コロナ禍で行われた2021年のCTシーズンはハワイから始まり、オーストラリアで4戦。
サーフランチの後に東京五輪を経て、最後は2006年にアンディ・アイアンズが制したリップカールサーチの地、メキシコの「Barra de la Cruz」で締めくくられた。
本来なら2024年パリ五輪のサーフィンの会場でもあるタヒチのチョープーが開催地の『タヒチプロ』が最終戦だったが、フランス政府による緊急事態宣言の影響などでキャンセルされ、急遽メキシコが最後の舞台になったのだ。
CT最終戦『コロナ メキシコ オープン』はウェイティングピリオド初日の8月10日から開幕して4日連続で進行。
現地時間8月13日にファイナルデイを迎えた。
ウィメンズはステファニーがCT通算32勝目
2021年のCTシーズンはスナッパーロックスが外されたこともあり、活躍の機会が見出されなかったステファニー・ギルモア。
スナッパーロックスと同じ長いライトハンダーはどこまでもパーフェクトで、彼女のスタイルにハマっていた。
QFでタティアナ・ウェストン・ウェブ、SFではカリッサ・ムーアと9月に控える『WSLファイナル』のライバルでもある二人を倒してファイナル進出。
最後はハワイのマリア・マニュエルとのクロスゲームを制して今シーズン初優勝を決めた。
「最高の気分よ。マリアはイベント全体を通して私が最も強いと感じた選手だった。彼女は正しい波に乗り、とても美しいサーフィンをしていたわ。ファイナルでは彼女がパドリングで私を追い越すたびに、背中に’AI FOREVER’と書かれていて、マナ(特別な力)を持っているように感じたの。厳しいファイナルを勝てて最高の気分よ」
ステファニー・ギルモア
ウィメンズの『WSLファイナル』に出場するトップ5は以下。
本命はカリッサとステファニー。
他3名がタイトルを獲得すれば初となる。
レイン・ビーチェリーの7度のワールドタイトルに並んでいるステファニーが優勝すれば、ウィメンズのタイトル記録を更新することになる。
年齢やツアーを取り巻く環境などを考えるとラストチャンスかもしれない。
・カリッサ・ムーア(HAW)
・ステファニー・ギルモア(AUS)
・ジョアン・ディファイ(FRA)
・タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)
・サリー・フィッツギボンズ(AUS)
メンズはルーキーのロボが初優勝
2021年シーズンのルーキーで最も活躍したのは『WSLファイナル』進出を決めたモーガン・シビリックだが、最終戦ではロボことジャック・ロビンソンが長い沈黙を破り、CT初優勝。
SFではリプレイスメントのマテュース・ハーディを相手にアーリーウープとバレルでコンビネーションスコアの圧勝。
バックサイド・ハックで快進撃を続けたブラジリアンのデイヴィッド・シルヴァとのファイナルは僅か0.02ポイント差の白熱した戦いだった。
「やっと勝てたよ。どこから話していいか分からない。クオリファイを果たした時の感覚に似ていて、今はまだ結果を受け入れ始めている段階さ。全てが上手くいくように色々なことをしたよ。ドラ一家、妻のジュリア、家族、スポンサー。彼らなしでは成し遂げられなかった。ここに来る前からエネルギーを持ち続けようとしていた。ある特定のゾーンにいる時は多くを語らない。今週はそのゾーンにいて、みんなのサーフィンのレベルよりも上に立っているとどのヒートでも感じたね。今回の優勝は息子を亡くしたトロ・サーフトリップ(地元のサーフガイド)のトロさんに捧げるよ。本当に悲しい。彼に大きな愛と祈りを送りたい」
ジャック・ロビンソン
今回の優勝でランキング12位まで浮上して2022年のリクオリファイを確定させたロボ。
メキシコで見せた彼のライディングはエアー、バレル、カービングとバラエティ豊かで、かつてウエスタンオーストラリアの神童と呼ばれていたサーファーがCT選手として大きな進化を遂げた証だった。
メンズで『WSLファイナル』進出を決めたトップ5は以下。
ブラジリアン3名とカリフォルニアのコナー、ルーキーのモーガンが最後に残った。
・ガブリエル・メディナ(BRA)
・イタロ・フェレイラ(BRA)
・フィリッペ・トレド(BRA)
・コナー・コフィン(USA)
・モーガン・シビリック(AUS)
五十嵐カノアはトップ5入りを逃す
東京オリンピックサーフィン競技での銀メダル獲得から『WSLファイナル』に気持ちを入り変えてメキシコ入りした五十嵐カノアだったが、最初のSeeding Roundでコロへ、ケリーに敗れ、Round of 32ではコロへとの再戦を落としてシーズン2度目の17位でフィニッシュ。
この17位を2戦アジャストした結果、ランキング8位で2021年シーズンを終えた。
一方、インドネシア代表として来日していた和井田理央は今回リプレイスメントで参加。
Round of 32ではフィリッペ・トレドを倒す活躍で注目されていた。
二人のレジェンドの引退セレモニー
ビッグネームの引退表明が重なった今シーズン。
ジュリアン・ウィルソンは東京オリンピックが最後の舞台となり、マイキー・ライトはCTを退いてフリーサーファーに戻る。
ジェレミー・フローレスはRound of 16でコナー・コフィンに負けた後、ケリーとレオナルドに担がれて15年間のキャリアに終止符を打った。
エイドリアーノ・デ・スーザはファイナル前に特別にキャリア最後の波として引退の花道が用意され、様々な思いが篭ったライディングの後、ブラジリアンクルーに囲まれた。
2015年にブラジリアンとして初めてのパイプライナー、二人目のワールドチャンピオンに輝いたエイドリアーノ。
CT通算7勝、275ヒート勝利の功績を残し、世界最高峰のサーフィンレースから去る。
ワールドタイトルを決める『WSLファイナル』は9月に開催
今シーズンのフォーマット変更の大きな目玉でもあるトップ5による『WSLファイナル』はカリフォルニアのローワー・トラッセルズを舞台に9月9日〜17日のウェイティングピリオドで開催される。
ランキングが上の選手ほどヒート数が少なく、トップの選手は最後にラスボス的に1ヒートを勝てばワールドタイトルを獲得できるフォーマット。
約1ヶ月後に2021年のワールドチャンピオンが決定する。
CT第7戦『Corona Open Mexico』結果
メンズ
1位 ジャック・ロビンソン(AUS)
2位 デイヴィッド・シルヴァ(BRA)
3位 レオナルド・フィオラヴァンティ(ITA)、マテウス・ハーディ(BRA)
5位 ガブリエル・メディナ(BRA)、コナー・コフィン(USA)、フレデリコ・モライス(PRT)、イタロ・フェレイラ(BRA)
ウィメンズ
1位 ステファニー・ギルモア(AUS)
2位 マリア・マニュエル(HAW)
3位 サリー・フィッツギボンズ(AUS)、カリッサ・ムーア(HAW)
5位 ジョアン・ディファイ(FRA)、コートニー・コンローグ(USA)、イザベラ・ニコルス(AUS)、タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)
WSL公式サイト:http://www.worldsurfleague.com/
(空海)