世界中のサーファーを虜にするパイプラインは世界一危険なブレイクでもある。
過去にいくつもの命を奪い、オーウェン・ライト、ビード・ダービッジ、ダスティ・ペインなどCTサーファーでさえも選手生命を脅かすような事故が簡単に起きてしまうこの場所でまたしても悲しいニュースが入ってきた…。
松岡慧斗がパーフェクトスコアを出すなど素晴らしいコンディションに恵まれた『Da Hui Backdoor Shootout』から一夜明けた1月17日の木曜日の朝、コンテスト終了後に吹き荒れた南西のコナウィンドが持続して決して良い状況ではなかったパイプラインでブラジリアンのボディーボーダー、マルクス・ビジュが意識不明のまま発見された。
1月17日の朝7時30分頃、WSLイベントにも参加経験がある若いフレンチサーファー、バティストゥ・ガウドゥがパイプラインのインサイドでマルクスを発見した時にはボディーボードだけが浮いた状態で、助けを求めて叫んでいた女性を見てパドルアウトしたそうだ。
「あの時は海に飛び込み、彼を助けに行ったよ。彼の元まで辿り着いた後、人工呼吸をしたんだ。パイプラインが割れるすぐ横のサンドバーだったから、もまれながら自分のサーフボードも離れてしまうような状況でどうにもならなかったのさ」
バティストゥ・ガウドゥ
救助したバティストゥは自らのサーフボードを手放し、意識がなかったマルクスのフィンを足から外して強いカレントと戦いながらレスキューが待っていたビーチへと戻った。
心肺蘇生法の後に約12km離れたノースショアのカフク・メディカルセンターに搬送されたが、意識を取り戻すことはなく、帰らぬ人に…。
今回救助したバティストゥは地元フランスでライフガードのテストに合格して夏休みにホセゴーで実際にライフガードとして働いていたそうだ。
その経験からマルクスは頭を打ったことで意識を失ったのだろうと判断している。
また、マルクスが事故を起こした時間がライフガードの勤務する朝9時前だったことも不運だった。
「今回のような状況ではどのように対応するかのトレーニング方法が非常に重要だと思ったね。残念ながら、今回は上手く対応することが出来なかった…」
バティストゥ・ガウドゥ
今回の事故はハワイのTVニュースでも報道され、マルクスの友人でボディーボードのワールドチャンピオン。
そして、自らもジェイミー・オブライエンなどと一緒に救助の経験があるギラーミ・タメガがコメントを残している。
「こんな突然の訃報、誰もが予想していなかったし、このような事故で友人を失うのは本当に悲しいよ。彼はいつも笑顔でハワイの島中にアロハを広げていたのさ」
ギラーミ・タメガ
奇しくも『Da Hui Backdoor Shootout』の翌日に起こった悲しい事故。
マルクスは自らを’バレルハンター’’バレル中毒’と呼ぶほどこの自然が創り出した神秘的な空間を愛していた。
マルクスのInstagramには多くの追悼メッセージが寄せられている。
R.I.P. Marcus Biju.
(空海)