勇気を出してもう一歩!という前に、そのメカニズムを理解すれば憧れのノーズに立てる日もそう遠くはないはず!
ロングボードに立ちフェイスを滑走、クロスステップからのハングファイブ、ハング10、チャンスがあればヒール10!
ノーズライディングは、ロングボードサーフィンの華。でもどうしてその先っぽに両足で直立し、前のめりに突っ込まないんだろう?って不思議に思う。ありえないでしょう?しかし、ノーズライドの四つのメカニズムを知ればアリエールことが誰にでも理解できる。
その一、『揚力』による効果
波のフェイスをサーフボードが滑ったとき、サーフボードを持ち上げようとする力が発生し「揚力」と呼ぶ。その揚力とほぼ同時にプレーニングという現象が起こる。プレーニングとは、湖で石を投げて跳ねさせる「水切り」と同じ原理で、ボードが水面をスキップしている状態をいう。ただしサーフィンはスキップが連続しているのでスムースに進んでいるように見える。
話は変わるが、飛行機は空気中でこの揚力を利用して空を飛ぶ。だから英語で飛行機をエアープレーン(エアー(空気)+プレーニング)と呼ぶ。
さて、サーフィンは翼が無くてもプレーニングが起きる。水は空気より密度が600倍とも900倍とも言われていて、速度が増せば増すほど揚力は上がるから、ノーズに足を載せてもボードは沈まない。
しかしノーズライディングは揚力だけでは十分でない場合もある。全体重をノーズに掛けると、シーソーのように前方に体重が掛かってしまい、サーフボードの重量のバランスが崩れ、前のめりで突っ込んでしまうからだ。もう一つのメカニズムが働かなければ、ノーズライディングはなかなか難しい。それをロックオンと呼ぶ。
その二、『ロックオン』による効果
サーファーがノーズライディングをしている写真を観察するとき、ついノーズのところに集中しがちだが、サーフボードの後方がどうなっているか気づいた人はいるだろうか?
サーファーがノーズに立つと、ボードの後方に波が覆いかぶさっているのに気づくと思う。それは崩れた波がサーフボードのテールを保持しているために、ライダーがノーズに立っても、サーフボードが前方に突っ込まない。この状態をロックオンと呼ぶ。
その三、サーフボードの『レール』による効果
ノーズライディングが好きなロンガーは、クラシックなデザインのボードを好む。その理由はロックオンしやすいデザインだから、という理由がある。
カービング重視のサーフボードはダウンレールと言って、サーフボードのレールの断面形状が「かまぼこ」のように角張り、スノーボードでいうエッジの役割を果たしている。そのエッジがあるから、ダウンレールはシャープなターンが可能なのだが、ノーズライディングを重視したロングボードはエッジの無いソフトレールになっている。それはなぜか?ソフトレールは波のフェイスとの反発が少なく、フェイス内に沈み込み、ロックオンしやすい効果がある。つまりダウンレールは波のフェイスとの反発の強さを利用してターンしているが、ノーズライディングだけを考えると、ソフトレールのサーフボードの方がロックオンしやすくノーズライディングに有利となる。
その四、ノーズコンケープで揚力アップ
ロングボードにはノーズが大きく凹んでいるデザインがある。これをノーズコンケープと呼ぶ。揚力の力を増やすためにトム・モーレイというサーフボードデザイナーが考案したと言われている。これはボードが前方に進むときに、魚の大きな口のように水をしっかり捉えて、ボードの下を通過させて揚力を増す効果がある。しかしノーズコンケープが無いサーフボードでも揚力は発生しノーズライディングができないということはない。
まとめ
ロングボードはユーザーフレンドリーで親しみやすく、小さい波でも楽しむことができる。スープライディングからサーフィンを練習し、波のフェイスを滑れるようになったらノーズに挑戦してみよう。初めの一歩がなかなか難しいが、ノーズに片足が着いたときの達成感は、他にはありえないほど爽快。 このコラムでノーズライディングのメカニズムを理解して、ノーズへの挑戦や次のサーフボードを選ぶときの参考になれたら幸いだ。究極のヒール10目指してがんばろう。
(李リョウ)