Reference:Free ride,EOS

世代を超えて愛される映画「フリーライド」の裏話と監督ビル・デラニー

映画『フリーライド』について

1977年に初演されたこの映画は、サーフィンの新しい時代の到来を高らかに宣言した作品といえる。監督&プロデュースはカリフォルニアのフィルムメーカー、ビル・デラニーで、プロサーファーのショーン・トムソン、マーク・リチャーズ、ウェイン・バーソロミューの知名度を決定付けた作品でもある。そしてウォーターショットを撮影したダン・マーケルもその功績が賞賛された。「『フリーライド』はフィルムで撮影された最後の偉大なサーフィン映画」と評されている。

映画「フリーライド」は、アグレッシブなオーストラリアや南アフリカのサーファーによる高度なパフォーマンスを中心としたことによって世代交代を促すことになったとも評されている。
デラニーは27才のときに写真大学のブルックス・インスチュートを中退し1975年から映画「フリーライド」を作り始め、オーストラリア、インドネシアそしてカリフォルニアを旅して撮影を行った。デラニーはハワイのウインターシーズンで良質な波に恵まれた1976-76年シーズンに米サーフィン誌のトップフォトグラファーだったダン・マーケルを雇って超高速度撮影のフッテージを製作した。

映画フリーライドより ショーン・トムソン

マーケルは動画を撮影した経験がそれまでなかったが、情熱的に取り組んだだけでなくサーファーとの信頼関係も築いていた。カメラ機材は10kgもあるハイスピードカメラで1秒間に200フレーム撮影することができた。マーケルは波のインサイドでそのカメラを構えて、ディープなチューブを通過するサーファーの撮影に成功した。その美しい映像はこれまでのサーフィン映画ではまだ誰も見たことのなかった画期的なシーンとなった。その撮影場所はオフザウォールだが、その名もこの映画によって有名になった。オフザウォールは、当時はブレイクが早すぎてハワイアンはそこでサーフしようとしなかったという裏話もあった。ビジターにとっては都合が良かったというわけである。
ウォーターショットはマーケルが撮影し、デラニーは陸上から撮影する。

映画Free rideより

陸上での撮影ではデラニーは特にバーソロミューに焦点を当て、彼がサッカーやピンボール、スケートボーディングそしてノースショアのうらびれた部屋でくつろぐシーンなどを撮影した。しかし当時最も進んだサーフパフォーマンスを披露したのはトムソンとリチャーズだったといえよう。またノースショアの冬は天候が気まぐれで有名だが、この映画の撮影中は良いコンデションが続くという奇跡にも恵まれた。

映画の編集ではデラニーはその音楽センスをいかんなく発揮、パブロクルーズなどのメジャーレーベルの音楽を使用したことも、この映画の成功と世代を超えて支持される理由と言えるだろう。

日本ではこの映画のサウンドトラックを録音した海賊版のレコードアルバムが出回ったこともあった。またナレーションにはハリウッドの俳優のジャン・マイケル・ビンセントを採用したが、抑揚の無いユーモラスに欠けたその話し声はこの映画の唯一の欠点と評する者もいる。

制作費は7万ドルで当時としては最高額。映画の初上映はホノルルで1977年に行われ、その後数ヶ月は世界中のサーフシティで満員の客を集めて上映された。1978年にアップデートされた映画「フリーライド2」が、また1983年には「フリーライド・ファイナルエディション」が発表された。1999年米サーファー誌は最も影響を与えたサーフィン映画として「フリーライド」を「エンドレスサマー」「エボリューション」についで3位に挙げた。

(李リョウ)

この記事の情報ソースはマットワルショーのサーフィン百科事典を基に構成いたしました。
This article is based on The Encyclopedia of Surfing by Matt Warshaw

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