今年の夏は、全国の多くの海水浴場が開設無しとなることを受け、日本サーフィン連盟は「夏の安全な海岸利用についてご協力のお願い」を発表した。海を愛するサーファーとして、海を熟知しているものとして、新しい海岸のルールを守り、指導的立場から、海の事故を少しでも無くすことに協力してほしいと呼びかけている。
日本サーフィン連盟は、毎年会員向けのイヤーブックで「ウォーターレスキュー、サーファーとして知っておきたい海の危険とその対応」と題し、海の事故対応を周知徹底している。夏のシーズンを前にその内容を公式サイトで一般公開。
自分の力を過信することなく、セルフディスタンスを確保した上で、海の安全に努める。海岸のルールを理解し、監視員やライフセーバーと共に協力し、一般の方を優しく見守り、ゆずり合い、人の多いところは避けて、サーフィンを楽しもう。
サーファーとして知っておきたい海の危険とその対応
「海」の特性からみる危険についてと、もし万が一事故に遭遇した場合の対処法について確認!
◆セルフディフェンス・まずは自分自身の安全確保
体調管理をする
・体調がすぐれない時は、サーフィンを見合わせる勇気を持ちましょう。
・海に入る前に自分の体調を冷静に判断するようにしましょう。
・十分な睡眠をとり、前日の深酒やサーフィン前の飲酒は禁物です。
・サーフィンはハードなスポーツです。十分な体力と万全な体調で臨むのがベスト。
・風邪気味などの時は、海に入るのをやめてください。
機材の劣化および不備をチェックする
海に入る時は、リーシュコードやカップ、カップとリーシュをつなぐヒモを確認し、新しいコードや波に合ったボードを使用する等の注意が必要です。
危険性物を知っておきましょう
日本でも、アカエイや、カツオノエボシ等の毒を持った海の危険生物によるサーファーの被害が多数発生していますので注意して下さい。
海のコンディションと海の危険因子を知る
・陸上の目標物を定め、流されているかどうか知るのは基本ですが、一緒に来た友人のポジションも常に気をつけることが必要です。
・切迫した危険な状態以外は、浮力を確保するサーフボードを捨てずに、早めに救助を求めることが重要です。
・ 長時間漂流した時の保温対策として、ウエットスーツの着用はかかせません。
◆事故発生時の対応・自分自身の安全が絶対条件
初心者サーファーが流されていたり、溺水の状態等に遭遇した場合、救助は確かに大事ですが、あくまでも、自身が二次災害に巻き込まれないことがなによりも重要です。実務の水難救助は、海上保安官や消防官が行います。我々は、その事故に対する初動対応を出来る範囲で行う事を充分に理解してください。以下に挙げる各種の手法は、基本的には訓練が必要です。知っていると出来るとでは大きな違いがありますので、あくまでも出来る範囲で対応いただくよう重ねてお願い致します。
サーフボードは要救助者の浮力体として利用する
CASE① 意識のある要救助者
まず、要救助者に接近した際、パニックで飛び掛かられる恐れがないことを確認し、 落ち着くように話しかけ安全な方向に誘導してあげましょう。離岸流(沖に流される潮流)を逆行して岸に帰ろうとし、帰れなくなり体力を消耗し流されている場合が多いです。パドリングの体力が残っていない場合は、自分のリーシュをつかませて引っ張ってあげても良いですが、後ろから来た波に押され要救助者が自分に衝突する可能性もありますので、十分に注意しましょう。引っ張って帰るのは、相当な体力を消耗します。やはり、交代も考え監視役と合わせて複数で対応するようにしましょう。
CASE② 意識のない要救助者
要救助者が意識の無いように見えても、近づいた時に急に飛び掛かられることも考えられます。 前記のように要救助者に近づくときは、十分に気を付けてください。
ロングボード編
要救助者をボードに乗せる方法は同じです。ただ、搬送方法は、自分がボードに一緒に乗り込みパドリングで移送します。少しテクニックは要りますが、9フィートのボードで男性を同方法で搬送した実績はあります。もし、難しいようでしたら、リーシュを利用して牽引してください。
波打ち際から陸上に搬送する
脱力した意識なしの要救助者は、方法を知っていなければ屈強な男性でも抱えて運ぶことができません。数々の手法がありますが、ここでは、一番使いやすい搬送方法をご紹介いたします。まず、しっかりと要救助者の背中に自分の胸を密着させます。腕で引き上げるのではなく、体全体を使って持ち上げるようにします。そして、要救助者の腕を持ち上げる際に持ち手に使います。 脇の下から自分の腕を入れます。そして、要救助者の腕を組むようにして腕を保持します。
レスキュー・スレッドの乗込み方について
選手が競技中に体調の急変悪化(怪我含)、急な気象悪化(波高含)、ボード折れ、リーシュ切れ、危険生物等の様々な要因により救助や非難の必要が発生した場合、海上にて安全管理に就いている水上オートバイがレスキューピックアップを行います。その際に水上オートバイの後部に装着されている「レスキュー・スレッド」(以下RSと略)に乗込む必要があります。その乗込み方について以下に解説いたします。
CASE① 自力でパドリングができる場合は、パドリングの姿勢のままRSに乗込みます。
CASE② 自力でパドリングができない場合は、リーシュをつけたまま体だけRSに乗込みます。
ボードは、そのまま引きずるようになりますが、水圧でリーシュが切れる場合でも別の別の水上オートバイがボードを確保します。
※レスキューピックアップの際は、波や気象状況、潮流、選手の技術・意識・気力、場所等いつも条件が違います。基本的な乗込み方はご理解いただいたうえで現場においては、水上オートバイのレスキューオペレーターの指示に従ってください。
◆心肺蘇生について
搬送したら次に心肺蘇生を行います。現在、世界の心肺蘇生のガイドラインが5年ごとに変更になっており、一般市民向けには人工呼吸を行うよりも胸骨圧迫を優先して行うようになっています。ただ、これは街中(陸上)用の考え方であること。正確な人工呼吸が難しいので、その人工呼吸に手間取るよりも胸骨圧迫を行った方が良いとの考えからになっています。しかし、溺水の場合は、できれば人工呼吸を行った方が良いとされています。
1 気道の確保 ※注 すでに海上で意識なし及び心肺停止状態の場合
2 胸骨圧迫 ※胸の真ん中 ※真上から垂直に押さえる
・強く(胸が少なくても5センチ沈むまで)
・速く(1分間に100~120回のテンポで)
※30回 但し、胸骨圧迫だけの場合は、蘇生するまで継続 ・絶え間なく
3 吹き込み2回
(空気が正確に入っているかは要救助者の胸の動きで判断します)
★上記を繰り返す心肺蘇生は、救急隊に引き継ぐかAEDの指示があるまで、あるいは要救助者が動き出すまで続けます。もちろん、救急車の要請と近くにあるAEDは別の人が手配をしてください。
※AEDはスイッチを入れると自動音声で使い方がガイドされますので、その指示にしたがってください。ただ、溺水の場合は体が濡れているので要救助者も自分もよく水分を拭き取ることを忘れないように注意してください。
◆裂傷等の対応
直接圧迫止血法
直接圧迫止血法は、一般市民ができる止血法です。間接圧迫止血法等は、一定の知識が必要になります。また、血液に触れる可能性がありますので、感染症を防止するために、手当を実施する人はビニールやゴムの手袋を着用するなどして、直接、血液に触れないようにします。飛び散った血液が、身体に付着しないように注意して行います。止血や出血している創傷の手当を行った時は、速やかに石鹸等を用いて流水により手を洗います。
①出血部位を押さえるために用いるガーゼや布は清潔であり、厚みのあるものであること。出血部位を十分に覆うことのできる大きさがあること。
②圧迫の要領として、片手で圧迫しても止血できない時は、両手で圧迫したり、体重をかけて圧迫し、止血をします。
※注 画像では素手で実施しておりますが、実際には塩ビ手袋等を着用します。
協力:一般社団法人ウォーターリスクマネジメント協会 https://pwcr-wrma.org/
NSA公式サイト:http://www.nsa-surf.org/news/20200624/
(THE SURF NEWS編集部)