毎年様々なドラマが生まれる最終戦『Billabong Pipe Masters』
初日となった現地時間12月11日は早くもそのドラマに興味深いストーリー展開があった。
タイトルコンテンダーである4名の内の2名、ガブリエル・メディナ(BRA)、ジュリアン・ウィルソン(AUS)がR1を敗退してR2行きを強いられたのだ。
更にR2の彼らの相手はトライアルから勝ち上がったワイルドカードの2名、ダスティ・ペインとベンジ・ブランド。
両者共にハワイアンで、ダスティは元CT選手。ツアーでは上手くやれず怪我にも悩まされたが、ハワイでの実力はトップレベル。
ベンジは今年のハワイ・タヒチのリージョナルのチャンピオン、21歳のアップカマー。ハレイワがホームの彼はジョン・ジョンと親友でパイプラインのスキルはCT選手に並ぶといっても過言ではない。
ハワイに限ったことではないが、ワイルドカードは危険であり、R2でタイトルコンテンダーの二人が消えてしまう可能性も十分にある。
その他にもこの最終戦にはタイトルコンテンダーの脅威となる選手が多く、特に以下の4名に注目が集まっている。
■ケリー・スレーター(USA)
南アフリカ・ジェフリーズベイでの足の骨折の後、5ヶ月ぶりにコンテストに復帰したケリー。
パイプマスターズで7度のタイトル獲得。
本人曰く、まだ65%しか回復していない状態で見せたR1のバレルライドは、もし100%ならどうなってしまうのか恐ろしいほど。
例え、身体の状態が完璧ではなくても、20年以上の経験や知識がそれをカバーするだろう。
「もし、上手くいけばワールドタイトルレースに少しでも影響を与えることが出来るだろう。そう願いたいところさ。彼らと対戦することになれば、準備はするよ。トロフィーが欲しいからね」
■ミシェル・ボウレズ(PYF)
昨年、五十嵐カノア(USA)とファイナルを戦い初のパイプマスターズのタイトルを獲得。
タヒチ出身、同じポリネシアのハワイは第二のホームであり、トリプルクラウンでも多くの結果を残し、ハレイワ、サンセットビーチ、パイプラインの全てのイベントを制したたった5名の内の一人でもある。
ワールドタイトル、リクオリファイのプレッシャーがないのも彼が危険である理由の一つ。
アンディ・アイアンズ以来のパイプマスターズの連覇を果たせるか?
昨年はQFでジョン・ジョンに圧勝していることも付け加えておこう。
■ジェレミー・フローレス(FRA)
『Billabong Pipe Masters』過去3年間のアベレージスコアを振り返るとトップはジョン・ジョン、2位はケリー、3位はガブリエル。
そして、4位がジェレミー。
2010年のパイプマスターでもある彼はタヒチのチョープーでも優勝経験があり、時に異常と思われるほどのチャージを見せる。
29歳、ハワイは15シーズン目を迎えるベテラン。
現在ランキング19位とリクオリファイに危険なラインにいることが逆に彼の闘志に火をつけるだろう。
R1ではオープニングヒートに登場、バックドアで2つのソリッドなバレルを抜けて最初の勝者になった。
■ジョシュ・カー(AUS)
9年間ツアーを回ったベテランのジョシュが今シーズン限りで引退するかもしれない。
昨年までトップ10付近を巡っていたランキングが今年は33位まで下がり、年齢的にもQSからやり直すには難しいからだ。
『Billabong Pipe Masters』では2012年にファイナルに進出して2位に。
タイトル争いをしていたケリーをSFで倒し、同じオージーのジョエル・パーキンソンのタイトル獲得に大きく貢献した。
10年以上もかかったジョエルの感動的なタイトル獲得のドラマの裏で、ジョシュは強烈なワイプアウトで首を強く打って一時左半身が麻痺状態になりながらもヒートに戻る執念を見せていた。
2012年に脇役だった彼が最後の花道を優勝で飾ることが出来るのか?
R1終了後のインタビューでは、「’Billabong Pipe Masters’での優勝はずっと狙っているし、過去に惜しいところまでいったことがある。最後に優勝出来れば完璧。夢を叶えたいよ」と話していた。
現地時間12月12日は風が悪く、レイデイがコール。
午後には15-18ftレンジの大きな北西ウネリが入り、13日には25ftまでサイズアップすることが予想されている。
すでに翌日もオフが決まり、次は12月14日の朝7時30分にコールされる。
日本時間では12月15日午前2時30分。
公式サイトで配信されるライブ中継では今年も日本語放送が選択可能。
日本を代表するパイプライナーの脇田貴之をメインにした放送はイベントを何倍も面白くしてくれる。
『Vans Triple Crown of Surfing』公式サイト
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