膝の怪我で欠場が続いていた2度の世界王者ジョン・ジョン・フローレンスが、10月26日に自身のInstagramで投稿し、チャンピオンシップツアー(CT)の最終戦「パイプマスターズ」に出場する可能性があることを示唆した。
ジョンジョンはオリンピック出場にも意欲をみせており、これが現実になると、五輪アメリカ代表の残り1枠を狙っていた11度の世界王者ケリー・スレーターの前に大きな壁が立ちはだかることになる。
五輪出場は各国で最大2名、アメリカ代表の1枠は既にコロヘ・アンディーノに決定しており、残る1枠を狙うジョンジョン、ケリーの出場シナリオをシミュレーションする。
欠場続きのジョン・ジョン・フローレンスは現在世界ランク8位
ジョンジョンは、10月26日、自身のInstagramで以下の投稿をした。
一生の思い出。今回のボートトリップのプロジェクトを、みんなにもうすぐ共有できることを楽しみにしてるよ。
今は家に戻って、膝はかなり調子が良い。間近まで迫ってきてるパイプマスターズとオリンピックのチャンスに興奮してる。
2度の世界チャンピオンであるハワイのジョン・ジョン・フローレンスは、東京2020オリンピックの選手選考も兼ねている今年2019年のCTにおいて好調なスタートを切り、3度目のタイトルも狙えるポジションにいたにも関わらず第5戦ブラジルで右膝の靭帯損傷を再発。
7月に受けた手術は成功し、回復に向っているとされているが、その後の試合は全て欠場していた。それでも、CT第2戦と第4戦の優勝が功を奏し、第10戦ポルトガルが終わった時点でも8位。
対する帝王ケリー・スレーターは10位
11度の世界チャンピオン、ケリー・スレーターは、第10戦ポルトガルが終わった時点で世界ランク10位。現在47歳のケリーはCT選手の中でも群を抜いてベテラン選手であり、CTフル参戦するのは今季が最後ともささやかれている。
2020年東京オリンピック出場要件である今年9月のISAワールドサーフィンゲームスにも出場し、五輪出場に意欲をみせているが、アメリカ代表として出場するためには、CT最終戦のパイプマスターズ終了後の年間最終ランキングでジョンジョンを上回る必要がある。
2020年東京オリンピック出場要件(抜粋)
五輪出場シナリオをシュミレーションする前に、まず東京五輪の出場選考について、要点をおさらいすると以下のとおり。
・各国の代表は最大で男女各2名まで
・最も優先度の高い選考条件は「2019年CTランキング」の男子上位10名
・アメリカ代表枠の1つは既にコロヘ・アンディーノが獲得している
つまり、CT最終戦パイプマスターズ終了後の「2019年CTランキング」最終ランキングでコロヘに次ぐ、アメリカ第2位となった選手が五輪に出場できることになる。
ケリーとジョンジョンの五輪出場シナリオ
ケリー・スレーターが最終ランキングでジョンジョンを上回り、五輪出場権を得るために必要な結果は以下となる。
ジョンジョン(JJF)が不出場、または33位の場合、ケリーは5位以上の成績が必要。
JJFが17位の場合、ケリーは3位以上の成績が必要。
JJFが9位の場合、ケリーは2位以上の成績が必要。
JJFが5位の場合、ケリーは優勝することで、代表権を獲得できる。
JJFが3位以上の場合は、ケリーの成績に関わらず五輪出場はジョンジョンに確定する。
仮にジョンジョンが、パイプマスターズに不出場の場合でも、ケリースレーターは5位以上(QF進出)の成績が必要。
これまで7度もマスターズの栄冠を手に入れているケリーにとって「得意のパイプで5位以上」の成績は、そう高くない壁ともいえるが、ここでジョンジョンが出場するとなれば、現実的には厳しい状況に追い込まれることとなる。
ジョンジョンは、パイプマスターズの会場となる「パイプライン」の目の前で生まれ育ち、誰よりもこの波を知り尽くしている。意外にもパイプマスターズの優勝経験はまだないが、怪我の影響やブランクなどを考慮しても、出場となれば低いラウンドで敗退することはないと考えられ、ケリーはさらに上位の結果が必要な状況だ。
ちなみに、もう一人のアメリカ代表候補セス・モニーツは、ジョンジョンが17位(ラウンド3敗退)以下の成績となった場合のみ、自身が優勝することでジョンジョンを上回ることができるが、ケリーよりも厳しい状況。
名実共にWSLの2大スターといっても過言ではないジョン・ジョン・フローレンスとケリー・スレーター。どちらがパイプマスターズを制し、東京五輪アメリカ代表枠を勝ち取るのか?また、これまで数々の歴史を塗り替えてきたキングことケリー・スレーターは、五輪で有終の美を飾ることができるのか?例年以上に目の離せない展開になりそうだ。
(THE SURF NEWS編集部)