24日夜、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長が電話会談を行い、東京オリンピックを1年程度延期し、遅くとも2021年夏までの開催を目指すことで合意した。
当初、IOCバッハ会長は「7月24日開幕を目指して全力を尽くす」との発言を続けていたが、各国選手団や競技連盟から反発の声が上がり、トランプ大統領が「1年間延期したほうがよい」と発言をしたことで事態は急転した。
電話会談後に開かれたIOC臨時理事会でも、東京五輪の延期が正式承認された。近代五輪124年の歴史のなかで、戦争で中止になったことはあるが、延期は史上初。延期後も大会名称は「東京2020」のままとするという。
ISAは五輪延期決定を全面的に支持する
この決定を受けて、国際サーフィン連盟(ISA)のフェルナンド・アギーレ会長は声明を発表した。
「ISAは、IOC理事会と東京2020組織委員会によるオリンピック延期の決定を全面的に支持します。これは、すべてのアスリート、ファン、スタッフのメンバー、そして一般大衆の健康と福祉を最優先事項とする賢明な決定であり、私にとって疑問の余地はありません。」
「私たちはサーファーとして、困難な状況でも、柔軟に対応することに慣れています。私たちは海や自然の中でサーフィンを練習し、人生の中で状況が常に変わっていくことに慣れています。今こそ、私たち全員がこの(苦境の)波のためにより懸命にパドルし、目的と確信をもって未来を見据える時です。私たちは共にこのウイルスを打ち負かし、2021年にはこれまでで最高のオリンピックでその勝利を祝います。」
「私たちは組織委員会およびIOCのパートナーと協力して、今後発生し得るあらゆる状況に対して、賢明で責任ある解決策を見つけ出します。私たちは、皆の協力と決意により、東京オリンピック、特にオリンピックサーフィンが、この期限通り開催され、そして世界に感動を与えられると確信しています。」
アメリカ代表はCTからの出場資格維持を要請
五輪予選イベントの中で最も優先度の高いのが、2019年WSLのチャンピオンシップツアー(CT)ランキングであり、昨年末に18名が出場枠を獲得している。
コロヘ・アンディーノ、ジョン・ジョン・フローレンス、カリッサ・ムーア、キャロライン・マークスの4名すべてがこのCT枠から出場確定させているアメリカ代表について、USA Surfingのグレッグ・クルーズ代表はISAに以下の通り声明を発表した。
「アメリカ代表メンバーは全て、WSLチャンピオンシップツアー2019の最終ランキングから出場権を獲得しており、選手達は地元のブレイクでまだサーフィンやトレーニングを行うことができています。」
「大会が2021年7月に延期された場合、WSL CT 2019ランキングから得た出場資格を維持できるようISAに要請しました。これはフェアで正しいコースであり、サーファーの混乱を最小限に留めます。」
「ISAは今も前例のない状況を整理しようとしています。指揮を取るのが難しい状況であり、すべての関係者にとって未知の境地であることを尊重します。サーフィンは、現状に適応し我々がコントロールできることに集中する、という実例を世界に示すことになるでしょう。今の全く新しい世界に求められる必要なスキルです。」
「大会を再編成し延期を実行できる国があるとすれば、それは日本です。」
選手選考はどうなる?
卓球やマラソンなど再選考なしで出場権が維持される方針を示した競技がある一方で、開催時点での年齢制限があるサッカーなどのように、五輪時点で最も強い選手が出場するべきとの考えから代表再選考に揺れている競技もあるが、ISAは五輪サーフィン競技の代表枠についての対応をまだ明らかにしていない。
東京五輪サーフィン競技に出場できる選手は男女各20名の計40名。うち暫定的な選手も含めると28名が出場権を獲得しており、残りの12名を5月の世界選手権「ISAワールドサーフィンゲームス」で決める予定だった。
この世界選手権は五輪予選イベントの中で、2番目に優先度が高かったが、新型コロナの影響で延期が発表されたばかり。延期日程は暫定的に6月5日~14日と設定されているが、五輪が2021年夏開催となる場合は、開催日程が更に先送りとなる可能性もある。
現行のルールでは、CTから五輪出場権を得ている18名の選手も世界選手権に出場必須とされており、WSLとの日程調整は必須だろう。また、CT選手出場必須の条件が変更となる可能性もあるかもしれない。
また、スケジュール的には、今年6月と2021年に2回世界選手権を開催することも考えられはするが、国をあげて大会招致をしたエルサルバドルの立場や各国の選手選考など、 多くの問題があり現実的ではなさそうだ。
選考イベントの大枠は変えず残り1戦で出場枠を決めるのか、または別の方法を取るのか。「五輪時点で最も強い選手が出場するべき」との考え方もあるなかで、ISAが今後どのような決定をするかに注目だ。
世界選手権の日本代表については、五十嵐カノア、村上舜、都筑有夢路、松田詩野は既に出場権を得ており、残り男女各1名を選出する4月の「ジャパンオープン」は、今後の方向性や日程を含めて再検討中とのこと。これも世界選手権に合わせてずれ込んでいく可能性がある。
目に見えないウイルスとの闘い、前代未聞の五輪延期を乗り越えるために、大会関係者は膨大な課題の解決に迫られ、選手達もまた新たな戦いに直面することになるだろう。オリンピック出場を目指す選手やファンにとってよりよい形で出場選考が進められることを祈りつつ、THE SURF NEWSでは今後もその経過を引き続きお伝えしていく。
(THE SURF NEWS 編集部)
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