photo by RiRyo

「リーシュコードは便利だが、命綱ではない。」サーフリーシュの作法とトリビア

シリーズ「おいらはサーファーの味方」⑨

たまにはリーシュコードのことも少しは考えよう。サーフィン上達のヒントが隠されているかもしれないから。


もしサーフリーシュがこの世に存在しなかったら、現代のサーフィンが抱えるいろいろな問題はすぐに解決するだろう。まずサーフポイントの混雑が解消される。セットが入れば海は一掃され実力のあるサーファーだけがラインナップに残る。サーフボードの傷は増えるかもしれない、でもサーフショップもファクトリーもリペアで潤うしサーフボードのオーダーも増える。水難事故だって減る。リーシュが無いと事故が減る?本当に?そうなんだな、リーシュに頼ってサーフィンをしていると水難事故は増える。ボードを流して回収のために泳ぐ、この大切なトレーニングを現代のサーファーは忘れている。

シングルフィンの時代ハワイのノースショアーはノーリーシュでのサーフィンが主流だった。ジェリー・ロペスの古い写真を見てみるといい。彼のライトニングボルトにはリーシュカップすら無かった。今ではノースショアでもリーシュが常識になったけれど水難事故は逆に増えライフガードは昔よりも忙しいという。リーシュに頼ったサーファーが溺れるからだ。

さてサーフリーシュの誕生はいつ?どんな風に生まれたか知っているだろうか?諸説あるが、有力なのがサンタクルーズのサーファーによる発明というもの。最初は医療用のゴムチューブを手首に巻き、吸盤でサーフボードにぺったんこしたらしい。「それってダサくね」と誰もが思ったらしいが、リーフブレイクの多いサンタクルーズではサーフボードを流すと傷だらけになってしまい、ダサいけどボードが傷つくよりいいやと吸盤&ゴムチューブをサーファーが使いはじめた。

Reference photo: Encyclopedia of surfing. https://eos.surf/blog/

そんなある日、ある一人がペット用の首輪をゴムチューブと繋げて足首に巻きつけた。さらにフィンにドリルで穴を開けて結ぶようになり、見た目も使いやすさも改善されて一気に普及したという。サンタクルーズのペットショップでは首輪が売り切れになったそうだ。このサーフリーシュの誕生にはオニールウェットスーツの創立者ジャック・オニールも関わっていて、いち早く製品化して全米に売りさばいた。ちなみにジャックの片目が不自由だったのはゴムチューブのリーシュが原因の事故によるものらしいが、諸説ある。

このようにしてサーフリーシュの原型が誕生した。やがて現在のウレタン製コードやレールセーバー、そしてリーシュカップなどの誕生でサーファーにとってはなくてはならないツールとなった。ビッグウェーブでもリーシュは不可欠な存在となりジョーズの30フィートでも装着している。

ビッグウェーブだからリーシュ装着はとうぜんと思うかもしれないが、リーシュはしない方が安全という考え方もある。なぜかというとワイプアウトしたときにホワイトウォーターがサーフボードをまるで凧上げのように引きずる場合があり、そうなってしまうとサーファーは海のなかでいつまでも引っ張られて海面に上がれないということが起きる。日本ではあまり聞かない話だがハワイのノースショアではよく起こる現象だ。バレルの中でワイプアウトするときもサーフボードがサーファーから離れずに危険な場合もある。ジョエル・チューダーがパイプラインでリーシュを使わない理由の一つがこれだ。

さて、リーシュの作法といっても使い方に関しては説明がいらないほど簡単だが、これまでサーフリーシュを使っていて感じた点をいくつかぼやいてみよう。まず足首に巻くベルクロのベルトには鍵などを入れる隠しポケットが付いている。カリフォルニアではメキシコの国境を越えるときにこのポケットにマリファナを隠したという噂を聞いたことがあるが定かではない。

新品のリーシュはベルクロの接着力が弱いことがよくある。足首に装着するときは何度か締め直すと接着力が高まり剥がれにくくなる。足首の横から真後ろまでの90度以内にリーシュのジョイントがくるようにベルクロをしっかりと巻きつける。どのポジションが良いかは試してみて自分のベスポジを見つけるといい。ちなみに私は真横にジョイントが向くようにしている。ベルクロのベルトはサーフィン中に緩むことがあるからときどきチェックして締め直すことも重要だ。

劣化を防ぐために紫外線を避け、壁に垂らして保管。photo by Ryo Ri

リーシュの保管は、洗って紫外線を避け、丸めないで壁などにまっすぐに垂らすと癖がつきにくい。
リーシュカップの穴に通す紐は、リーシュを買ったときに付録でついてくる丸い紐がベスト。サーフショップで売られている帯状の紐は経年で切れやすい。

どうしてもリーシュを踏んでしまうとお悩みの人は別ブランドに買い換えることも一つのアイデア。それで一気に問題解決することがよくある。絡み防止の裏技としては前足にリーシュを付けるというのがある。後ろ足に装着するのが常識になっているけど、ビッグウェーバーのバジー・カーボックスは前足にリーシュを付ける。彼曰くそのほうが踏まないという。僕も前足に装着してやってみた経験がある。たしかに踏まなくなった。でも習慣とは恐ろしいもので、いまは後ろ足に付けている。

前足にリーシュを付けてもルール違反ではない。Buzzy Kerbox. Reference: The history of surfing

リーシュは消耗品だから切れる前に細かい傷をチェックして買い替えをオススメする。というのもウレタンコードの弾性が経年劣化とともに硬くなり足に絡む原因にもなってきている。どのブランド良いかは自分で判断して決めると良い。とにかく切れない、踏まないが一番の判断基準。ダブルスイベル(コードの両端が回転し絡まりにくい構造)が普及しているがビッグウェーブに挑戦するならばシングルスイベルのリーシュもオススメだ。ベルクロとウレタンコードのジョイント部にスイベルが無い代わりに直接結ばれていて強い。

サーフリーシュは便利だが命綱ではない。切れたときにどう対処するかその答えが出せないようならばパドルアウトはしない。これサーファーの常識。

李リョウ

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