シリーズ「おいらはサーファーの味方」No. 59
サーファーの悪しき習慣『耳そうじは』もうやめよう
海上がりの車内、ダッシュボードを開けると、綿棒(めんぼう)がぎっしりと詰まったケース。そこから一本とり出して耳の穴へホジホジ…「う~んキモチいい」。
その気持ち良さ、よくわかります。でも、もう止めよう、綿棒もケースごと捨てよう。ついでに自宅にある耳かきも捨てよう。耳の健康を考えるならば、「耳の穴を綿棒や耳かきでホジホジしない」。それが耳のトラブル解決策。
「耳の穴は触らない」のが一番だと耳鼻科の先生は声をそろえて言う。先日、筆者が耳鼻科で診療を受けたときに『耳の掃除はやめましょう!』というリーフレットを医者から渡された。外耳炎の患者の90%が綿棒で耳穴をホジホジするのが原因だという。「サーファーって車に綿棒をケースで置いてあってね。海から上がるとホジホジするんだよね。それって最悪なんだ」とは浜松市の植田耳鼻科の植田洋医師。
植田先生によれば、海水を抜かなければ中耳炎になってしまう…とか耳の穴は綿棒で清潔に保たないといけない…とか、とか、とか、まったくの誤解だという。
『かゆい』のだからしかたない、と綿棒で耳をホジホジするというサーファーもいる。それは逆効果、かゆくなった原因は『綿棒で耳穴』をこすって炎症を起こしたからだ。炎症してかゆくなって、そこをさらに綿棒でこすったらどうなるか?炎症はひどくなり、かゆみはどんどん増していく。
じゃあかゆくなったらどうすればいいのだろう?
かゆみは触らずに少し我慢すれば消える。でも、がまんできないほどかゆいときは、炎症が悪化しているサインでもあるから耳鼻科で診療したほうがいい。
じつは筆者自身も綿棒でホジホジして外耳炎を起こし診療を受けたのだが、医師から注意を受けてからは、耳穴を触らないようにした。するとかゆみはほとんど起こらなくなった。
しかし綿棒でホジホジしたい、何もしなくていい、なんて信じられないという人は、医学的に耳の穴のメカニズムを理解すれば、『耳は触らなくていいんだ』ということが理解できる。下図を見てほしい。
まずは耳垢(みみあか)を理解しよう
耳垢ってなんだろう?じつは爪のように生えている…
耳垢は鼓膜の老廃物(ろうはいぶつ)。そもそも耳垢って元々は鼓膜(こまく)なのだ。鼓膜は生きていて、音の振動をしっかりキャッチするためにピンと張ろうとする性質がある。そのために鼓膜は、その中心から外に向かって成長をつづけている。
成長していく鼓膜は、やがて耳の穴となり、皮膚となって外に向かって移動を続ける。鼓膜は、つまり指先の爪のように生えているというわけだ。
くりかえすが、鼓膜は皮膚となり数ヶ月かけて移動しやがて老廃物となってはがれ落ちる、その老廃物が耳垢だ。鼓膜が耳垢になったころには、すでに耳の穴の入り口に達しているから、やがてはがれて自然に外へと排出される。
理解できただろうか?つまり耳の穴の皮膚は、鼓膜だったということだ。爪のように成長しやがて耳垢となってかってに排出される。耳垢の溜まるところは耳の穴の入り口のところだけで、耳の奥には耳垢は存在しない。だから正常な耳の穴はきれいだってことだ。
いま説明した、耳の穴と鼓膜と耳垢の関係を知れば、これまでの常識がどうも怪しいぞ、ということが理解できるだろう。今からその『間違った耳の常識』を正したい。
あるある、耳に関する非常識
その一、耳の穴は、綿棒で清潔にしなければならない
なにもしなくても耳の穴は身体のメカニズムがはたらいて清潔に保たれている。耳垢が溜まるのは綿棒で奥に押し込んでいるから
その二、耳垢は掃除しないとやがて穴を塞いでしまう
耳垢は耳の穴の入り口だけに溜まり、雑菌や虫の侵入を防ぐ効果があるから神経質に除去しない方がいい
その三、耳がかゆくなるのは耳垢が原因?
耳の穴がかゆくなる原因の多くは、綿棒でホジホジして炎症を起しているからだ。正常であればがまんできないほど耳の穴がかゆくなることはない。かゆいからといって綿棒を使うと炎症はさらに悪化する。
その四、耳に入った水は抜かないと中耳炎になる
鼓膜が水の侵入を防いでいるので、鼓膜より内部に水は侵入しない。鼓膜よりも外側に溜まった水は自然に蒸発する。だから水が侵入して気になっても耳の穴に綿棒を差し込んではいけない。頭を叩くなど別の方法で水を排出させるのが正しい。どうしても気になる場合は耳鼻科にて診てもらったが良いだろう。(内耳には鼻腔から水が侵入する場合がある)
まとめ
耳のトラブルで恐ろしいのは、海外へサーフトリップしたときだ。とくにインドネシアのようなところでは高温多湿な環境や雑菌によって炎症が悪化してしまうことがある。医療機関の無い地域で耳が痛くなったら最悪だ。そのためにも医学的に耳のメカニズムを理解し、綿棒のホジホジという悪癖は今すぐにでも止めよう。
耳の穴について詳しく知りたい方は以下にアクセスしてみてください。
https://www.ueda-jibika.com
協力:植田耳鼻咽喉科
(李リョウ)