『Ichinomiya Chiba Open』ファイナルデーリポート
All Photo:THESURFNEWS
CTが久しく開催されていない日本では貴重なQSのハイグレードイベントQS6,000『Ichinomiya Chiba Open』が今年も千葉の志田下で開催された。
今年はブラジル、バリでのCTのスケジュールに重なったため、CT選手の参加はなかったが、QSのトップ選手が勢揃い。
イベント前半は通過した低気圧の影響などでウネリも豊富にあり、見応えある戦いになった。
ブラジリアンの活躍が目立った一方、ヤングハワイアンのセス・モニーツが高さのあるフルローテーションエアーで唯一のパーフェクト10。
彼の勢いは止まらず、サイズダウンして風の影響も入った難しいコンディションへと変化していったイベント後半も快進撃を続け、QSで初のファイナル進出を果たした。
昨年、新井洋人がQF進出を果たした日本勢。
今年はR4まで進出した村上舜の17位が最高位。
自国での開催はプレッシャーが強かったのか?
ライディング的にも外国人選手とのラインやパワーの差を感じざるを得なかった。
今回の志田下のようなコンディションはQSではアベレージであり、小波だから有利、自国だから有利ということは全くない。
日本で生まれ育った日本人選手は根本的な何かを変えなければクオリファイは無理なのか?
五十嵐カノアの次の’日本人’のCT選手誕生はまた遠くなってしまった印象だった。
5月26日に迎えたQS6,000のファイナルデイはコシ〜ハラサイズのオンショア。
イベント期間中で最も厳しいコンディション。
セス・モニーツとファイナルを争ったのは2016年に1年だけCTを回ったオージーのライアン・カリナン。
勢いからすればセスが優勢の勝負だったが、思慮深く、落ち着いた試合運びをしたライアンのペースでファイナルは進行。
前半に一度逆転したライディングがセスのピークとなり、中盤〜後半はライアンがじわじわと引き離して優勝。
2016年にCT入りしていたライアンだが、意外にもQSは初優勝。
昨年のベストリザルトが9位だったことを考えても、今年は幸先良いスタート。
QSランキングを一気に4位まで引き上げた。
「信じられないね。ホームにいる家族や友人に感謝したい。そして、亡くなったばかりの両親にこの優勝を捧げるよ。最高の気分さ。両親が僕に波を届けてくれたのかな。この優勝はランキングに大きな影響を与えるけど、今はそのことは考えず、ただ勝利の余韻に浸りたい。今日のような難しい波でも、適応して2つのスコアを得ることは出来た。セスは10ポイントを出すなど、このイベントで素晴らしい活躍をしていたし、凄いサーファーさ。それに大きな未来が待っている。彼と一緒にこの優勝を分かち合いたい」
ライアン・カリナン
初のCTシーズンの直前、2016年2月に白血病で長い闘病生活の末に父親が他界。
2017年の母の日には母親がショック死と若くして両親を失ったライアン。
そのことを告げた時は天を見上げ、涙を流していた。
26歳の誕生日の前日にQS初優勝を成し遂げたのも何かの運命か。
ちなみにライアンのInstagramのポストはとてもアーティスティックだ。
今イベントを最も盛り上げた選手の一人、セス・モニーツ。
プロサーフィン創設期のメンバーであり、パイプラインのレジェンド、トニー・モニーツを父に持ち、姉は2度もロングボードのワールドタイトルを獲得しているケリア・モニーツ。
ハワイの伝統的なサーフィン一族、モニーツ兄弟の末っ子、四男。
今年は三男のジョシュア・モニーツが『Volcom Pipe Pro』で優勝して話題になっていた。
当然兄にはライバル心を燃やし、それが良い形で今回の結果に結び付いたと言える。
ハワイのナショナルチーム並びにBillabongのコーチも務めるレイノス・ヘイズのサポートも大きかった。
ファイナルデイには叔父のカービー福永の姿も。
「このイベントは大きな自信を与えてくれたよ。そして、自分をネクストレベルに押し上げてくれた。もう、次の舞台である’Ballito’に気持ちを切り替えている。今回の勢いも維持したいね。良いスコアを出せたこのイベントは勉強になった。もっと上を目指すためのモチベーションにもなったよ」
セス・モニーツ
世界のQSを転戦している多くの選手はこれからインドネシア経由で南アフリカに向かう。
6月25日〜7月1日には今シーズン6戦用意されている最もグレードが高い10,000『Ballito Pro pres by Billabong』が開催される。
昨年の3,000からグレードダウンしたウィメンズは日本人選手が中心の戦い。
ディフェンディングチャンピオンの川合美乃里はQFで敗退、その彼女を倒した数少ない外国人選手の一人、カレル・ポケ(PYF)がファイナル進出。
一方、QFで強豪の前田マヒナとのクロスゲームを制し、SFで橋本恋を圧倒した15歳の松田詩野がもう一人のファイナリストに選ばれ、ボトムをしっかりと使った大きなサーフィンでこの日2本目の8ポイント台をマーク。
後半、焦りが見えたカレルを冷静にかわして2016年の『Trump Hyuga Pro』以来、2度目のQS優勝を決めた。
なお、12歳以下のグロムはローカルの岩見天獅が優勝。
2020年東京オリンピックの強化指定選手でもある彼の成長に注目したい。
『Ichinomiya Chiba Open』
QS6,000
1位 ライアン・カリナン(AUS)
2位 セス・モニーツ(HAW)
3位 ノエ・マア・マクゴナグル(CRI)
5位 ジャドソン・アンドレ(BRA)、マルコ・フェルナンデス(BRA)、チャーリー・マーティン(FRA)、アレホ・モニーツ(BRA)
ウィメンズQS1,000
1位 松田詩野
2位 カレル・ポケ(PYF)
3位 黒川日菜子、橋本恋
5位 川合美乃里、野中美波、西元ジュリ、前田マヒナ
(空海)