さて、まずは『なんでロングボードは先っぽに立てるのか?』の一と二のおさらいをしよう、ノーズライドの成功には要点がふたつある。まずノーズライドは『プレーニングとロックオン』によって成立するということ。そしてプレーニングとロックオンは自然に起きる場合も多いが、『トリミング』によってインテンショナル(意図的)に起こすこともできるというふたつだ。
つまりトリミングからのプレーニングとロックオンが決まれば、あとはノーズに向かってステップするだけ、だからトリミングをマスターすることがノーズライド成功の重要なキーポイントとなる。
さまざまなトリミング
ということで、トリミングについて深掘りしていく。トリミングは言い方を変えると『波のおいしいところ』をサーフするための微調整でもある。
波のおいしいところってどこ?
波のおいしいところは、パワーゾーンやポケットと呼ばれて、フェイスが切り立っているいわゆる「パキッ」としたところ。なぜそこがおいしいのかというと、サーフボードは動力を持たないからだ。波に押してもらわなければ進まないサーフボードは、波のパワーが必要なのだ。パワーゾーンは波のエネルギーが集中していてサーフボードを押す力が最も強い。
『波のおいしいところ』にフィットすると、サーフボードはかってに加速する。まるで魔法の絨毯のようにどんどんボードは走っていく…。「意図しないのにサーフボードが走った…」ビギナーでもそんな経験がきっとあるはず。そこがパワーゾーンだ。
ダウンザライン:トリミングは、立つまえからはじまっている
どこからサーフィンをスタートさせるか?テイクオフのポジションはすごく重要だ。良いノーズライドができるかどうかは、サーフィンをスタートさせるポジションで決まってしまうと断言してもいい。つまりトリミングは、立つまえからはじまっている。
ビギナーは、テイクオフだけで精一杯かもしれないが、波を見る目を養ってスタートラインを選択できるようになろう。そのラインは大きく分けて三つある。ダイヤゴナルと、ハイラインそしてフェイドだ。ちなみに選んだラインを滑り下りることをダウンザラインと呼ぶ。
ダイヤゴナル(斜め)
ダイヤゴナル(斜め前方)はとくに意識しなくても進む自然なラインだ。ビギナーが最初に経験するラインといってもいい。斜め前方に滑っていき、波のブレイクしだいではそのままプレーニングとロックオンが作用する。
ハイライン
波の高い位置をキープしたまま真横に滑ってくようなライン。ハイラインはブレイクが早いときには有効なテクニックだ。立つ前からサーフボードを横に滑らせ、そのスピードを生かしながらテイクオフし、すぐにステップしてノーズを目指す高度なテクニックもある。しかしハイラインはフィンアウトしてしまう危険性もはらんでいる。
フェイド
進みたい方向とは逆方向へテイクオフ、そして立ってからサーフボードを進行方向へ向ける。例えればライトに向かってテイクオフし、立ってからレフトへボードを向けるターンをフェイドという。もちろんその逆もある。フェイドはクリティカルなポジションでのターンだからコツがいるが、決まったときのフィーリングはなかなか楽しいし、君のサーフィンを確実にランクアップさせる、見た目もかなりクールだ。
さらに、フェイドには利点が多い。このテクニックはいわばUターンに近いから、フェイスの先を行き過ぎない。ようするにサーフする距離を稼ぐことができる。さらに波が立ってくるまでの時間のギャップを埋められるし、サーフボードを振り回すから遠心力がわずかながら発生して加速もする。さらにノーズへステップするきっかけも得られやすい。
その他のトリミング
ストール
後ろ足に体重を掛けてノーズをリフトさせ減速するテクニック。ストールすることでロックオンが発生する場合もある。ストールはライダーが立っている位置を確認することもできる。
カットバック
走り過ぎてしまったときのUターンがカットバック。これは微調整ではなく大技ではあるが、波のセクションとセクションをつなぐテクニックとして有効だから、トリミングの一つとも考えられる。ドロップニーターンもカットバックの一つ。
ノーズライド上達の秘訣
裏技をこっそり教えてあげたいが、残念ながらサーフィンの上達にそのようなものはない。もし本気で上手になりたいと願うのならば、サーフポイントの近くに住むことを勧める。そして時間の制約が少ない自由度の高い仕事を手にいれること。そんなの無理〜という人は、スイミングプールでパドルを鍛えて、あとはユーチューブを観てイメージトレーニングと、陸でステップのシャドーイングが効果的だ。ノーズライドの映像といってもいろいろあるが、筆者がお勧めするのは下のクリップ。
さいごに
知識だけ頭につめ込んでも現場では全く違う、ということがよくある。サーフィンがまさにそれ!だから海にパドルアウトするときは、頭を空っぽにしてサーフィンを楽しもう。それを繰り返すうちに、ある日とつぜん、無の境地でノーズへとステップをする自分を発見するだろう。ハングテンから見る景色は一味違うぞ。
(注ノーズに立ってトリミングをするテクニックもあるが、今回の特集からは外しました)
(李リョウ)