ビッグウェーブは度胸か、それとも準備ができているか。Tatsuo Sonobe Photo:RiRyo

海の中で息をより長く止める。マーク・ヒーリーによるビッグウェーブに対応する『息止め』の技術

シリーズ「おいらはサーファーの味方」No. 28

ビッグウェーブに挑戦するならば、水中での『息止め』は避けて通ることはできない。しかし長く潜水できれば大丈夫かというと、どうもそうではないようだ。

エキストリームサーファーでスピアフィッシングの達人でもあるマーク・ヒーリーが、そのヒントをサーフラインのブログを通じて伝授してくれた。一般のサーフィンにも応用できるヒントはたくさんある。

この記事は下記のブログを基に構成いたしました。
This article based on the below.
https://www.surfline.com/surf-news/tips-holding-breath-longer/43640


サーファーにとって永遠の課題は酸素(宇宙飛行士も同じだ)。いやその欠落と言ったほうがいい。もし君の『息止め』が問題ないとしたら、次のXXLスウェルやジョーズのマキシムサイズのために体を鍛える必要はない。でもアクアマンのように海の中で自由に行動するなんていうのは非現実的。とはいうものの『息止め』の技術を身につけて少しは両生類くらいにはなれたらとサーファーならば誰もが思うはず。

そこで水中にできるだけ長く留まるコツを多く知っている男にご登場いただこう。ビッグウェーブ愛好家で、スピアフィッシングの達人のマーク・ヒーリーだ。オールラウンドなウォーターマンのヒーリーは、これまで、海の困難な状況でいかに平静を保つかということに重点を置いてトレーニングしてきたという。

つまりヒーリーのように自らビッグウェーブでのサバイブを経験し、それを教えられるという存在は貴重だ。初めに断っておくが、これはスイミングプールで潜水をしてどれくらい我慢できるかという類の話ではない。(事実そのような行為は溺死を誘引する可能性があり大変危険)

十分な経験と準備の蓄積からビッグウェーブへの自信が育まれる。マーク・ヒーリー Ref: surfline.com

安全についての注意

「僕はティーチングの前に必ず生徒に約束してもらう事があるんだ」とヒーリーは言った。「それは専属の監視者がいない限り、一人で潜水の練習を絶対にしないということ。たとえどんなに頑強な体力の持ち主でも、テーブルに置いた洗面器でさえ簡単に溺死することができる。たった洗面器の水だけで人間は簡単に意識を失い身体能力は麻痺するんだ。有名なフリーダイバーの何人かはスイミングプールの事故で死んでいるという事実がある。だから専門的に監視と救護ができる人がいない限り潜水の練習をしてはいけない。」

最後の一呼吸

「大きな波が目の前でブレイクして最後の一呼吸をするとき、僕は思い切り力を込めて空気を吸い込もうとはしない。ノーマルでリラックスした一呼吸を心がけている。横隔膜に強い負担が掛かるほどの空気を溜め込まない。基本的には負担を感じないくらいまでの量で、つまり肺のキャパシティーを超えないようにする。もし筋肉を使って無理やり酸素を詰め込もうとしたら逆効果になってしまうと僕は思う。」

目まぐるしく変化するサーフィンの海と、プールでの潜水には環境に隔たりがある  Kohei Shirakawa photo by Ryo Ri

ビッグウェーブと潜水の異なる点は

「フリーダイビングのテクニックを、ビッグウェーブに応用してみようと思う人は多い。」とヒーリーは続ける。「フリーダイビングでは大量の空気を肺に詰め込もうとする。深く潜ると空気も圧縮されるからね。海上で空気をいっぱい詰め込んで潜っても、30~60フィート下では水圧で半分ほどに感じるんだ。でもサーファーは波に巻かれて30フィートも深みへ引き込まれるなんてことはまずない。丸い穴に四角のペグを打ち込むようなものだから。つまりフリーダイビングのテクニックは、サーフィンのワイプアウトを想定していない。それがどういう意味かというと、殴られたことのない人からボクシングを教えてもらうようなもの。そんなボクシング教室があったらどうする?受講しようと思わないよね。」

有酸素運動

「『息止め』のトレーニングの基本は、適切な有酸素運動で肺が大きくなるように改善をすること。それは肋骨のフレキシビリティを増やして肺のキャパシティーを上げるという意味。つまり酸素を肺から有効に取り入れて血液に送りこめるようにすること。」

心で制する

「でも一般サーファーは、肺の機能を高めるよりもメンタルがまず重要。」とヒーリー。「もし普通の体力があれば5分間は『息止め』ができるようになる。そのトレーニングで精神を安定させて身体をコントロールする。つまり『息止め』ができるという自信を得ること、安全な環境でそれに取り組み達成することが重要です。」

不慣れな状況に慣れる

「不慣れな状況とは、例えば自宅のベットで寝ていて夜中におしっこがしたくなったとするよね。その暗いなかでもトイレまで歩いて行けるだろう。なぜ暗くても歩いていけるのか、それはもう何回も同じことを繰り返しているからさ。では、そこが他人の家だったとしたらどうだろう、不慣れだから灯りを点けなくてはトイレにいけない。これは多くの人々にあてはまるケースだ。多くの人は不慣れなことをあえてやろうとはしない。だからその不慣れな状況に陥ってしまうと、自分をコントロールできなくなるんだ。つまり僕は不慣れな家のトイレを想定してトレーニングしているんだ。だからどんな海の中でも落ち着いていられる。」

(李リョウ)

参照記事: https://www.surfline.com/surf-news/tips-holding-breath-longer/43640

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