ワイメア、ナザレ、マーヴェリックス、Jaws。
冬にベストシーズンを迎えるビッグウェーブスポットが軒並み桁違いのサイズアップをしてSNSや世界中のサーフィンメディアにその映像が送り届けられている。
ワールドタイトルを獲得するのとは違うサーフィンの究極の世界。
そこには生死を賭けた様々なドラマが一つ一つの波に存在している。
今回はWSLがピックアップした16歳のフレンチサーファー、ジャスティン・ビークレットがマウイ島の「Pe’ahi」、通称Jawsにチャレンジしたストーリーを紹介する。
Jawsは数あるビッグウェーブスポットの中でも世界的に有名であり、ブレイクした時はマウイ島はもちろん、他の島や国からもトップレベルのサーファーが集結する。
つまり、サーフィンの技術やビッグウェーブでの経験の他に彼らとのコミニュケーションや、駆け引きが必要になる。
2017年11月に16歳になったばかりのジャスティンは、早い段階からビッグウェーブの世界に足を踏み入れ、今回恐ろしい経験をした。
「Pe’ahiが上がった日、ある一本の波でコブに吹き飛ばされてしまったんだ。ベストの紐(エアが入って浮き上がるシステム)を引っ張って水面に上がった時、これまで見た最大でヘビーなセットが目の前で割れてしまい、もろにくらったんだ。落ち着いて出来る限りの空気を肺に入れようとしたよ。そして、自分にどうにかなるだろうと言い聞かせたんだ」
CTの舞台でもお馴染みのフランス南西部の美しいビーチ「ホセゴー」を拠点にしているジャスティン。
過去にJawsにチャレンジしたこともあったが、今回の波のサイズは彼にとって新しい領域だったそうだ。
「Pe’ahiには昨年も来てサーフィンしたけど、それほど大きいサイズでは無かった。マウイに住んでいるタイラー・ラーロンド(かつて15歳でJawsに乗った最年少サーファーと呼ばれていた)と彼の家族、更に安全のためにマウイのスカルベースとチームを組んだのさ。ベンジャミン・サンチス(フランスのビッグウェーバー)とも一緒に海に入るなど素晴らしいサポートを受けたよ。彼らにはここが本当に大きくなった時は全く違うからねと警告されていたけど、今年はその波を見ることが出来たね。凄いヘビーな波で、信じられない光景だった。あのセットをやり過ごして生還した経験、怖かったけど、凄い価値があった」
フランスのBelharra、アイルランドのMullaghmoreでもビッグウェーブの経験を積んでいたジャスティン。
今回のJawsでのチャレンジ、生死を彷徨うようなワイプアウトでもう一歩先に進んだと言える。
世界的に見てもこれだけの経験をしている同世代のサーファーは非常に少ない。
それだけ危険であり、難しいことなのだ。
「あの日のJawsでは、SNSやサーフムービーでしか見たことが無かった人達を生で見れて最高だった。シェーン・ドリアン、イアン・ウォルシュ、アーロン・ゴールド、フローレンス兄弟、素晴らしい波で彼らのアプローチの様子を見ることが出来た。彼らの動きやキャッチした波、全体的なことがとても印象的だったね。可能な限り、多くのことを吸収しようとトライしたよ」
まだ16歳でWSLではジュニア枠の彼はこれからコンテストのためにオーストラリアに向かい6週間を過ごす。
ハワイではJawsの他にオアフ島のノースショアにも興味を持っているそうだ。
無限大の可能性を持つ彼のサーフィンライフ、世界トップのビッグウェーブスポットであるJawsとの関係がこれから先も続くのか、コンペティションの世界に進むのか、その未来はどうなるのだろう。
「ホームではビッグウェーブでも怖い思いをしたことが無かった。父に連れられて海に行っていた子供の頃もね。だから、今回のようにトリップして他のビッグウェーブスポットで入れるチャンスを得たことは幸運だと思うよ。あんな巨大なPe’ahiでサーフィンする予定は無かったんだけど、周囲の人のおかげでそのチャンスが生まれたんだ。これからも時間があれば経験を積んでいきたい。将来的には機会が増えるだろうね」
COVER PHOTO:© WSL/Billabong Europe