現地時間5月29日に中米のエルサルバドルで開幕した「2021 ISAワールドサーフィンゲームス」。今大会は東京オリンピックサーフィン競技の出場最終選考を兼ねており、五輪に出場する男女各20名のうち、残りの男子5名、女子7名が決まる。
一方で、五輪選考基準で最も優先度の高い「2019 WSLチャンピオンシップツアー」から出場枠を獲得しているCT選手も、今大会に出場義務があり、終了したばかりのオーストラリアから多くの選手が参加。
しかし、ブラジルやアメリカ代表をはじめ、CT選手達が続々と途中棄権をしており、様々な意見が出ている。
「五輪出場を狙う他の選手を潰したくない」アメリカ代表
アメリカ代表として五輪出場を確定させているカリッサ・ムーアとキャロライン・マークスは、R1で他国の選手に圧倒的な差をつけて余裕の1位通過をしたものの、R2に現れずリパチャージ行きが決定。リパチャージにも姿を現さないまま不戦敗となった。
これに対し、アメリカ代表チームを統括するUSA Surfingは、公式SNSでユーザーからの質問に対して以下のように説明した。
「(カリッサとキャロラインの)二人とも、この大会で五輪出場資格を得たいと思っている他の選手を潰してしまうことを避けたいと思っています。また3カ月以上WSLのオーストラリアレッグに参戦していたため、家族に会い、オリンピックへの準備を始めたいと思っています。ISAが今回もまた素晴らしいイベントを開催し、オリンピック出場資格への道を切り開いてくれたことに感謝します。また、彼らの棄権を許可してくれたあなたの理解と寛大さにも感謝します。」
ブラジル代表は全員が大会を去る
ブラジル代表のガブリエル・メディナ、タティアナ・ウェストン・ウェブもR1終了後に棄権し、公式SNSで下記の通り説明。
「初戦に勝利したあと、東京五輪のためのパスポートにスタンプが押されました。タティアナ・ウェストン・ウェブとガブリエル・メディナは、過酷で挑戦的なシーズンが続くため、自分自身をセーブするために、イベントを離れるという苦渋の決断を下しました」
さらにその数日後、R3まで出場していたイタロ・フェレイラやフィリッペ・トレドを含むブラジル代表全員が大会を去ると公表した。
「大会初日の結果によりブラジル代表は五輪の4枠が確定し、この後も続くシーズンで最善の結果を出すため、ブラジル代表チームはISAワールドサーフィンゲームスを去ることに決めました。ブラジル代表団は6月7日までエルサルバドルに滞在し、この素晴らしい機会を利用してフリア・サントスのためのトレーニングと、コロナ陽性と診断されたシルヴァナ・リマの回復を待ちます」
その他CT選手の動向
コスタリカ代表のブリッサ・ヘネシーもR1出場後に棄権。オーストラリア代表のジュリアン・ウィルソンもヒート表から消えている。
一方で、日本の五十嵐カノアを筆頭に、オーストラリア代表のオーウェン・ライト、ライアン・カリナン(敗退済み)、ステファニー・ギルモア、サリー・フィッツギボンズ。フランス代表のジェレミー・フローレスやミシェル・ボウレズは、引き続き大会に出場中だ。
多数のCT選手が途中棄権した理由
豪Stab誌によれば、CT選手の多くが「2019CTランキングから五輪出場を確定させた場合も、エルサルバドルでのISA世界選手権に参加しなければいけない」という五輪出場選考の基準に反対。主な反対理由として以下を挙げていたという。
1. (エルサルバドルで)五輪出場権を獲得しなくてはいけない他選手と競争するのは意味がわからない
2. オーストラリアで3か月もの期間を過ごし、 4つのCTイベントに参加したばかり
3. パンデミックなのに51ヶ国の人々と接触するのは全くもって危険
しかし、ISAのフェルナンド・アギーレ会長は、この選考基準の意義を「ISAワールドサーフィンゲームスは、すべての国のすべての選手が平等な方法で代表選手として参加する場所。IOCにとってはこれが重要なのです。メッシとロナウドがワールドカップに出場し、代表チームのためにプレーしなければならないのと同じです。」と説明している。
なお、ISAが公表している「出場資格およびノミネート基準」では、「2019年および2020年のISAワールドサーフィンゲームスに出場すること」としか記載されておらず、途中棄権した場合の扱いなどについては明記されていない。
ちなみに、2019年CTランキングから五輪出場資格を得ている、南アフリカのジョーディ・スミスとフランスのジョアン・ディファイは今回のISAワールドサーフィンゲームスに参加していない。
2024年パリ五輪に向けての改善点か?
反対意見が出ながらも開催された今回の「ISAワールドサーフィンゲームス」で、抜け道のような形で途中棄権をしたCT選手達だが、各代表チームのSNSを見る限りは、穏便にISAの承認を得て五輪出場権は確保したまま会場を去ったような投稿をしている。
しかし、途中棄権したCT選手と同ヒートにクレジットされていた選手と、出場し続けているCT選手とのヒートにクレジットされていた選手で、公平性に問題はないのか。五輪本番で最大のパフォーマンスを発揮するための判断とはいえ、スポーツマンシップに反しないか。そもそも1回戦だけ参加することに意味はあるのか、元々の選考基準のルールに問題がないか、など様々な声があがっている。
東京五輪で初めてオリンピック競技となるサーフィンだが、2024年のパリ五輪に向けてその点は改善されていくのかもしれない。
(THE SURF NEWS編集部)
「2021 ISAワールドサーフィンゲームス」特設ページ
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