WSLが数年前から進めて2022年に完成したCTの男女平等化の動きはファンならご存知の通り。
具体的には今まで格差があった男女の賞金を同額にして、パイプライン、タヒチなど全てのイベントを併催することになった。
サーファー数の分母が少ないために選手数だけは以前のままだが、CTの男女平等化は他プロスポーツに誇れる偉業であり、それをコロナ禍で実現したWSLは大いに評価できる。
その一方でオリンピックの競技としても採用されていないロングボードは2022年になって逆に軽視されているという声がある。
すでにCTが開幕しているというのに、ロングボードツアーはQSにあたるLT1,000のスケジュールが3つ発表されているだけで、世界トップの選手が争うグレードのイベントが依然未発表なのだ。
ロングボードツアーは2019年がピークだったのか?
2019年、デヴォン・ハワードがディレクターに就任してロングボードツアーは明らかに変わった。
過去に1〜2イベントで決めていたワールドタイトルを4つに増やし、デヴォンの親友でもあるジョエル・チューダーを呼び戻し、ジャスティン・クインタル、ハリソン・ローチなどジョエルが主催する『Vans Duct Tape Invitational』の常勝選手も巻き込んでシングルフィンによるクラシック回帰を実現。
今までコンテストに興味がなかった層までツアーを注目するようになっていたのだ。
CTがサーフィンのスポーツとしての究極の形なら、ロングボードツアーはStyle is Everything(スタイル イズ エブリシング)の言葉通り、サーフィンのスタイルの究極の形。
だからこそ、普段の身のこなしも含めた全てがスタイリッシュなジョエル・チューダーがチャンピオンなのだ。
ジョエル・チューダーがWSLにロングとショートの平等化を訴える
2019年に4戦開催されていたロングボードツアーが2020年はパンデミックにより1戦のみで他はキャンセルされた。
2021年は2戦だけ開催され、2020年の1戦と合わせたポイントでワールドタイトルを決めた。
そして、2022年は今だに白紙とCTの盛り上がりとは対照的に完璧にトーンダウンしているのだ。
こんなロングボードツアーの状況に昨シーズン史上最年長ワールドタイトル記録を樹立したジョエル・チューダーが自身のInstagramで以下の投稿をして大きな反響を呼んでいる。
”WSL、ジェシー・マイリー・ダイヤ、エリック・ローガンに告ぐ。
今回訴える平等性を説明できますか?
ロングの女性選手の賞金を軽視し過ぎじゃない?
このインスタグタムを見れば一目瞭然、ショートの女性、ロングの女性、どちらのスタイルが支持されていると思う?
全てのロングの女性選手、その親や友人に告ぐ。
WSLになぜこんな状況なのかと訴えてください。
更に彼らはロングボードのツアーを中止して1イベントにする予定だそうです。
僕に連絡をください。
そして、事態を正すためにこのことについて投稿して騒ぎ立てましょう!”
ジョエルが訴えているのはロングの女性選手の軽視について。
最初にInstagramのCTの女子とロング女子の視聴回数とコメント数を比較して明らかにロング女子の方が支持されていることを取り上げ、彼女達の賞金額を提示している。
CTは優勝賞金が80,000ドルに対してロング女子は10,000ドルと8分の1。
WSLはこれだけ平等化をアピールしているのに、ショートとロングの平等化はどうなるのか?という投稿内容だ。
ジェシー・マイリー・ダイヤの返答
今回のジョエルの訴えにWSLのコミッショナーを務めるジェシー・マイリー・ダイヤが返答。その返答内容をジョエルが再びInstagramに投稿した。
”みなさん、こんにちは。昨日、2021年のメンズロングボードチャンピオン(ジョエル)が自身のInstagramアカウントで投稿したWSLの平等への取り組みに関する不正確かつ誤解を招くような内容についてご説明したいと思います。
ジョエルはロングボードツアーに参加する女性選手が(男性選手に対して)平等に賞金を受け取っているかどうかを疑問視し、混乱を招きました。
こんな重要なことは、私に直接話をして欲しかったですね。
ロングボードの男性選手と女性選手が同等の賞金を受け取っていることを誇りに思っています。
WSLはロングボードを含む、WSLが所有・運営する全てのイベントの賞金額を平等にしたことを非常に誇りに思っています。
これは米国を拠点とする世界的なスポーツリーグとしては初めての試みです。
更に2019年、2021年のロングボードツアーでは、同数の男女選手が出場しています。
最終的に男女が同じ会場、同じ条件で競技をしていることに誇りを持つことが大切です。
平等性はプロスポーツリーグとしての私たちの存在意義の礎です。
ロングボードツアーは、この活動がどのように実現されているのかを示す素晴らしい例です。
ロングボードツアーの責任者として、私はいつでもあなたと連絡することが可能なので、質問や懸念があれば教えてください。
メール、電話などでいつでもツアーに関する質問や懸念事項に答えられるようにしているので、直接伝えてください。
2022年のロングボードツアーについてはWSLチームと緊密に協力して計画を確定しており、
サンセットでのCTイベント終了後、2月22日の週に発表する予定です。”
この返答に対するジョエルのInstagramの投稿
ジェシー・マイリー・ダイヤの迅速で真摯な対応にジョエルはすぐにInstagramで投稿。
ジョエルの考えでは、ジェシーの答えは的を得ていなく、納得していない内容だった。
”昨日の朝目覚めるとジェシーからこんなメールが届いていました。
私の投稿は非生産的であると言って削除するようにとあったけど、謹んでお断りしました!
私がこの投稿をする前は、私たちが消えても気にしなかったのに、22日以降突然話し合いに応じるというのは、非常に滑稽ですね!?
また、CTの女子とロングの女子の間の給与の差に言及していない。
結局、WSLは彼女達に僅かな賞金しか支払っていなし、CTの女子と平等に給料を支払う気がないんですよね。
計算上でも実際の数字でもロングの女子は比較出来ないほど業界に貢献しているのに!!!
WSLに言いたいんだけど、もっと良い方法はあるんだよ。
もし、あなた方がイベント費用に苦労しているのであれば、14日間のウェイティングピリオドがある既存のCTにロングを加えることが簡単にできるよね。
サイズダウンした時にロングを進行させれば良いのだから。
昔はそうだったじゃない。
ベルズ、マーガレットリバー、ナラビーン、キラ、ホセゴー、ブラジルなどASP時代は僕らを呼んでくれたけど、1991年以降は二度と呼んでくれなくなったよね。
あれ以来、同じ会場でやったのはUS OPENの『Vans Duct Tape Invitational』だけさ。
32年間の露骨な分離について説明してくれるかな?
時々僕らを一緒にして観客がどれだけスタイルの変化を楽しむか見てみようよ!
手をあげよう!俺たちはまだ戦ってるんだ!”
今後ロングボードツアーはどうなるのか?
実際に海に通っている方なら分かる通り、ロングボードやミッドレングスを楽しんでいるサーファーは明らかに増えているし、それらのボードに乗っている女性サーファーも増えている。
場所によってはラインナップの半数以上がロングボードやミッドレングスを楽しむ女性サーファーということも珍しくない。
例え、彼女達の多くが競技に興味がなく、純粋に波に乗ることを楽しんでいるだけも近年のロング女子はモデルのようなルックスの選手が多く、ライフスタイルも洗練されており、良いロールモデルになっていることは想像できる。
そこに大企業が目をつけてスポンサーになれば、自然とイベント数も増えて賞金額も上がるのでは?
ジョエルだってWSLに喧嘩を売りたいわけではなく、長年携わって自分も人生をかけているサーフィン業界を盛り上げるために意見しているのだろう。
(黒本人志)