コロナ禍で難しいシーズンを強いられているサーフィン最高峰のコンテスト、CT。
2020年12月にハワイでの開幕戦を終えた後、第2戦「サンセットオープン」の中止とサンタクルーズで予定されて第3戦の延期が発表され、次のWSLの課題は4月のベルズを皮切りとしたマーガレットリバー、ゴールドコーストのオーストラリアレッグを無事に開催させること。
更にオーストラリアで1戦増やすという方向にも動いている。
ベルズ、マーガレットリバー、ゴールドコーストを舞台としたオーストラリアレッグは開催国オーストラリアが他国に比べて新型コロナウイルスの感染が抑えられおり、すでに国内のコンテストは通常通り行われているために実現の可能性は高い。
サンセットビーチとサンタクルーズの穴を埋めるため、オーストラリアレッグではこの3イベントの他にもNSW州で開催地を探しているという噂があり、NSW州北部のレノックスヘッドが候補に上がっていた。
しかし、2月頭、レノックスヘッドを抱える町、バリナ評議会で開かれた臨時会議で却下されることに…。
WSLのゼネラルマネージャー、アンドリュー・スターク氏は大型スクリーンで他のCTイベントよりも小規模なインフラの設置計画や、ポイントの環境への影響を最小限に抑える計画などでコンテスト開催の支持を訴えたが、新型コロナウイルスの受け入れ難いリスク、レノックスヘッドのコミュニティへの影響や、サーフィン保護区としての地位が民間の商業運営者による使用を妨げていること。そして、適切なプロセスとコミュニティ協議の欠如を理由に却下された。
WSLはNSW州がバリナの地域自治体の決定を覆すかどうかを待つとしたが、ローカルのニック・マーサー氏によるとコミュニティの意向に反してコンテストを開催した場合、イベント中にローカルサーファーがパドルアウトして抗議する可能性があり、WSLと対立することになるだろうと話していた。
▲5枚目:駐車場にはWSLに向けたきついメッセージが書かれている
賛成派の意見
過半数のローカルが今回のCTイベント開催を反対した一方、臨時会議で2名の評議員は賛成を支持。
その中の一人、Le Ba(レノックス・バリナボードライダーズクラブ)代表は以下のコメントを残している。
「私が聞いた話では、子供達は憧れのプロサーファーがここで見られると興奮していたそうです。有望なジュニアのワイルドカード出場などWSLが我がクラブとコミュニティに与えようとしていた恩恵はLe Baと全てのキッズ、ジュニアにとって大きなものでした。だからこそ、私は賛成していたのです」
しかし、このような前向きな意見が霞んでしまうように今回は反対派の声が圧倒的に大きかった。
評議員として招かれた他のローカルサーファーには、「子供達はサーフィンのヒーローを見るのは素晴らしいと思っているだろうが、その代償を払うことになることを知らない。キラ(過去にCT開催地として選ばれ、多くのサーファーでパニックになった)に起こったことを見てみろよ」 というLe Ba代表と正反対の意見もあった。
実は今回のCT開催阻止は初めてではない。
以前にもRip Curlのサーチイベントをレノックスヘッドで開催する話があったが、ローカルの猛烈な反対によって中止になった。
更にレノックスヘッドのすぐ北にあるアインズワース湖に35メートルの巨大なスキージャンプ台を建設する計画を阻止したこともある。
第4の舞台はニューキャッスル
当初、オーストラリアレッグはイースターホリデーに合わせて4月1日〜11日にベルズ戦からスタート予定だったが、コロナ禍による移動制限の中、選手を乗せたロサンゼルス発のチャーター機がシドニーの空港に到着した後、14日間の隔離後に違う州のベルズへ向かうのではなく、同じNSW州で開催させることが妥当な案だった。
そのためにNSW州で候補地を探してレノックスヘッドが真っ先に選ばれたのだ。
今回の判断によりWSLはすぐに代替地を探し、ハイグレードのQSの舞台として毎年使用されているNSW州のニューキャッスル「ミアウェザービーチ」で4月1日から開催する方向で調整を始めた。
ニューキャッスルでCTが開催されるのは1990年以来であり、「ミアウェザービーチ」が会場になるのは始めて。シドニー周辺ではマンリービーチで1999年に開催された「コカコーラ・サーフクラシック」以来のCTイベントになる。
人口約7,000人の小さなレノックスヘッドに比べて人口約32万人のニューキャッスルは今回のCT開催を歓迎しており、NSW州の副州首相、観光大臣、ニューキャッスル市長が声明を公表している。
また、2019年の全豪ボードライダーズのチャンピオンでもあるミアウェザー・サーフボードクラブもCT開催に全面協力すると発表。
レノックスヘッドと比べるとビーチブレイクのミアウェザービーチはクオリティが落ちるが、コロナ禍で日々状況が変わる中、難しい判断を迫られているWSLにとってはまさに渡りに船。
他のどの国よりもCTを開催しやすいオーストラリアが2021年CTの鍵を握っていることは間違いないだろう。
WSLスケジュールを見るとすでに「Newcastle Pro」として加えられているが、オーストラリアレッグの計4戦の開催期間が4月1日〜5月31日に変わっている。
WSLはすでに3イベントを決定、スケジュールの更新は可能な限り早めにすると公表している。
(空海)