サーフィン大国オーストラリア初として、先日、満を持して動画が公開されたウェイブプール「サーフ・レイクス(Surf Lakes)」。
現時点において公開されている造波装置と言えば(デモ施設を含め)、スペインのウェイブガーデン(すでにオープンしているスノードニアとNランドで使用)、アメリカのサーフ・ランチとアメリカン・ウェイブ・マシーン(BSRサーフリゾートで使用)なので、サーフ・レイクスは世界で4つ目の造波装置となります(厳密にはアラブにあったりとモダンウェイブプールの線引きは難しいのですが)。
サーフィン大国にしては少し遅い後発といった印象を受けるのですが、テクノロジーは他を圧倒するレベルと豪語していました。
ここからは、他と異なるサーフ・レイクスの特徴をお伝えします。
サーフ・レイクスの人工波
最大の特徴と言えるのが「5 WAVES」と呼ばれるテクノロジー。現時点においてウェイブガーデン(ザ・コーヴを除く)とサーフ・ランチは一度に発生可能な波は1本、アメリカン・ウェイブ・マシーンはライトとレフトの同時発生で2本となっています。
しかし、サーフ・レイクスは一度に5種類の波を発生可能。イメージ図は以下となります。
イメージを見てもらうと分かる通り、波は5段階のレベルに分けられていて、「プロ」、「エクスパート」、「アドバンス」、「インターミディエイト」、「ビギナー」。
ただ、オーストラリアなので一般的なレベル分けよりもハイレベルとなり、中間レベルのアドバンスであってもチューブありとのこと。
波のサイズは、正面からサイズを測定するフェイス表記で1メートル(3フィート)~2.4メートル(8フィート)。
各レベルの波はライトとレフトがあるので、スープで遊ぶビギナーレベルを抜かすと、8種類のタイプを同時に発生させる事になるそうです。
サーフ・レイクスが発生可能な波数
バラエティ豊かな波を同時に発生させることが可能なサーフ・レイクスでは、1時間で最大2,400本もの人工波を発生できるそうです。
8種類のタイプの波を発生可能と前述し、加えてビギナーエリアが2カ所あるので、正確に言えば一度に発生させられる波数は10本。
これが60分で最大2,400本ということは、フルパワーで稼働させれば15秒間隔で波を発生させることになります。
あくまでも最大値であり、実際にフルパワー稼働させることはまずないと思いますが、それだけ高い技術力であるということなのでしょう。
サーフ・レイクスの実際の動画
注目度が高い事から、動画公開から視聴数が加速しているデモ施設でのテスト動画。
テスト段階という事で60%のパワーでの稼働とのことですが、どれほどのクオリティであるのか動画から垣間見る事が出来ます。
※公開から1週間程度で、視聴数は10万回以上。
サーフ・レイクスの今後の展望
今回オーストラリアのクイーンズランド州に建設されたのはあくまでもデモ施設。つまり、一般商業施設ではないので、招待客以外の利用は不可です。
今後の展開としては、ウェイブガーデンやアメリカン・ウェイブ・マシーンのように、商業施設に造波装置を提供するライセンス契約でサーフ・レイクスを世界中に広めていく予定とのこと(現状において実現しているのはウェイブガーデンのみ)。
現時点において世界中から100件以上のライセンス契約に関する問い合わせを受けているという事ですが、デモ施設におけるフルパワーでの稼働も行われていないので、具体的な建設案などは発表されていません。
ここまでの様子を見ていると順風満帆のように思えますが、実はすでにトラブルが発生しているとか。
サーフ・レイクスの問題点
ケリー・スレーターのサーフ・ランチの場合、ウェイブプールの建設完了から施設公開まで、トラブル発生を防ぐために1年に渡って調整を繰り返したそうですが、サーフ・レイクスではわずか1週間で施設公開に踏み切ったそうです。
スタブ誌によると、経営陣とエンジニアサイドで意見が異なり、できるだけ早く投資家に成果を示したい経営陣に対し、フルパワー稼働まではじっくりと時間を掛けて慣らし運転を行いたかったエンジニア陣。
しかし、経営陣に押し切られる形で早期公開という流れになり、テスト稼働を行うと造波装置の押し上げポンプの中央に位置する「ハンドル」と呼ばれるパーツが折れ曲がる結果に。
修理にはおおよそ2カ月掛かるという事で、動画の初公開時に数日後にはさらにパワーアップさせての稼働を発表していましたが、どうやら実現していないのには理由があったようです。
パーフェクトウェイブを発生可能なウェイブプールはサーファードリームではあるのですが、現実的にはビジネス面を優先させた結果なのかもしれません。
まとめ
ウェイブプールと言えば、ウェイブガーデンの造波装置を使ったスノードニアやNランドを振り返ってみれば、商業施設として稼働させた時にトラブルは多々ありました。
つまり、デモ施設で問題なくても、フルパワー稼働させることになる商業施設では予想外の不具合がありえます。ですが、サーフ・レイクスはデモ施設の建設完成からすぐに負荷をかけ続けたので、無理が生じたのでしょう。
トラブルはあるものの、波のクオリティに関してはすでに実証して見せたとも言えるサーフ・レイクス。スタートで少しつまずいてしまったものの、今後が楽しみなウェイブプールと言えます。