそしたが、ローグレードの1,000で軽いウォーミングアップ程度にしかならなかった。

オーストラリア・ゴールドコーストで開幕したCTは最下位の25位、ベルズ、マーガレットリバーと続くオーストラリアレッグも13位、25位と悪い結果が重なってしまった。
第4戦のブラジルではR5まで進出、今シーズン初の9位となり、良い流れのままQS6,000『Ichinomiya Chiba Open』出場のために来日を果たしたが、難しいコンディションが続いた影響もあり、R3敗退に終わった。
再びCTの舞台に戻った後も結果は残せず、第5戦のフィジー、第6戦の南アフリカ「J-Bay」共に最下位。
CTからはリクオリファイも難しいランキングに…。

『Vans US Open of Surfing』で初優勝 PHOTO:© WSL/Van Kirk

カノアはシーズン後半に強い。
夏にホームのハンティントンビーチで開催される『Vans US Open of Surfing』がターニングポイントになるのだ。

2015年、大原洋人が優勝した年はSFで洋人と戦い、3位になり、その年にクオリファイを決めた。
2016年、ツアー1年目の年も3位に入り、その後のQSで2度も優勝してパイプラインではSFでケリーを倒してファイナル進出、惜しくも優勝は逃したが、日本中のサーファーを熱狂させた。

そして、今年は2年連続で壁になっていたSFでフィリッペ・トレドと対戦。「J-Bay」で圧倒的な強さを見せたばかりのフィリッペだったが、奇しくもシーズン2度目となるカノアに対してのインターフェアを犯して自滅。
念願の『Vans US Open of Surfing』のファイナルの相手はブラジリアンのトーマス・ヘルメス。誰よりもハンティントンビーチでの勝ち方を知っているカノアは、イベントを通してのハイエストスコアをファイナルでマークして圧勝。
2010年のブレット・シンプソン以来、7年ぶりにホームの選手が手に入れた栄冠に会場は大興奮。

ヒート前のルーティーン PHOTO:© WSL/Sherman

最も欲しかったであろうホームでの優勝は彼を別人のようにハイテンションにさせ、ビーチは割れんばかりの歓声に包まれた。

この優勝の喜びをカノアはこう語った。

「自分にとってハンティントンビーチは全てさ。ここでサーフィンを覚え、家族と友人がいる特別な場所なんだ。US Openは初めて見たプロのコンテストで、興奮しながらカラニ・ロブとかのヒートを見ていたよ。あんな凄いサーファーと一緒に’US Open’に出場して大勢の観客の前で優勝することを考えていた。それが叶ったんだ。今日という日は絶対に忘れないよ」

『Vans US Open of Surfing』はQSで最もグレードが高い10,000。
この優勝でQSランキングを一気に66位も上げて3位になり、QSの方からのリクオリファイの可能性が高くなった。

『Future Classic』で4位に入る  PHOTO:© WSL/Morris

『Vans US Open of Surfing』の優勝でリクオリファイを固めたカノアはプレッシャーから解放されたこともあり、QSで4位と5位。
更にCTでもトラッセルズで今シーズン初のQF進出を果たし、5位に入る。

ケリー・スレーターのウェイブプール、「サーフランチ」で開催されたテストイベント『Future Classic』にも招待され、強敵に伍して4位と健闘。
2018年はこの「サーフランチ」が正式にCTの舞台として使用されるため、この4位は大きな自信になるだろう。

ポルトガル戦ではシーズン2度目の5位 
PHOTO:© WSL/Poullenot

英語、日本語の他にポルトガル語も堪能なカノア。
ガールフレンドがポルトガル人で、友人も多く、コンテストでも相性が良い。

2016年はQS6,000『Pantin Classic Galicia Pro』で優勝、今年は同イベントで5位。
CTでも今年のポルトガル戦は5位に入る活躍を見せた。

そして迎えた最終戦のハワイ、『Billabong Pipe Masters』
今年もカノアは快進撃を続け、SF進出。
9歳に初めて訪れてから毎年通っているノースショア、パイプラインは以前にインタビューで自信があると話したほどで、波に恵まれなかった今年もスコアが出るバレルの見極めが素晴らしかった。

結果は3位。
CTのランキングを17位に上げて2年連続のダブルクオリファイ(QSと両方決めること)を果たし、QS11位だったマイケル・ロドリゲスのクオリファイ。
更に同じスネークことジェイク・パターソンのコーチを持つグリフィン・コラピントのトリプルクラウン獲得にも貢献した。

来年2018年はカノアの3年目のシーズンになる。
インタビューでよく口にする「まだ自分は子供だから」という言葉も20歳になったことで変化が出ることだろう。

ちなみにカノアの背番号「50」は名字の「五十嵐」の意味を含むそうだ。
『Billabong Pipe Masters』終了後、両親の母国である日本に戻ったカノアは都内で会見を開き、2020東京五輪には日本代表として出場する意向を改めて発表。
そして、家族や親戚の前で金メダルを獲得したいと公言した。

バレルのスキルはすでに一流 PHOTO:© WSL/Cestari

WSL公式サイト

(THE SURF NEWS編集部)

COVER PHOTO:© WSL/Poullenot

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