「五十嵐カノアを中心としたチームビルディング」波乗りジャパンコーチ陣が帰国し、今大会を総括

ISAワールドサーフィンゲームス初の個人金メダル、パリ五輪選考における最初の1枠を確保するなどの快挙を成し遂げた日本代表「波乗りジャパン」。

各選手らは現地カリフォルニアより次の戦いの場となるCSポルトガル会場へ向かったが、ひと足先に監督・コーチ陣が帰国。今大会の総括として、宗像副理事長(監督)、井本副理事長(コーチ)が成田空港到着ロビーにて会見を行った。


今大会を振り返って

五十嵐カノアの金メダル含む3名の合計ポイントで男子では日本がトップとなった Photo: ISA / Ben Reed

宗像氏:今大会の一番の目的は、パリ五輪出場のためのひと枠、そのためには、個人ひとりひとりが上位に入ることが必要で、毎日のミーティングを行っていました。
最終日ギリギリのところで、五十嵐カノア君が優勝することで男子の一枠を獲得し、大きな目標を達成できました。

ですが、これは五十嵐カノア君ひとりだけの力というわけではなく、村上舜君、上山キアヌ君が頑張ってチーム成績を底上げしてくれたこと、チーム全体を盛り上げてくれたことも大きな要因。
そして、パリ五輪における日本代表の出場権を「サーフィン競技が最初に取った」ということは、他競技の先駆けにもなると思います。その点も踏まえて、今回は大きな成果があったものと考えています。

五十嵐カノアを中心としたチームビルディング

チームで獲得したオリンピック出場枠 PHOTO: ISA / Pablo Franco

井本氏:今回一番の目標はパリ五輪のひと枠、次に個人のメダル、そして団体メダルも狙っていて「皆で取りに行こう」というキックオフミーティングからスタートしました。
会場のハンティントンビーチが地元でもある五十嵐カノア君の意見を交え、どこで波が割れるのか、詳細の分析をかなり行って、現地で3日間トレーニングを行ってから試合に臨みました。

実際、決勝までカノア君のポジション取りなどは素晴らしく、うねりの向き、割れる場所なども全て分かっていて、チームにも色々とアドバイスをしてくれました。
チームみんなで一丸となっていて、村上舜君、上山キアヌ君の活躍も素晴らしかったですね。上山君もハードヒートが多かったですが、トップレベルの選手を倒しながら勝ちあがっていました。

メインラウンドでは3名のCT選手に阻まれリパチャージ行きを強いられたが、その後25位まで上り詰めた上山キアヌ久里朱 Photo: ISA / Ben Reed
村上舜はメインラウンド2でまさかのノーライド。しかしリパチャージ9まで勝ち進み11位でフィニッシュ Photo: ISA / Ben Reed

今後に向けた課題など

井本氏:女子選手も非常にチームワークが良くやってきましたが、やはり波のコンディションが難しかった。15分間まったく波が来ないヒートなどもあり、特に女子選手はそこに苦しめられた、そんな印象でした。男女リザルトの差はやはり課題だと思っており、女子選手の強化も必要です。

また、日本チームはまとまりが良く海外からの評価も高いのですが、(五十嵐カノア以外)まだCTに入れてないこともあり、世界の選手に比べると、精神面、技術や戦略的な部分の強化も必要です。
今回、選手の頑張りで枠は取れましたが、2024年に向けてまた動いていきたいなと思っています。

日本女子は、都筑有夢路の17位が最高位 Photo: ISA / Ben Reed

宗像氏:技術がトップに近づいても、精神面では、まだまだこれからではないか、コロナの影響で海外試合が少なかったこともあり、日本人選手は遠慮してしまうような部分が見え隠れしています。
ハンティントン特有のもので日本の負けパターンとしては、前半に待ってしまい、後半に波が来ない、1本足りないというケースが多かったですね。カノア君は本当に積極的で、前半に必ず波を捉える。今後は積極性も必要で、我々も、選手達も良い勉強になったとも思います。

積極的に “1本目” を取りにいくカノアは気持ちが強い。オーストラリアの強豪2名に挟まれた3人ヒートでも「オレには勝てないよ」と言い放って1位通過したというエピソードも Photo: ISA / Ben Reed

今回獲得したオリンピック出場枠(3枠目)の使い方

宗像氏:選考はNF(日本サーフィン連盟)が行うことになっていますが、現時点では何も決まっていません。今大会の成績も踏まえて最終選考をしていきたいと思いますが、その前に2023年のCT枠と、2023ワールドサーフィンゲームスで取れる大陸枠、本来はここで2枠を獲得してもらい、今回の枠は「3枠目」として次の有望選手に与えたいと考えています。

井本氏:(タヒチの波は特殊で)あの波に乗れる選手自体が限られるため、まずはその選出が先かなと思っています。約70名いる強化指定選手のほか、特定強化指定選手も定めて、そこからの強化もできますし、有力な若手も沢山います。
この枠は2024年5月までに提出すれば良いので、最後の切り札は誰なのか、ゆっくり選考することも可能です。

今回枠からの出場選手は日本独自の選考ができるため、チョープーの経験のみに特化した選考も可能 Photo: WSL / Kirstin

インドネシアの躍進について

宗像氏:今回の成績を見ても、躍進していますね。特に男子は、和井田理央君をはじめかなり力を上げていて、現場で見るとフィジカルもかなり強化していますし、スキルもある。
(インドネシアは)日本に比べて波も豊富にある国ですし、以前まで「アジアといえば日本」といえる部分がありましたが、もうそういう時代ではないと感じています。
しっかり強化して、アジア枠を取る世界戦も真剣勝負で臨んでいくと、選手側にも伝えていきたいと思います。

最後までカノアに食らいついた和井田理央は、リパチャージを合計12ラウンド勝ち上がって銀メダル。インドネシアはオリンピックへの思いも強く、アジア枠内での強豪となる Photo: ISA / Ben Reed

2023年WSG出場選手の選考方法

井本氏:選手達のためにも早めに発表したいと思っています。ある程度の素案はできているので、近日中には発表予定です。まずは選手にアナウンスしたいと思っています。

2023年のワールドサーフィンゲームスもハンティントンビーチが舞台 PHOTO: ISA / Pablo Jimenez

パリオリンピックの選考が本格化する2023年は、次の選考大会となるワールドサーフィンゲームス(世界選手権)と、タヒチ本番に絞っての選手強化も進めていく予定。

日本代表「波乗りジャパン」の今後の活躍に期待したい。

(THE SURF NEWS編集部)

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