反復練習可能で文字通りのマシンブレイクを発生することが可能となっている現代のウェイブプール。
様々な新規参入者が登場しているものの、現時点において頭一つ抜き出た存在なのがウェイブガーデン社の造波装置「ザ・コーヴ(The Cove)」、そしてケリー・スレーターによるウェイブプール「サーフ・ランチ(Surf Ranch)」の二つですね。
そこで、ウェイブガーデンとサーフ・ランチというウェイブプール界のトップランナーを例に挙げ、実際の人工波や商業向けウェイブプールなどといった話題についてお届けします。
モダンウェイブプールの現状
前述した通り、ウェイブプールに関しては様々な対抗馬が登場しているのですが、ウェイブガーデンとサーフ・ランチがトップランナーである理由は実際にライディング映像を公開している点にあります。
両者以外は、ミニチュアサイズでの人工波映像を公開しているところはあるものの、まだデモ施設がなかったりとフルスケールでの実証をしていないので、スケールアップした時に実現できるのかどうかは不明瞭なためです。
ここからは、ウェイブガーデンとサーフ・ランチの詳細について触れていきます。
■ウェイブガーデン(wavegarden)
特徴
サーフ・ランチに先立ち、スペインのバスク地方でデモ施設を設立させたウェイブガーデン。2010年頃から、トッププロによるテストライド動画も公開されるようになりました。
そんなウェイブガーデンは常に研究開発を続け、ウェイブガーデンによる現在の最新造波装置は今年5月に映像が公開されたザ・コーヴ。
ザ・コーヴの特徴は以下の通り。
・平均ライディング時間は15~20秒
・最大2.4メートルの波を発生可能
・1時間に発生可能な波数は最大1,000本
商業施設
ウェイブガーデンは造波装置のライセンス契約により、世界中でウェイブプール建設を見込んでいます。
ウェイブガーデンの造波装置を使ったウェイブプールとして世界で初めて建設されたのは、2015年夏にウェールズ(イギリス)でオープンした「サーフ・スノードニア(Surf Snowdonia)」。
スノードニアに続いては、米国テキサス州オースティンで2016年10月にオープンした「Nランド・サーフ・パーク(NLand Surf Park)」。
現時点において、ウェイブガーデンの造波装置を使用したウェイブプールは、デモ施設を除くと、スノードニアとNランドの二つしか世界には存在しません。
ただし、どちらも使用している造波装置はザ・コーヴではなく、旧バージョンとなる「Wavegarden 2.0」となります。
ザ・コーヴを利用したウェイブプールについては、オーストラリアで誕生するウェイブプールが世界初になると言われていますが、オープン予定は度重なる延期続き。
当初の予定では2017年後半にメルボルンでオープン予定でしたが、現在の予定では2018年後半となっています。
■サーフ・ランチ(Surf Ranch)
特徴
言わずと知れた11×ワールドチャンピオンであるケリー・スレーターが10年もの歳月をかけ、2015年12月に自身によるライディング映像と共に公にしたのがサーフ・ランチ。
映像が公開されると、世界最高峰の人工波誕生と盛り上がったものの、ケリーにとってフロントサイドとなるライトの波しか発生できなかったり、波の発生周期が長すぎたりと問題点もあり、ウェイブガーデン同様にバージョンアップが行われました。
今年後半に公開された改良版は、レフトも発生可能となってジェリー・ロペスが初テストライドをしたり、波の発生周期を短縮したりと、大幅なバージョンアップに成功。現在は約1分毎の間隔で波の発生が可能との情報もあります。
そして迎えた今年9月、サーフ・ランチの親会社であるWSLによるテストイベント「フューチャークラシック」が開催となり、誰もがサーフィンの未来が目の前まで来ていることを実感することになりました。
ちなみに、来年2018年はサーフ・ランチでのワールドツアーイベント開催も決定しているので、さらなるバージョンアップも予想されています。
商業施設
サーフ・ランチの商業化については、これまでにもいくつも可能性が浮上しては立ち消えていました。そのため、現時点において誰もが利用可能な商業ウェイブプールは存在しません。
しかし、ついにサーフ・ランチ世界初となる商業ウェイブプールの建設が決定。場所は、ケリーのホームである米国フロリダ州。
建設自体は2018年にスタートということで、2019年にオープンになるのではないかと見られています。
Kelly Slater Wave Companyに関しては、既に日本法人も立ち上がっているという噂もあり、今後の開発も急ピッチで進んでいく可能性もありそうです。
まとめ
現在はウェイブガーデンとサーフ・ランチに分があるモダンウェイブプール。しかし、新規参入者の影響から競争の激化は避けられない模様。
ウェイブガーデン社サイトの建設予定地をチェックすると、多くの国々でのウェイブプール建設予定が上げられているので、近い将来はウェイブプールが珍しくない時代が来るのかもしれません。
サーフィン界のゲームチェンジャーと呼ばれるウェイブプール新時代の節目であることは間違いないので、今後の動向から目が離せません。
次回記事では、激化するウェイブプール市場の第3勢力となるか、今月中にデモ施設の完成を目指しているオーストラリアのウェイブプール「サーフ・レイクス(Surf Lakes)」についてご紹介したいと思います。
Photo: Wavegarden/Wavegarden The Cove
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