1月のハワイから始まった2022年CTはそろそろシーズンの折り返し地点。
今年はすでに議論の対象となっているミッドシーズンカットが全10戦中、前半5戦終了時点でのランキングで行われるため、ランキング下位の選手にとっては選手生命がかかった重要な時期。
ベルズ、マーガレットリバーと続くオーストラリアレッグの初戦となるCT第4戦『Rip Curl Pro Bells Beach』が4月11日〜17日にかけて開催された。
タイラー・ライトの完全復活
パンデミックによって2019年を最後に中止が続いていた伝統のベルズ戦。
59周年を迎えた今年もコロナ前同様にイースターホリデーに合わせてイベントが行われ、連日大観衆。
3年ぶりの開催に子供達は我先にと選手にサインを求め、大人達は世界トップのサーファーの信じられないようなライディングを満喫、選手達も目の前の完璧なラインナップと大自然の前で緊張がほぐれ、オーストラリアらしい一体感がある大会となった。
4月17日に迎えたファイナルデイは予想外のサイズダウンとオフショアが強く、朝の内はメインのベルズ・ボウルズでスタートしたものの、すぐにオンホールドとなり、潮の上げを待って奥のリンコンへ移動して再開された。
ウィメンズサイドはタイラー・ライト(AUS)が公式2-3ftレンジのスモールサイズのリンコンで持ち前のパワーサーフィンを披露。
序盤に8.93をスコアして主導権を握るとは後半にも8ポイントを出してトータル16.93。軽いEPSのボードのチョイスが裏目に出たカリッサを尻目に完璧な演技でスコアを重ねてコンビネーションの圧勝で初のベルズ戦のタイトルを手に入れた。
「私にとって大きな意味がある優勝よ。今週、私達を迎えてくれたワダウルン(先住民のアボリジニ)の人々に感謝したい。これまで2つのワールドタイトルを獲得したけど、今回の優勝はそれに匹敵するほど大きく、感慨深いわ。ツアーに入ってから12年もこの場所で戦い続け、この階段を下りてきたの。今回は家族も沢山来てくれ、みんな大喜びしている」
ータイラー・ライト
ファイナル終了後は兄オーウェン、弟マイキーに担がれて10年以上登り続けた階段に戻ったタイラー。
2016年、2017年に2連続でワールドタイトルを獲得した後、2018年にミック・ファニングと『The Search』の撮影で訪れたアフリカで何かしらのウィルスに感染。最終的に「ウイルス感染後疲労症候群」と診断され、数年間苦しんでツアーからも姿を消していた彼女が2021年のハワイでの開幕戦で優勝。
更に自らのスポンサー、「Rip Curl」の冠イベントであり、CT選手、特に自国の選手なら誰もが欲しいベルズのタイトルを今回獲得した。
「私が経験したこと(ウイルス後遺症)から回復するのに長い4年間だった。また海で自分らしく過ごせるようになったのは最近のことよ。何度も諦めたくなったことがあったけど、頑張ってこの舞台に上がることが出来たわ。大きな支援を受け、愛と心遣いに溢れた生活を送れることに心から感謝している。この優勝はそれ以上の価値があるわ。私が本当に勝ちたかった唯一のイベントなのよ。今、最高に嬉しい」
―タイラー・ライト
タイラーは今回の優勝でランキング2位まで浮上。
トップは2022年2度目のファイナル進出を決めたカリッサとなり、カレントリーダーだったブリッサ・ヘネシー(CRI)はタイラーと同率2位にダウンしている。
ウィメンズCT第4戦『Rip Curl Pro Bells Beach』結果
1位 タイラー・ライト(AUS)
2位 カリッサ・ムーア(HAW)
3位 コートニー・コンローグ(USA)、ブリッサ・ヘネシー(CRI)
5位 サリー・フィッツギボンズ(AUS)、ブロンテ・マコーレー(AUS)、ステファニー・ギルモア(AUS)、ジョアン・ディファイ(FRA)
ウィメンズ2022年CT 『Rip Curl Pro Bells Beach』終了後のランキング
1位 カリッサ・ムーア(HAW) 24,295pt
2位 タイラー・ライト(AUS) 23,440pt
2位 ブリッサ・ヘネシー(CRI) 23,440pt
4位 レイキー・ピーターソン(USA) 19,105pt
5位 ジョアン・ディファイ(FRA) 18,980pt
ベルズを制した3人目のブラジリアン
メンズサイドはパーフェクトに近いスコアを出していたディフェンディングチャンピオンのジョン・ジョン・フローレンス(HAW)、完璧なレールワークで快進撃を続けたルーキーのカラム・ロブソン(AUS)の活躍が連日注目されていたが、最後はスモールコンディションになったベルズでマニューバーとエアリアルを組み合わせたフィリッペ・トレド(BRA)がファイナルでカラムを抑えて優勝。
2013年のエイドリアーノ・デ・ソウザ、2018年のイタロ・フェレイラに続き、ブラジリアンで3人目のベルズ制覇を27歳の誕生日の翌日に達成して80,000ドル(日本円で約1000万円)と10,000ポイントを手に入れ、次のマーガレットリバー戦ではイエロージャージを着用する。
「ここ数年の出来事で離れていたけど、やっとこの場所に戻ることが出来たね。ずっとベルズが恋しかったんだ。最高の1週間だったし、これ以上ない誕生日プレゼントを贈ってもらった気分さ。ジョンに勝ったことで次のヒートで更に自信を持てたし、カラムとのファイナルも楽しめたよ。カラムについては、始めてのベルズでファイナルに残るなんて凄い。自分なんて9年間かかったんだよ。コンテストで勢いを維持するのは難しいけど、この調子が続くことを願う」
―フィリッペ・トレド
今回フィリッペを評価すべきなのは、ジョン・ジョンとのQFがピークにならず、例年より変化が大きかったベルズのコンディションにアジャストしたことだろう。
QFではサイズがありながらも風の影響が入ったコンディションで一本目に9.63、直後に波に乗ったジョン・ジョンが8.43とフィリッペが上回っていた。
大切な序盤のレールゲームでジョン・ジョンを抑えたことが勝負の大きな鍵となり、残り2ヒートにおいても冷静な判断力を与えたのだ。
カラム・ロブソンって誰?
2位になったカラムは20歳という若さと競技歴が短いだけに謎に包まれている。
15歳までフットサル選手として活躍し、ホームのオーストラリア東海岸のエヴァンズヘッズが学校から遠かったこともあり、サーフィンはほぼ週末に限られていたそうだ。
クオリファイ前はサーフィンオーストラリアのサーフコーチを務める一方、大工の見習いとして働き始めていたほどで、2022年シーズンに入る前にそれまでスポンサーだったMad Hueysと決別。
メジャースポンサーなしでベルズ戦の表彰台に上がった。
昨年、ルーキーにしてトップ5に入り「Rip Curl WSL Finals」でワールドタイトルを戦ったモーガン・シビリック然り、ここ数年オージーの強さが復活している。
2013年のミック・ファニング以来のワールドチャンピオン誕生も近いかもしれない。
次の第5戦はマーガレットリバーを舞台とした『Margaret River Pro』
4月24日〜5月4日に開催される。
メンズCT第4戦『Rip Curl Pro Bells Beach』結果
1位 フィリッペ・トレド(BRA)
2位 カラム・ロブソン(AUS)
3位 イーサン・ユーイング(AUS)、ジャック・ロビンソン(AUS)
5位 オーウェン・ライト(AUS)、ジョン・ジョン・フローレンス(HAW)、ミゲル・プーポ(BRA)、イタロ・フェレイラ(BRA)
メンズ2022年CT 『Rip Curl Pro Bells Beach』終了後のランキング
1位 フィリッペ・トレド(BRA) 24,440pt
2位 五十嵐カノア(JPN) 18,620pt
3位 ジョン・ジョン・フローレンス(HAW) 16,905pt
4位 ケリー・スレーター(USA) 15,980pt
5位 バロン・マミヤ(HAW) 15,980pt
ミッドシーズンカットを免れた選手
2022年シーズンから新たなフォーマットとして採用されたミッドシーズンカット。
ベルズ戦が終わり、残り1戦。
すでに後半戦に残れるメンバーがメンズ9名、ウィメンズ6名を残して決定した。
なお、ミッドシーズンカットに関しての論争は後日お伝えする。
メンズ
フィリッペ・トレド(BRA)
五十嵐カノア(JPN)
ジョン・ジョン・フローレンス(HAW)
ケリー・スレーター(USA)
バロン・マミヤ(HAW)
イタロ・フェレイラ(BRA)
カイオ・イベリ(BRA)
イーサン・ユーイング(AUS)
ミゲル・プーポ(BRA)
セス・モニーツ(HAW)
カラム・ロブソン(AUS)
グリフィン・コラピント(USA)
ジャック・ロビンソン(AUS)
ウィメンズ
カリッサ・ムーア(HAW)
タイラー・ライト(AUS)
ブリッサ・ヘネシー(CRI)
レイキー・ピーターソン(USA)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(空海)