世界各国で新型コロナウイルスの水際対策が見直されている。日本でもビジネス目的の入国者や留学生を対象に、10日間の待期期間が条件付きで原則3日に短縮された。海外ではタイやオーストラリアでも入国規制を緩和する動きが出ていて、サーフィンのメッカであるバリ島も段階的に観光客の受け入れを始めている。
一方、同じインドネシアでも、メンタワイなどのワクチン接種が進んでいない地域はまだオフィシャルには渡航禁止のままだ。海外サーファーの早期受け入れを目指して、慈善団体SurfAidはインドネシア政府や自治体と協力して、サーフチャーター船を使って離島等へのワクチンを運ぶ活動を始めた。
東南アジア最多の死者数を出しているインドネシアの状況
APニュースの報道によると、インドネシアの陽性者数は累積で420万人を超え、死者数も14万人と東南アジア最悪。国全体のワクチン接種率も30%程度に留まる。
一方、観光業に依存しているバリ島では観光客受け入れに向けてコロナワクチンの接種も進んでいて、人口の80%が接種を完了。例年は海外から620万人の観光客が訪れるが、コロナ禍で観光業が大打撃を受け、多くの人が雇用を失い、貧困に陥ってしまった人も少なくない。今年10月に、ワクチン接種完了を条件に1年6か月ぶりに日本を含む19か国からの旅行者受け入れを再開したが、まだバリ島への直行便はなく、ジャカルタ経由で3日間の隔離を経て国内便で移動することになっている。(いずれの情報も2021年11月現在。状況は流動的なため最新情報は自身で確認を。)
ワクチンの行き届いていない離島に、SurfAidがサーフチャーター船を走らせる
バリ島が観光客受け入れを再開したが、サーフトリップで人気なメンタワイ諸島などの地域はまだ入国規制が続いている。一部のプロサーファーはビジネスビザで入国し、ボートトリップに行っているという映像も出回っているが、ワクチン接種率が低い地域では一般サーファーの本格的な受け入れを再開できる状況ではない。
1万3000以上の島からなるインドネシアは島によって格差も大きく、サーファーに人気のニアス等はワールドクラスの波がブレイクすることで知られる一方で、大都市からは孤立していて医療体制も整っていない。その立地的な理由から、ワクチンの供給も追いついていないのが現状だ。
インドネシア政府がワクチン接種を進めるために協力者を募ったところ、サーファーの慈善団体「SurfAid」が名乗りを上げた。彼らは島々の自治体と協力しながら、サーフチャーター船を使ってコロナワクチンを運び、ニアス島とテロ島の小さな村で1550回分のコロナワクチンを提供した。
「安全で有効なコロナワクチンは住む場所を問わず、誰にでも提供するべきだ。チャーター業界と協力して、自治体を支援することによりワクチン接種率を上げ、早く観光客の受け入れを再開できることを望んでいる。」
SurfAidインドネシア ディレクター補佐 Dr. Endah Setyaningsih
インドネシアの離島で長い活動実績があるSurfAid
サーファーで医師であるデーブ・ジェンキンズ(Dr. Dave Jenkens)がメンタワイに訪れた際に、現地の悲惨な衛生状況を目の当たりにして、何とかその状況を改善しようと1999年に立ち上げられたのがSurfAidだ。
活動は特に女性と子供の衛生状況の改善を目指し、衛生教育やきれいな水の提供を行ってきた。「物を与える」支援ではなく、「手助けをする」支援をモットーに、現地のスタッフを多く採用して、20年以上の活動実績を誇る。インドネシアでは地震と津波の後にも大規模な支援を行い、今ではその活動がソロモン諸島とメキシコにも広まっている。
活動を広めるため、支援を呼びかけ
SurfAidの初回の援助では1週間で1550回分のワクチンを提供した。インドネシア国内の遠隔地にはまだまだワクチンを希望している人がいるとして、今後接種数を増やし、2回目の接種もできるように支援を呼び掛けている。SurfAidのウェブサイトを通して2,645円寄付すると、一人分のワクチンを提供でき、定期的な寄付も募集している。ニアスに行ったことがある人もない人も、日本からできる支援を考えてはいかがでしょうか。
ロウズ・ケン