reference : https://bonzer5.com

「ボンザーってどうよ〜」
-21世紀になってつぎつぎと復興するクラシカルなサーフボードデザイン-

シリーズ「サーフィン新世紀」⑥

1970年代にCAのオクスナードで誕生したボンザーシステム。もう博物館でしか見られないかなと思っていたら、21世紀になって復活。サーフィン映画「Shelter」で登場して話題になり、ジョエル・チューダーとかアレックス・ノストたちが乗りだし、オシャレ大好き系なサーファーたちに支持されて、ついにはあのチャンネルアイランド・サーフボードまでがボンザーシステム(以下ボンザー)を発表し話題になっております。
僕もじつは友人のボードビルダーにボンザーを作ってもらって乗っております。面白い!そのインプレをブログにも数年前に書いたのですが、そろそろリバイズしよう思いましてThe Surf Newsで取り上げていただきました。

ボンザーシステムの生みの親、キャンベル兄弟。父親の助けもありハルデザインや流体力学の理論も取り入れてボンザーシステムが誕生したという。写真左は彼らが開発した初期のボンザー。右はオーストラリア製のツインフィンで波が大きくなるとコントロールが難しい欠点がありそれを改善しようという発想からがボンザーが誕生したという。
Malcolm & Duncan Campbell. They made the history.
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ようするに「ボンザーってどうよ~」という多くの質問にお答えしようと思うわけです。
このボンザーの誕生裏話とそのテストライダーとなったラッセル・ショートのヒストリーは、ザ・サーファーズジャーナルの『インフルエンサー』に詳しく載っておりますのでそちらをご覧いただければ幸いです。
とにかくカリフォルニアのオクスナードといえばヘビーなローカリズムで泣く子も黙るサーフエリア、そこで誕生したボンザーはかなりアンダーグラウンドでカウンターカルチャーな存在感がありますね。性能の良し悪しはともかくとしてもボンザーにはアンダーグラウンドというか反主流な魅力があるといえます。これ持ってビーチ歩くだけでソウル感バリバリ伝説。

さて正確を期するためにもボンザーシステムについてオフィシャルページにアクセスします。
するとそこにHow the Bonzer System Works(ボンザーシステムはどう機能するか)というページがありました。英文ですから訳してみますね。(現在のHPには載っていません)
https://bonzer5.com

 

キャンベル兄弟がボンザーの開発中に描いたと思われる図。チャンネルボトムやコンケープと同様にボトムの下を流れる水を制御する。個性は強くツボにハマるとヤバい。
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ボンザーシステムはどう機能するか

ボンザーシステムの最大の目的は水の流れを制御するところにあります。その制御をフィンとボトムのデザインによって成功しました。サーフボードでターンをするとき水はサーフボードに対して斜めから流れてきます。このシステムはサーフボードのテールエリアに流れる水からのエネルギーをフィンとボトムの相乗効果によって最大限に得られるようになっています。
ボンザーサイドフィンのベースの長さは9’3/4”(約24.8cm)ですが、高さは最高で2’2/3”(約7cm)しかありません。またそのサイドフィンの取り付け角度は浅く、水の流れに対して抵抗を少なくしています。これはレールからレールへのトランジション(切り替え)を簡単にしてくれます。
つまりサーファーはレールワークの努力を最小限に抑えられるのです。ターンをしている間、サイドフィンは水面に対してほぼ垂直の角度を維持しているために繊細なエッジコントロールを可能にします。ボトムに対して斜めに入ってきた水は外側のサイドフィンによってテール方向に押し出されるようになります。私たちはボトム(他のサーフボード)を流れる水が外側のレール方向へ逃げてしまっている写真を見たことがあると思います。ボンザーコンケーブと長いベースのサイドフィンはテールエリアを流れる水の進行方向を変化させる効果が他のデザインより高いのです。
このボンザーシステムが最大に効果を発揮するのはターンのときです。サイドフィンは基本的にコンケーブの延長で、カーブしたボトム面を流れる水が起こす抵抗を最小限に抑えます。その抵抗の減少は画期的です。私たちが開発するサーフボードは、エネルギーを効率良く取り込み、かつコントロール性能の良いサーフボードを目指しています。つまりサーフボードのボトムの下で起こる水流の乱れを抑えるということに繋がります。

How the Bonzer System Works

The primary purpose of the Bonzer system is to efficiently organize water flow. We have done this by designing fin and bottom systems that work in a synergetic fashion in order to maximize the use of the energy that is created by the water passing through the tail area of the board. When you’re doing a turn, the water travels diagonally across the bottom of your board. The Bonzer side fins have a base totaling 9-3/4” on each side, and a maximum depth of only 2-3/4”. The angle, combined with the shallow depth of the fins, allows the fins to come in and out of the water with little resistance. This makes rail-to-rail transition much easier, which in turn allows you to keep your board on the rail with much less effort.

While turning, the fins on the inside rail are fairly vertical in the water, providing very refined edge control. As the water races across the bottom, the outside fins deflect it down and back through the tail. We have always looked at the water that escapes off the outside rail as unused energy. The combination of the Bonzer concaves and the long base of the side fins redirect far more water through the tail area than other designs. This maximizes the use of the force that is created during turns. The fins are essentially an extension of the concaves and, since water adheres to curved surfaces, there is very little disturbance as the water passes through the fin area. This dramatically reduces drag. Basically, we have tried to create surfboards that you can get more out of with less effort and energy input. It’s all about reducing entropy.

 

天才サーファー・ラス・ショートとボンザーシステムとの出会いによってこのデザインの優秀性は証明されたが、あまりに進化しすぎて当時の時代とはリンクしなかった。現代のサーファーならばこのシステムの有効性を十分に認識できるだろう。マッシーな風波で乗ってもボンザーは意味がない
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インプレッション

僕が乗っているボンザーはキャンベルのオリジナルではなく、浜松の小畑智昭氏のシェープによる5フィンボンザー。いろいろわがままを言って作ってもらいました。シェープだけでなくフィンからそのグラスオンまでハンドメイド。コンケープは深いがオリジナルほどではなく、テール形状はウイングスワロー。
さてボンザーに乗ってみて感じるのはスピード感です。ボトムターンの伸びはすばらしいものがあります。レトロタイプのツインフィンやミニシモンズもスピードは出ますが、ボンザーはそれとはフィーリングが少し異なります。中心にフィンがありますからシングルフィンに近い感じなんだと思います。シングルフィンで大きくレールターンしながら加速している感じですね。
僕はこのフィーリングをアメ車と表現しています。トライフィンのモダンショートボードがきびきび走る欧州車とすれば、ボンザーは排気量の大きなアメ車のような加速感を持っています。だからその乗り味が好きなサーファーにはたまらない魅力があります。

photo by Ri Ryo sheped by Tomoaki Obata 5’8”x20”x2”1/2”
個人的にリーフブレイクで使用することが多い。波のフェイスを横に走らせるツインフィンに対してボンザーは円弧の大きいターンで攻めるフィーリング。クリティカルなポジションでの安定感はすばらしい。

 

またスピードに乗るとターンは意外なほどルースです。ボンザーシステムのボトム形状を見ると、「これでターンできるのかな?」と誰もが思いますが乗ってみると意外とルース、ただしスピードが出ていればの話です。
ルースになる原因は、これは独自の解釈ですが、おそらくサイドフィンに揚力が発生するからじゃないかと思います。つまりジェット機の翼のようなサイドフィンに揚力が発生しでテールが浮くのだと思います。またクリティカルなポジションでの安定感は抜群です。サイドフィンががっちりフェイスを捉えるからでしょう。
ボンザーは好き嫌いが分かれますが、嫌いな人はマッシーな小波で試した人じゃないでしょうか。ボンザーの効果を十分に発揮させるにはスピードが必要だと僕は思います。ボトムターンでの加速を上手に制御できるサーファー。パワーのある波や、下半身でサーフボードをしっかり踏み込んで加速するのが好きな人は面白いと感じるでしょう。

ジェット戦闘機の翼のようなボンザーのサイドフィンは、水が流れると揚力が発生してテールコントロールがルースになる性質があるではと思っている(RR)
写真出典元不明

 

ボンザーの弱点

サーフボードのボトムを流れる水をテール方向へ吐き出して推進力に変えるボンザーはすばらしい加速感が味わえますが、弱点もあります。ジャンクな波のコンデションを苦手とします。波のフェイスが荒れると、そのデコボコにボンザーが影響を受けてしまいます。サスの固い車で荒れた路面を走るような感じです。これはチャンネルボトムなども同じですね。

したがってボンザーは波を選びます。相性が良いのはクリーンなフェイスでパワーもある波。リバーマウスとかリーフブレイクとかは相性が良いでしょうね。トライフィンよりもターン時に加速感があり円弧が大きくなる傾向があります。だからオフザリップの好きなコンペ志向より、ホームブレイクの波をカービングで追求するタイプのサーファーに向いているといえるでしょう。
テイクオフでストレートにダウンザラインを試みるとボードが走り出すまでにタイムラグが若干起きるような気がします。サイドフィンに対する水流との抵抗が若干あるのかもしれません。いずれにせよこのマニアックなボードデザインについては賛否両論だとは思いますが、魅せられたサーファーは手放せなくなるでしょう。

李リョウ

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