今CTシーズンを締めくくる初のWSLファイナル開催に合わせ、WSLはこれまでサーフィン業界において歩んできたジェンダー平等への長い道のりを「進歩・進化」として振り返る記事を掲載した。
ジョアン・ディファイとステファニー・ギルモアがローワーズで開催されるリップカールWSLファイナルの歴史的な第1試合でパドルアウトするとき、平等へのコミットメントをさらに拡大した、プロサーフィンの新しいスタンダードが設定されることになる。
プロサーフィンで初めて男女が同じ人数、同じ日、同じステージ、同じ賞金でチャンピオンシップツアーの世界タイトルを競う大会となるからだ。これは世界のスポーツリーグの中でも画期的なことであり、完全なジェンダー平等を生み出そうとしているWSL長期計画の第2フェーズであり、スポーツにおいて女性に平等なチャンスを提供するリーダーとしての地位を確立するものだ。
しかし、このような進展は容易ではなかった。40年以上もの間、プロサーフィンは家父長的な文化によって形成され、女性には別のイベント、小さな波の場所、わずかな賞金などの不平等なシステムが確立されていた。
70年代から80年代、そして90年代にかけては、女性初プロサーファーのマーゴ・オバーグ、キム・メアリグ、フリーダ・ザンバ、ウェンディ・ボタなどの大胆不敵な女性たちが競技の内外を問わずラインナップにチャージし、ふさわしい敬意と評価を得ようとしていた。
90年代半ばから後半にかけて、4回連続で世界タイトルを獲得したリサ・アンダーセンとそのプログレッシブスタイルがパフォーマンスのバリアを打ち破り、レアなSurfer Magazineの表紙と「Lisa Andersen Surfs Better Than You(リサ・アンダーセンはあなたより上手い)」という見出しをつけられその後ROXYの爆発的な成長を後押ししたが、一般的なブランドは女性サーファーとそのイベントに対して貧弱なサポートしか提供しなかった。
新世紀の到来を予感させるような明るい雰囲気の中、レイン・ビーチリーがハイパフォーマンスな女子サーフィンの旗を掲げ、ブッグウェーブに挑み、そして勝利を掴んだ。彼女の根性と粘り強さは、前例にない7つの世界タイトルと、男子イベントでの初のワイルドカード出場をもたらした。
2002年、映画「ブルークラッシュ」の大ヒットにより、女子サーフィン、特に競技サーフィンは世界的な知名度を獲得し、若い女性やティーンエイジャーたちが世界中のビーチでパドルアウトするようになった。
その結果、サーフィン業界は大きく成長し、収益性も向上したが、男子トップ選手の年俸が100万ドルに達する一方で、女子ツアーは2006年までに事実上消滅した。この年、各ブランドはツアーの運営のみをサポートすることに合意し、広告宣伝費としての出資は一切行わなかったのだ。
これは女子プロサーフィン界にとって暗黒の時代で、7年間に渡って行われてきた、女子プロサーフィン選手をよりヘビーな波に乗せるというツアーの「実験」が終了した年でもあった。タヒチ・チョープーでの大会後、ASPはほとんど予告や選手たちへの相談もなく、「女性には危険すぎる」という理論的根拠ない理由をつけて、翌年のイベントを突然キャンセルした。
その当時、2006年の優勝候補であり、チョープーでも優勝したメラニー・レッドマン-カーは、シドニー・モーニング・ヘラルド紙に次のように語っていた。「かなり性差別的な決定。私たちはあそこでサーフィンをしてきたからこそ尊敬されてきたのです。彼らは、私たちにとってヘビーすぎて危険だと思っているようだけど、私たちはそれが間違っていることを示したいし、それをこれまでやってきました。チョープーを失うことは、まさに無意味なことです。」
世界チャンピオンのステファニー・ギルモア、カリッサ・ムーア、タイラー・ライトなど、ビーチリーの後を継ぐ新しい才能が豊富にいるにもかかわらず、10年以上にわたって女子サーフィンの構造と利害関係はほとんど変わらなかった。彼女たちをはじめとする新世代のアスリートサーファーたちは忍耐強く限界を超え続け、よりパワーがあり、より大きなエアとより深いバレルで女子サーフィンを再定義していった。
そして2012年、新たなオーナーがツアーを引き継ぎ、WSLとして生まれ変わったリーグによって、長らく保留されていた女性の平等という新たな価値観が吹き込まれた。WSLは2018年9月に「2019年シーズン以降、WSLが所有・運営するすべてのイベントで、女性に平等な賞金を分配する」ことを発表したが、これは経営陣の刷新を受けてのことである。
WSLのCEOエリック・ローガンは「私たちのオーナーグループと経営陣は、すべての人にサーフィンへのアクセスと楽しみを提供するためのより大きな課題の一環として、サーフィンにおける女性の平等を推進することを約束します。2019年の賞金の平等化は、スポーツの多様性と包括性を拡大するための長期計画の始まりに過ぎません。」と述べている。
その1年後、2019年のルルレモン・マウイ・プロにおいて、カリッサ・ムーアが史上初の、男子と同等の賞金額を得た世界チャンピオンとなった。カリッサは「2019年に4つ目のワールドタイトルを獲得できたことにとても感謝しています。WSLは、賞金を平等にし、シーズンを通して素晴らしいプラットフォームでパフォーマンスをする機会を女性に与えてくれることで、私たちのスポーツを本当に高めてくれました。」と語っている。
2020年のパンデミックによりツアーがひっくり返る中、WSLは静かに次のフェーズに取り組んでいた。2021年のシーズンでは、初めてチャンピオンシップ・ツアーのイベント数を男女同数にすること(女子にとっては新たなベンチマークとなる)、そして誰もが認める世界チャンピオンを決定する新しいフォーマット「ファイナル5」の創設を定めた。
2020年12月、2021年のチャンピオンシップ・ツアーはハワイでキックオフされ、平等な新時代への道がスタートしたが、女子の開幕戦ではちょっとした回り道があった。マウイ島の会場でシャークアタックによる死亡事故で大会が中断されたことを受けて、WSLのリーダーたちはイベントを完了させるために素早く動いた。
ハワイ州政府との協力やプロの女子選手との協議を経て、会場を男子が大会を開催していたノースショアのパイプラインへ移し、男女一緒に大会を終了することが決定した。決勝では、タイラー・ライトがダイナミックなバレリングでカリッサ・ムーアを破り、次の大きな動きが始まった。
2021年8月4日、WSLは、2022年のチャンピオンシップ・ツアーとチャレンジャー・シリーズの内容を発表。構成する19のイベントが、引き続き男女同数のイベントと賞金を提供するだけでなく、15年ぶりのチョープー復活、パイプラインで初めて完全なイベントを開催するなど、男女が同じ会場で同じ時期に開催されるとした。
「ツアーの新しい体制は、ファン、パートナー、アスリートにとって、大きなアップグレードになると信じています」と、ツアー担当SVP兼競技責任者のジェシ・マイリー=ダイヤーは語る。「2022年シーズンのチャンピオンシップツアーとチャレンジャーシリーズが、引き続き女性の平等性を推進するものになることは素晴らしいことです。私たちは関係者の皆さんと協力して、世界最高のサーフィンを披露し、素晴らしい会場を用意し、すべてのサーファーにとって可能な限り公平なプラットフォームとなるよう、慎重にカレンダーを作成してきました。」
ローワーズで開催されるリップカールWSLファイナルは、世界チャンピオン・タイトルという同じ報酬を得るために、同じ日に、同じ波で、同じコンディションで、同数の女性と男性が1日で競い合うという前代未聞のドラマチックなドラマの舞台となる。
カリッサは、「この新しいフォーマットに参加して、男性と同じ日に世界タイトルを争う機会を得られたことに、本当に興奮しています。これまでにないやり方で、とてもエキサイティングな競技デーになるでしょう。いろんな感情が入り混じっていてプレッシャーのかかる状況だけど、全力を尽くす準備はできています。」と語っている。
これでWSLの活動が終わるわけではない。その価値観を大切にし、平等性、多様性、インクルージョンなど、進化のための努力を今後も続けていくのだ。
Road To The Rip Curl WSL Finals: Equality Evolution|World Surf League
(THE SURF NEWS編集部)