恐らく、このイベントが始まるまで多くの人が知らなかったオーストラリアのロットネスト島を舞台とした『リップカール ロットネスト サーチ』
イベント前半はこの土地でしか見られない固有種「クアッカワラビー」が話題になっていたが、波が良くなってきた後半はフィジー・タバルア島のレストランツのようなストリックランドベイのレフトが強く印象に残った。
そして、終わってみれば異次元の領域に入ってしまったガブリエル・メディナの凄さを思い知らされたイベントだった。
都筑有夢路が初の5位
レイキー・ピーターソンのリプレイスメントとしてオーストラリアレッグの2戦目、ノースナラビーンから参加している都筑有夢路。
2戦続けて壁になっていたRound of 16をクリアしてQF進出を果たし、初めての5位になった。
次の挑戦は5月29日〜6月6日に中米エルサルバドルで開催される『2021 ISAワールドサーフィンゲームス』で、結果次第では東京五輪の出場権を得ることも可能だ。
CTの方は6月18日〜20日にケリーのウェーブプール、サーフランチで開催される第6戦『Jeep Surf Ranch Pro』にレイキーの回復具合によって参加が可能になってくる。
なお、五十嵐カノアはRound of 32でコナー・オレアリーと対戦。
コナーが今シーズン初のRound of 16進出を果たした一方、カノアは今シーズン初の17位に終わった。
モーガン・シビリックの活躍
今イベントではルーキーのモーガン・シビリック、リプレイスメントのリアム・オブライエンが快進撃を続けて連日話題になっていた。
SFではこの二人が対戦してモーガンが勝利。
もし、リアムが優勝していたら、2008年のタヒチ戦、ブラジリアンのブルーノ・サントス以来のワイルドカード(リプレイスメント)の優勝だった。
オーストラリアでも有数の豊富な種類のブレイクが揃う東海岸のアンゴーリ出身、現在はニューキャッスルに拠点を置くモーガンはまだ21歳。
2018年までQS3桁だった選手が2019年に11位までランキングを上げてクオリファイを果たし、CT第2戦のニューキャッスルで3位。
ナラビーンでは5位と玄人好みのレールサーフィンでルーキーらしからぬ成績を重ね、今回は2位になった。
ランキングでも5位に浮上してワールドタイトルを決める「リップカール WSL ファイナル」の出場圏内にも入ってきた。
「自信を持って挑めたこの数イベント、ファイナル進出も実現できると信じていた。もし、昨年の今頃、CTでこの結果を予想していたかと聞かれたらNoだったけどね。リアムとは昔から切磋琢磨してきた仲なんだ。だから、ファイナルよりSFの方がナーバスだったかな。ファイナルもやる気十分だったけど、ギャビーに圧倒されて波数も少なくてチャンスがなかった。でも、今は凄い興奮しているよ」
モーガン・シビリック
2011年、ガブリエルがサンフランシスコでのサーチイベントを17歳で制した時、12歳年上のジョエル・パーキンソンと表彰台に上がってた。
立場は違えど、10年後に復活したサーチイベントで憧れの選手と同じ舞台に立ったモーガンの心境は当時のガブリエルに似ているのかもしれない。
2021年版 ブラジリアン・ストーム
すでに終了した5戦中、4戦でファイナル進出。その内の2戦で優勝しているガブリエルは元より、今回3位に入り、ニューキャッスルで優勝したイタロ・フェレイラ。マーガレットリバーで優勝したフィリッペ・トレドとブラジリアンの強さは圧倒的だ。
すでに「ブラジリアン・ストーム」という言葉は死語というほど彼らの強さは定着しているが、この3強が「リップカール WSL ファイナル」に残る可能性は十分にある。
特にアンディ・キングというミックのワールドタイトルに関わったコーチと常に側にいる新妻ヤスミン・ブルネットの愛の力が備わったガブリエルはほぼ確実に残るだろう。
「再びサーチイベントのトロフィーを獲得できて嬉しいよ。今シーズン、本当に良いスタートで、リズムも維持しているのが最高だね。誕生日が近い妻からこの可愛いトロフィーをせがまれていたんだ。今、手に入れることができて嬉しい」
ガブリエル・メディナ
もし、「リップカール WSL ファイナル」がない通常のシーズンであれば、苦手だったオーストラリアレッグを克服したガブリエルが最終戦を前に3度目のワールドタイトルを決めるシナリオがすでに出来始めていただろう。
CT第5戦『リップカール ロットネスト サーチ』結果
1位 ガブリエル・メディナ(BRA)
2位 モーガン・シビリック(AUS)
3位 リアム・オブライエン(AUS)、イタロ・フェレイラ(BRA)
5位 ジュリアン・ウィルソン(AUS)、ミゲル・プーポ(BRA)、コナー・コフィン(USA)、ヤゴ・ドラ(BRA)
2021年ワールドツアー:トップ5
1位 ガブリエル・メディナ(BRA) 38,920pt
2位 イタロ・フェレイラ(BRA) 30,235pt
3位 ジョーディ・スミス(ZAF) 22,505pt
4位 フィリッペ・トレド(BRA) 22,065pt
5位 モーガン・シビリック(AUS) 21,290
2年ぶりのサリースマイル
ブラジリアンの強さが際立っているメンズと比べ、ウィメンズサイドはオーストラリア勢が強い。
その一方でハワイアンのカリッサ・ムーアのコンスタントさはガブリエル並みであり、ここまでの5戦の内、全て3位以上。
優勝1回、2位1回の安定感でオーストラリアレッグ終了後もカレントリーダーの座を維持している。
ストリックランドベイではサリー・フィッツギボンズのバックハンドが最も冴え、QFではバレルライド、SFではターンでハイスコアを稼ぎ、最後はフランスのジョアン・ディファイを圧倒して優勝。
2019年のブラジル戦以来、CT通算12勝目でランキングを2位に浮上させた。
「昔からリップカールサーチのイベントを見てきたけど、その多くがレフトだったわ。復活した最初のイベントがレフトなのは嬉しい。今まで得意なバックハンドを生かすチャンスが少なかったからね。ロットネスト島で再び大会が開催されることはないかもしれないし、これは偉業だと思うわ。最高の気分ね」
サリー・フィッツギボンズ
かつて無冠の女王と言われたサリーにとってシーズン最後にトップ5に入り、「リップカール WSL ファイナル」でワールドタイトルを決めるフォーマットは夢を叶える大きなチャンスなのかもしれない。
サリーを始め、ステファニー・ギルモア、カリッサ・ムーア、キャロライン・マークス。
メンズはブラジリアン3強、ジュリアン・ウィルソン、オーウェン・ライトを始め、多くのCT選手はこの後、中米・エルサルバドルに向かい、5月29日〜6月6日に開催される『2021 ISAワールドサーフィンゲームス』に出場する。
東京五輪の最終選考を兼ねたこの大会、日本代表「波乗りジャパン」のメンバーは都筑有夢路、松田詩野、前田マヒナ、五十嵐カノア、村上舜、大原洋人の6名。
ある意味、CTよりも興味深い戦いになりそうだ。
CT第5戦『リップカール ロネスト サーチ』結果
1位 サリー・フィッツギボンズ(AUS)
2位 ジョアン・ディファイ(FRA)
3位 タイラー・ライト(AUS)、カリッサ・ムーア(HAW)
5位 マリア・マニュエル(HAW)、ニッキ・ヴァン・ダイク(AUS)、イザベラ・ニコルス(AUS)、都筑有夢路(JPN)
2021年ウィメンズワールドツアー:トップ5
1位 カリッサ・ムーア(HAW) 36,055pt
2位 サリー・フィッツギボンズ(AUS) 28,185pt
3位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA) 27,540pt
4位 タイラー・ライト(AUS) 26,050pt
5位 ステファニー・ギルモア(AUS) 24,645pt
…18位 都筑有夢路(JPN) 9,965pt
WSL公式サイト:http://www.worldsurfleague.com/
(空海)