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「ナラビーンでイタロの負け判定はフェアだったか?」 – F+

F+(エフプラス)

いやぁ、このディベートいつまで続くんでしょ。面白いからいいけど。今回はミックのケリー、アンディ、ガブ比較論、最高。ワイルドカード後、より一層現役感出たコメントだしな。なんだろうね、ロスはコメンテイターもやってるから、やっぱりちょっとトーンがWSLサイド寄りというか、え、それ言っちゃうの? みたいなのはない優等生。どちらかといえばミックのほうが本音感が強い。でもこのディベートは何を言ってもいい、歯に衣着せぬ討論会、という触れ込みだったので、なんかもっと両者弾けてほしいなぁ、と思うんだけど。

ナラビーンでのガブリエル・メディナ PHOTO: © WSL / Dunbar

今回はオーストラリアのビーチブレイク2試合の話。まぁ個人的にはこの2試合はひたすら、ガブサーフィン上手いな、って感じで終始。今世界で最もテクニカルにうまいサーファーだと思う。リップ勝負、バレル勝負、エアー勝負、戦略、メンタル……どれも世界トップレベルでいけるからね。順当にいけば今年はガブかね、明らかにイタロよりうまいし、ジョンジョンより器用だし。あ、そうか、ロウワーの魔の1日で決まるんだっけ。じゃ、わからないか(笑)。

ジュニアの王者からCTに入ってきたときにはまだまだパシパシしたサーフィンで好きになれなかったけど、CTに入ってしばらくしてからサーフィンが別人になったよね。特にタイトル取ってからの伸び方は半端ないと思う。身体もでかくなってるし。
では第15回、行きましょう。

1:コナー・コフィンとのヒートでのイタロのエアーがメイクか否かに関してあちこちで論争になっているけど、どう思うか

ロス:メイクかメイクじゃないかでポイントつけるなら、メイクじゃない場合のポイントにもう少し幅があってもいいと思う。例えばパイプやチョープーのバレルだとわかりやすいけど、ものすごい波に難しいセクションからレイトドロップメイク、でも結局バレルに入ることなく終われば1.8とかで終わったりするけど、その難しいテイクオフや果敢なチャージに対して3.5とか4.5、5.5とかのキャパを持たせるべきだと思う。あのエアーもホワイトウォーターの前にクリーンに出れば8点以上だろうけど、着地はしたもののスープの前には出れなかった。僕はあのエアーに関してはメイクではないけど5点ぐらい出していいんじゃないかと思う。もっと採点に幅があっていいと思う。

ミック:採点の幅という意味ではあのイベントは本当に狭かったと思う。特に最初の2日間は7.5点満点のスケールでジャッジしてる感じだった。ほとんどのライディングが4-6点の間。彼らが差を狭めてジャッジを難しくしてたと思う。だからちょっと変だなって思う結果も出ることになった。あのエアーに関しては、彼は着地したけどスープにつかまったって判断なんだろうね。

これは、コナーのフローを取るか、イタロの革新的なエアー、スピードを取るかという論争で、ロスはイタロの革新的なサーフィン、ミックはコナーの止まらないフロー。結果としてジャッジも止まらないフローのほうに高配点だったので、論争のタネになる感じ。ロスはラストライドもコナーの5.8よりイタロのほうが高かったというニュアンス。

私は、ああいう風に板に当たる人は嫌いなので、マナー点減点でコナーでいいじゃん、って思う。どんな理由があれ、試合で使う大事なマジックボードをたたき折るって、ないわぁ。私がシェイパーなら2度とそいつに板は削ってやらない (笑)。

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2:ガブリエル・メディーナは史上最強のコンペティターか

ミック:アンディ、ケリー、ガブリエルと戦ってきたけど、たぶんガブが最強なんだろうと思う。ケリーは本当に才能のある選手で、どんな波でもポイントを稼ぐ。アンディは純粋に闘志むき出しの選手。人の都合なんてお構いなしだ。ガブはこのふたりをミックスした感じかな。でもなんか最近ちょっと変わってきた感じがする。サーフィンを楽しみ始めた感じというか、勝つためのサーフィンより魅せるサーフィンみたいな方向。僕は今の彼のスタイルがエキサイティングで好きだ。たぶんこの試合でガブのファンになった人も多いと思う。

ロス:僕は史上最強という意味ではやはりケリーかなと思う。11回のタイトル、これを無視できない。そしてこのうちの半分は戦術で手にしたと言っても過言ではない。90年代のことを考えると、半分ぐらいはずば抜けた実力で取ったけど、半分は戦略家としての実力で取ったといえる。彼はいつでも計算してるし、いつでも勝つことに貪欲だ。それが今日まで続いてる。49歳になった今でも勝たなくちゃ気が済まない。こんなコンペティティブな選手はおそらくもう他に出ないんじゃないかと思う。

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ミック:ただの世間話での論争でも負けるの嫌いだからね。でも僕の理論としては、このふたりと当たったとき、ガブはいつでもすぐに首を締めにやってくる感じ。5点2本持ったらもう、勝つために相手を締めにかかってくる。
ケリーはちょっと違う。5点2本で決めるのではなく、もう少しハイスコアを出しにくる。
ガブに負けたときはちょっと頭をかいて、何であれやらせちゃったんだろう、って感じになるけど、ケリーはいつもいい波を奪いにくるんだ。

ロス:そこは同意するね。ガブのほうがきっちり仕留めてくる。ケリーはジョーダンとコビーを合わせたみたいな感じ。フリークだ。今も家にいて、勝つことを考えてるだろう。

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ミック:現時点で比較は難しいよね。ガブはCTで15勝あげてるけど、ケリーは55勝。ガブがケリーと同じ長さのキャリアになったら何勝するんだろうね。

ロス:ケリーのまねはお勧めしないね、彼はエイリアンだから(笑)。50歳になるまであれだけの競争心を持ち続けるって、健康に良くなさそうでしょ(笑)。

3:このオージーレッグ2試合で誰が最も失望する結果となったか

ロス:たぶん、ジョンジョンとタイラー・ライト。ふたりともこの2試合でがっかりな結果を残した。でもジョンは今いいサーフィンをしてるし、板も調子いい。イタロとガブをターゲットにして燃えてるから大丈夫だと思う。ちょっと気にかかるのはタイラー。波とのタイミングもずれてるし、少しフラットなサーフィンでいつものようにレールが使えていない感じ。50%とか60%ぐらいのサーフィンしかできていないと思う。

ミック:タイラーのサーフィンは問題ないと思う。サーフィンがフラットっていうけど、あれは彼女のサーフィンじゃなくて波のせい。
ジョンはモーガンとのヒートであきらめちゃったことが敗因だと思うよ。

4:ニューキャッスルとナラビーン、新しいポイントで新しいタイプの波。いつもと違う感じの試合だったけど、この変化を継続したほうがいいか、それともこれきりでやはり戻れるなら元の会場に戻ったほうがいいか

Photo: WSL

ミック:ギャラリーのためにはよかったと思う。でも波という観点だったらやっぱりスナッパーとベルズ、そしてマーガレットリバーというほうがいい。ニューキャッスルとナラビーンでのベストデーでもこれらのポイントブレイクにはかなわない。僕はベストサーファーのサーフィンをベストウエイブで見たいから。
でもQSツアーから来たばかりのルーキーにはよかったと思う。昔ならツアーがブラジルのビーチブレイクに行くと、オッケー、ここでルーキーやワイルドカードが活躍するんだな、とか思ったような感じ。でもトップ10の選手は男女ともあの波でもいつもの感じでしっかりサーフィンできてたよね。まぁ、ミシェル・ボレーズみたいな選手には酷だったかもしれない。

ロス:ナラビーンとニューキャッスルというビッグサーフタウンにツアーが来たという影響は大きいと思う。もちろんスナッパーやベルズのほうがいい波だし、この2試合のビーチブレイクはちょっと波運も勝負に影響したのは事実だ。でもギャラリーのためにはよかったね。ちょっとトリッキーな波の入る2021のツアーで勝つサーファーは、いつもの年より評価されるべきなのかもしれない。いろんな意味で僕にとってはノスタルジックな感じもした。90年代の僕が選手だったころはナラビーンの試合は毎年あったし、夏の日本、夏のフランス、ものすごいギャラリーでそのエネルギーはすごかった。でも波のクオリティには代えられない。世界中のベストな波で選ばれたワールドチャンピオンが見たい。2022年はベストな波でベストなパフォーマンスのツアーが見たいね。

F+編集長つのだゆき

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