ハワイから始まり、メキシコで最終戦を迎えた2021年のCT。
残るは近年のWSLで最も大きなフォーマット変更と言える「WSLファイナル」のみ。
9月9日〜17日の期間で最高の波の日を選び、一日限りでワールドタイトルを決める特別なイベントを解説しよう。
メンズはガブリエルが大本命
今シーズン、多くのイベントをサポートした「Rip Curl」が冠スポンサーとなる「WSLファイナル」に出場するのは、2021年のレギュラーシーズン全7戦の内、上位5戦のポイントのランキングトップ5の選手。
これまでのシーズンでは最終戦を待たずにワールドタイトルが決まることが多く、残りのイベントは消化試合のようになってしまう感じだったが、「WSLファイナル」によってそれが無くなる。
更にメンズとウィメンズが揃って同じ日にタイトルを獲得することになると同時にレギュラーシーズンの結果の公平さを保つためにランキング上位の選手が有利になるようにフォーマットが設定されている。
2021年の「WSLファイナル」を戦う選手は以下。
・ガブリエル・メディナ(BRA)
・イタロ・フェレイラ(BRA)
・フィリッペ・トレド(BRA)
・コナー・コフィン(USA)
・モーガン・シビリック(AUS)
メンズはシーズンを通して強かったガブリエル、イタロと後半に安定してきたフィリッペ。
最終戦の結果で決まったコナーとルーキーのモーガン。
この中でワールドタイトルを獲得したことがあるのは、ガブリエルとイタロの2名。
ガブリエルは2014年にブラジリアンとして初のチャンピオンとなり、2018年に2度目を獲得。
イタロは2019年にガブリエルとタイトルを争い、最終戦で手に入れた。
もし、ガブリエルが今年3度目のタイトルを獲得すれば史上6人目のサーファーとなる。
レギュラーシーズンの成績を見るとガブリエルが大本命、東京オリンピックサーフィン競技で金メダルを獲得したイタロが対抗と言える。
この中で唯一トラッセルズのイベントでの優勝経験があるフィリッペも侮れない存在だ。
もし、コナーがタイトルを獲得すればアメリカ人では2011年のケリー・スレーター以来、カリフォルニアのサーファーでは1990年のトム・カレン以来となる。
モーガンがタイトルを獲得すればメンズのルーキー(ウィメンズはステファニーが達成)では初の記録となる。
ウィメンズはカリッサが大本命
ウィメンズはカリッサがダントツの成績でトップ。
他4名はアップダウンがあったが、順当なメンバーが残った。
・カリッサ・ムーア(HAW)
・ステファニー・ギルモア(AUS)
・ジョアン・ディファイ(FRA)
・タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)
・サリー・フィッツギボンズ(AUS)
この中でワールドタイトルを獲得したことがあるのは、カリッサとステファニーの2名。
カリッサは4度、ステファニーは7度のタイトルを獲得。
タイトル数で言えばステファニーが上回るが、現在のサーフィンのピークはカリッサの方が上回るという意見が多く、事実レギュラーシーズンの成績では7戦中全てSF以上、ファイナル進出が3回の優勝が1回と圧倒的な数字。
更に東京オリンピックサーフィン競技で金メダルを獲得している。
もし、ステファニーが獲得すればレイン・ビーチェリーと並んでいるワールドタイトル最多記録を更新する。
一方、多くのWSLファンがタイトル獲得を願っているのはサリーだろう。
2009年からの長いキャリアで何度もタイトル争いに絡み、苦い思いをした彼女は無冠の女王とも言われている。
もし、タティアナが獲得すればブラジリアンのウィメンズでは初。
ジョアンが獲得すればヨーロッパのウィメンズでは初の獲得となる。
会場とフォーマット
会場はカリフォルニアのローワー・トラッセルズ。
長年CTの舞台として使用され、2022年のレギュラーシーズンに復活する場所でもある。
「WSLファイナル」のフォーマットはレギュラーシーズンのランキング順にアドバンテージがあり、ランキング下位の選手からマンオンマンで進行。
最後にラスボス的に待ち受けるガブリエルとカリッサは勝ち上がってきた選手と対戦。3ヒートの内、最初に2勝した選手が2021年のワールドチャンピオンに輝く。
特別なジャージ
「WSLファイナル」では新たなフォーマットに合わせて特別なデザインのジャージが用意されている。
デザインはローカルアーティストでジョーディ・スミス、タジ・バロウ、小林桂や大原洋人のボードにもアートワークしたことがあるジェフ・ルカシック(Jeff Lukasik)が担当。
ルカシックはイベント全体のブランディングやサンクレメンテのリップカールストアの壁画など、コラボレーションの一環として、ロワーズの自然の美しさを見事に表現した5つの作品をジャージのデザインに取り入れた。
これは2020年秋に15年間の戦いの末、有料道路建設の脅威から守ることに成功した「Save Trestles(トラッセルズを救え)」キャンペーンにちなんだものでもある。
更にWSLの『We Are One Ocean』キャンペーンとも密接に関係している。
世界のリーダーに海の保護と保全、野生生物の保護、海を楽しむ人々の保護、気候変動への対応力の向上を呼びかけるものだ。
WSLはサーフィンの歴史における特別な瞬間である初開催の「WSLファイナル」を記念して、限定の記念ジャージを製作。
リサイクル素材を使用したこの記念ジャージはWSL公式ストアで販売される。
「WSLファイナル」のウェイティングピリオドは9月9日〜17日。
現在の予報では13日以降に開催の可能性がある南南西ウネリが入る予想。
(空海)