残すところハワイでの最終戦のみとなったCS(チャレンジャー・シリーズ)だが、WSLの新しいルールが問題になっている。
なかでも、CSのカレントリーダーである五十嵐カノアが渦中の人になっているのだ。
CT選手のCSイベント出場はCS選手の可能性を奪う?!
問題となっているのは、CSが導入されたことで最近変更された以下のルールだ。
・「CSランキングからダブルクオリファイした選手がいた場合、そのスポットは次点のCS選手ではなく、WSLが決めるワイルドカードになる」
これまではCTサーファーがQSに出場してダブルクオリファイをした場合、そのスポットは次点のQS選手に与えられていた。
多くの関係者はCSという新しいフォーマットになっても、それが受け継がれていくだろうという考えだったようだ。
それが、上記の新しいルールに変更されたことで、「既にリクオリファイ(残留)している選手がCSに出場することは、CS選手達の可能性を潰してしまう」と物議を醸している。
なかでも、CSに3戦とも出場し、ダブルクオリファイをする可能性が最も高い五十嵐カノアが論争の的になっているが、そもそもの問題はWSLのルールの方にあるという見方が大半だ。
カノアは海外メディアに対して「CSイベントにCT選手が出場するのは避けて通れないこと。僕も多くのCT選手と戦ってクオリファイしたんだ。でも、WSLがルールを変えたことで、CS選手にとってはフェアじゃなくなり、CT選手にとっては出場するのが悪いことになった。前のルールの方が良いね。」と応えている。
選手達はルール変更を求め署名活動を展開
CSに出場している選手にとって、CTにクオリファイできるかどうかはその後の選手人生に大きな影響を与える。
もちろん、WSLがワイルドカード枠に次点の選手を選ぶ可能性は十分あるが、それでも選手の自力ではなく、WSL次第で決められてしまうことに反発が高まっている。
現在選手達は、現在のルール変更を求め、次点のCS選手がクオリファイ出来るよう嘆願書を作成して署名活動を展開中。
すでに123人が署名をしているとのことだ。
各リージョナルのQSから勝ち抜いた選手がCSに進出してCT入りを争うというシステムに変わったのは今シーズンから。コロナ禍で試合がなかった昨シーズンの影響も残っていて、この新システムはまだ流動的な部分もあり、選手や関係者も把握しきれていないルールがあるようだ。
ちなみに、WSLの公式ルールブックには「CT男子選手は最低2つのCSに出場しなければいけない」というルールも存在する。10年以上CTにいる選手は1試合のみでよいという例外があるが、守れない場合は1試合約1万ドルの罰金が課される。
コロナ禍の影響もまだまだある今季はCSに出ていない選手も目立ち、どの程度このルールが実行されるのか分からない。しかし、どちらにしてもWSLがCT選手に義務としてCSイベント出場を求めている以上、カノア以外の選手も男子12枠・女子6枠しかないクオリファイ枠を奪ってしまう可能性があるルールと言える。
また、今回の嘆願書にはCSの賞金額についても記載されているそうだ。
QSのプライムイベントに相当するCSは優勝賞金が30,000ドルから20,000ドル、3位が10,000ドルから5,000ドルに減額されているのだ。
これはパンデミックで厳しくなったWSLの懐事情にも関係しているとみられ、CTでも各イベントの優勝賞金が減額されているが、CSに参加している大半の選手は十分なスポンサー料を手に入れていなく、世界中を転戦する資金を工面しなければいけない。
今回の騒動の着地点は?
新しい情報が入り次第、お伝えする。
ルールの詳細はWSL公式ルールブックで。
(空海)