ジャカルタのホテルで取材に応える和井田理央

和井田理央が五輪内定の喜びを語る、サーフィン・インドネシア代表

東京五輪にインドネシア代表として出場することが決まった和井田理央。先週までエルサルバドルで開催されていた『2021 ISAワールドサーフィンゲームス』を終え、ジャカルタのホテルで隔離中の6月14日にオンライン取材に応じ、五輪に対する意気込みなどを語った。


アジア枠をめぐる村上舜との戦い

日本人の母とインドネシア人の父を持ち、インドネシア登録国籍の選手として活躍する和井田理央。宮崎で行われた『2019 ISAワールドサーフィンゲームス』で、東京オリンピックのアジア出場枠を日本の村上舜と争い、惜しくもその座を譲ることとなった。

2019年ISA宮崎のリパチャージ10で、アジア1位の枠を賭けて直接対決した村上舜と和井田理央。ヒート終了後にハグを交わした。 Photo: THE SURF NEWS

2021 ISAワールドサーフィンゲームス』では五輪出場資格を得るためにCT選手等を除く上位5位入りを目指していたが、結果はリパチャージ6で敗退し個人25位。五輪代表の夢は諦めかけていたところ、思わぬ朗報が舞い込んだ。

日本では、五輪選考基準で最も優先度の高い「2019 WSLチャンピオンシップツアー」から内定を得ていた五十嵐カノアに続き、2番目に優先度の高い今回の「2021 ISAワールドサーフィンゲームス」で大原洋人も内定。
五輪出場には「1カ国男女各2名まで」という上限があるため、優先度3番目となる「2019 ISAワールドサーフィンゲームス」でアジア1位となり暫定出場権を得ていた村上舜は五輪を逃すことになり、同大会でアジア2位だった和井田理央の繰り上げ出場が決まった。

「五輪にクオリファイしたと聞いたときは信じられなかった」

エルサルバドルで五輪出場の知らせを聞いた和井田理央はその時の心境を「今回のISAでは早い段階で負けてしまい、オリンピックはダメかなと諦めていたので、インドネシアのコーチから“五輪にクオリファイしたよ”と言われたときは信じられなかったです。五輪の選考基準が難しくて理解できてなかったけど、宮崎で上位に行けてたのが良かった。オリンピックチャンネルやISAがSNSでシェアしてくれて嬉しかったです」と語った。

2021ISAワールドサーフィンゲームス Photo: ISA / Ben Reed

母から「五輪きまったの?」とメッセージが来た際も、「したみたいだけどまだ信じられない」と返信したといい、「まだお母さんとは五輪の話をあまりしていないので、家に帰ったら沢山話すと思う」とコメントした。

「カノア君とあたって勝ちたい」

サーフィンが五輪追加種目に決まってからオリンピックを意識するようになったという和井田理央。今回の五輪内定を受けて、インドネシアのメディアからは「おめでとう、インドネシアのサーファーで一番最初のオリンピアンになれたのは凄いと言われる」と国内からも期待がかかっている様子を説明した。

「オリンピックの目標はゴールドメダルだけど、メダルをゲットできるだけでも嬉しい。インドネシアの旗をオリンピックに持っていくのも嬉しい。五輪はどういう気分になるか分からないけど、パレードを楽しみにしている。サーフィンはいつも通りにやる」と五輪に参加する喜びを表した。

対戦したい日本選手に、自身と同じQuiksilverライダーであり、サーフボードも同じSharpeyeを使用する五十嵐カノアの名前を挙げ、「日本の選手だったらカノアくんとあたって勝ちたい。同じクイックなので小さい時からみていて、今も世界のトップにいる。何回か試合にあたったことあるけどサーフィンも上手い。エルサルバドルの大会が始まる前にカノアくんと話して、シャープアイのモデルについていっぱいアドバイス貰えて良かった」と話した。

「夏の千葉の波は小さくなると思うけど、台風が来ればまた変わると思う。バリに戻ったら小波の練習をして、小さい波用のボードも準備したい。サーフィンの調子はいい方だけど、波とのコネクションをもっと調整していきたい」と五輪に向けての抱負を語った。

「お母さんは一番僕のことを分かってくれる存在」

コロナ禍では、高いエアーやウェイトトレーニングに集中していたという和井田理央。胸、肩、脚のトレーニングと毎日食べる母の手料理で、2019年に60kgだった体重は68kgにまでなったという。

「お母さんももっとヘルシーなご飯を考えて作ってくれるようになった。お母さんは今でも毎日ビデオ取ってくれて、僕の弱さや強いところを知ってて、一番僕のことを分かってくれてる存在」と感謝の気持ちを示した。

コロナ禍で世界からの注目も高まった和井田理央

コロナ禍で試合のなかった2020年。多くの選手が活躍・メディア露出の場を探すのに腐心した一方で、和井田理央は『Stab High』にも出場し、ロス・ウィリアムスに「現在のCT選手の半数以上よりサーフィンがうまい」と言わしめ、世界からの注目を高めた選手の一人だろう。

「コロナ禍ではロックダウンで飛行機が飛ばずバリに戻れなくなって、レイキーピーク(スンバワ島)で3ヶ月過ごすことになって波も良かった。バリに戻ってからは、パダンパダンでチューブの練習をしたり、メンタワイやロンボクなど他の島にも行った。大会がなかったのは寂しかったけど、フリーサーフィンが沢山できてよい経験になりました」

バリに来ていたケリー・スレーターとは10回くらいクラマスなどでセッションしました。他にもハワイから上手いプロサーファーが結構きていて、もっとレベルアップしないととよい刺激になった。Stab Highもアメリカから1人来れないということで1週間前に招待が届きました。エアーの大会の経験をすごい積むことが出来ました」

「今のライバルはクトゥ。デーン・レイノルズやノア・ディーンにも刺激を受けてます」

影響を受けたサーファーを聞かれると「小さい時はチマジャのデデ・スリアナがバリのいろんなところにサーフィンに連れていってくれました。今は、若い子でもすごいエアーをする人がいて、16歳のブロンソンや11歳のサーファーにも刺激を受けています」と回答。

「1歳下のクトゥ・アグースは、今回のワールドゲームスであと1ヒート勝てばオリンピックに出場出来てた。クトゥには負けなくないという考えがあって、クトゥが自分の成績よりかなり上回ってたので結構悔しかった。もっとレベルアップしてインドネシアのサーファーの中でももっと上に行きたいと思っています」

海外の選手については「コロナが始まってフリーサーファーの映像をよく見るようになって、デーン・レイノルズやノア・ディーンなどに刺激を受けています。大会が始まるとフィリッペやメディナの映像もよく見ます」とコメントした。

日本のファンへのメッセージ

「五輪に入れて嬉しいです。オリンピックで日本に行く時に会えたらいいけど、コロナでどういうシチュエーションになるかわからない。会えるのを楽しみにしています。自分のベストのサーフィンを見せたいです。」


コロナ禍でフリーサーフィンに磨きがかかり、世界からの注目も高まっている和井田理央。エルサルバドルの直前は、久々の大会に緊張していつも通りにサーフィンが出来なかったというが、あと1カ月強に迫ったオリンピックまでにどのように調整をかけてくるのか。その晴れ姿を楽しみにしたい。

(THE SURF NEWS編集部)

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