南アフリカ Jベイに現れた体長約3メートルのホホジロザメ Photo: WSL / Gumboot.Camera

海からホホジロザメが消えた。南アフリカで何が起こっているのか?

南アフリカと言えばJベイ、バリート・・・そしてホホジロザメ。2015年にJベイで行われていたCTのファイナルヒート中にミック・ファニングがサメに追突された事件をライブ配信で見た人は一生忘れることはないだろう。そんな南アフリカのある場所ではホホシロサメの姿が急に見られなくなったという。なぜいなくなったのか、米Surfermagの記事を報道を中心に見てみよう。

ヒート中に現れたサメが生放送で世界中に衝撃を与えた。幸い怪我はなかった。 Photo: WSL screengrab

南アフリカ第2の都市ケープタウンの南側にあるフォールス湾ではホホジロザメが300~500匹生息していたと推定されていて、世界で最も密度が高い場所の一つとして知られている。南アフリカでは1991年からホホジロザメは保護種に指定され、2000年代初頭からホホジロザメをまじかで見れるケージ・ダイビングやサメがオットセイ等を捕食する時に行う「ブリーチング」(ジャンプ)を一目見ようと、大勢の観光客がやってくる。

フォールス湾周辺のサメを調査している団体Shark Spottersによれば、2010年から2016年の間、ホホジロザメは年間平均205回目撃されていた。ところが、2017年には目撃数が57件に激減し、2018年には50件、さらに2019年には何と1件も目撃情報はなくなってしまったという。わずか3年間で最も恐れられている海のハンターは文字通り消えてしまったのだ。

フォールス湾で野生動物写真家をしながらケージダイビングの会社を営むクリス・ファローズ氏は「ここ数年南アフリカの南と南西の海岸ではホホシロサメの生息数が壊滅的に激減したと言わざるを得ない」と言う。

ホホジロザメの数が減り始めた当初、原因はフォールス湾を訪れ始めたシャチではないかと思われていた。シャチはホホジロザメの唯一の天敵であり、海洋生物学者のアリソン・コック博士は沖合の食料が減ったことでシャチの群れがフォールス湾を頻繁に訪れるようになり、ホホジロザメはそれを恐れていなくなった可能性があると仮定している。

しかし、ファローズ氏は原因はシャチだけではないと主張する。「今までにシャチの影響でホホシロサメの行動が変わったことは確認したことはない。」ファローズ氏によると、ホホジロザメがいなくなった主な原因は餌となるホシザメやイコクエイラクブカなど小型なサメの乱獲だ。

ホシザメやイコクエイラクブカなど海底に生息するサメはオーストラリアの名物フィッシュ・アンド・チップスに広く使われていて、近年需要が高まることにより輸出量が大幅に増加している。南アフリカでは食用のサメの漁に関する規制が緩く、ここ数年は何千本もの針がある延縄を使用して推奨漁獲量を何倍も超える量を取っている漁師もいるようだ。政府の専門家によるとこういったサメの生息数が激減していて、これこそがホホジロザメがいなくなった原因だとファローズ氏は指摘する。

サメによる死亡事故が年間平均4人。しかし、サーファーが感じる恐怖はそれ以上だろう。 Photo: WSL / Kirstin Scholtz

原因は何にしろ、サメがいなくなるのはうれしいことだと思うサーファーは多いはず。しかし、生態系にとっては深刻な問題になりうるのだ。生態系の頂点にいるホホジロザメが突然いなくなったら生態系のバランスが失われ、悲劇的な結果をもたらす可能性がある。フォールス湾周辺でもホホジロザメがいなくなってから集団で狩りをする獰猛な捕食者エビスザメの目撃件数が増えているという情報もある。

ホホジロザメがいなくなった確実な原因はまだわからないが、今後の生態系のバランスやサーフィンする際の影響など、今後も注視していく必要がある。

ケン・ロウズ

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