別名「サーフシティUSA」として知られているカリフォルニア州ハンティントンビーチ市(人口約20万人)では、毎年夏に世界最大規模のサーフィン大会「USオープン」が開催される。
世界から50万人ものサーフファンが集結するこの大会では、2015年に大原洋人が日本人サーファーとして初の優勝を成し遂げ、2017年、2018年と2年連続で五十嵐カノアが優勝するという快挙を果たした。
そんなサーフシティが今年1月にカリフォルニア州検事当局に起訴されたことを米誌L.A. Timesが報道。起訴の主な内容は「人口増に対応するための宅地開拓を十分に進めていない」ことだ。
普通に働いても家賃が払えない?カリフォルニアの人口増と高騰する住宅価格
カリフォルニア州全体で住宅事情が非常に厳しく、低所得者の住居やホームレス問題が大きな課題とされている中、住宅の中央値が83万ドル(おおよそ9千万円)を超えるハンティントンビーチの状況が特にひどいようだ。
カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサム氏によると、「多くの市がこの住宅危機を真っ向から取り組もうと尽力している中、(ハンティントンビーチなど)他の市では故意に州の法律に反して対策を怠っている」と報道し、検事局に起訴を促した。
今回の起訴の背景には、これまでカリフォルニア州の住宅事情は地元自治体に任されていたが、法改正により州の管轄下になったことがある。1月半ばに発表された州予算案では、妥当な宅地開発を阻止している市や郡に対して州の交通助成金を差し押さえる方針や、人口増やホームレス問題に取り組んでいる自治体に対して13億ドルもの予算措置を盛り込んだ。
新たな住宅開発に慎重なハンティントンビーチ市
一方でハンティントンビーチ市の弁護士マイケル・ゲイツ氏は、州の法律に反していないとして、訴訟を争う姿勢だ。また、カリフォルニア州で52もの自治体がハンティントンビーチと似たような実情がある中、ハンティントンビーチだけが起訴されていることを指摘し、起訴の裏に何らかの政治的な動機があることをほのめかしている。
比較的裕福な住民が多いハンティントンビーチはこれまで新しい開発に慎重な姿勢だった。不意な開発によって小さい市ならではの良さが失われることを懸念している住民が多いようだ。 この姿勢に対して一部のメディアでは「ハンティントンビーチは貧困層を嫌っている」と報道している。
ここ数年のカリフォルニアは、先進国であるというのに、普通に働いても家賃が払えないという人が出てきているのが実情。住民にも双方の意見がある中で、世界を代表するサーフタウン・ハンティントンビーチが、どのような答えを出すのか気になるところだ。
(ケン・ロウズ)