F+(エフプラス)
オーストラリアで考えたことシリーズ、その3
この写真の人たちは何をしているのかというと、コンテスト会場にしつらえられたビッグスクリーンでライブを見てるのである。そう、あなたが日本でケータイや家のパソコンで見たりしているものと全く同じものを現場で見てるわけだ。
こんなコンクリの上に座って寒い中ご苦労さんというか、みんなこれでいいのか? みたいな。何でこんなことになっているのかというと、ベルズでの試合はよくビーチをクローズして砂浜に観客入れない、ということがあるからだ。
ベルズの試合をやるときはイースターなので、満月界隈、大潮という日程。潮の干満が大きい。しかも試合があるということはそこそこ波のサイズも上がるときだから、押し寄せる波でビーチは極端に狭くなる。背後は崖なので逃げ場はなく、観客が座る場所どころか、カメラマンが三脚を立てるスペースすらない。よって、そうなりそうなときには潮が上げ始めた時点でビーチをクローズ、最終的にはビーチにすでにいた人たちも追い出される。それはカメラマンでもなんでも容赦なく追い出されるので、けっこうあちこちでセキュリティとトラブルになる。
ベルズの波が良くなくて、お隣のウインキーポップに移動する場合には初めからノーギャラリー。選手とコーチ以外はビーチに下りられない。もうなんか普通に考えたら、ベルズは観戦、取材お断り、的な感じすらする。それでも成立しちゃうのがベルズの大会ってわけだ。
ビーチを追い出された人々は、コンテスト会場にいるのにスクリーンに映し出されるライブ放送をこうして見ることになる。まぁ、アナウンスは会場内のものも拾えるので、そこだけちょっと違うのかなぁとは思うけど、わざわざ会場まで来てライブ見るって私はものすごく抵抗ある。だったら家にいてビールでも飲みながらのんびりだらだら見てたほうがいい。
まぁ観客の半分ぐらいは熱心なサーフファンだけど、残りの半分は観光がてらというか、メルボルンのF1観戦ついでに、トーキーってところでサーフィンやってるらしいから見に行くべ、ぐらいな感じなわけで、グレートオーシャンロードドライブからの「12使徒の岩」見学というビクトリア観光の王道の行きがけに、ワンストップなんだろうと思う。会場内のバーでビール飲んで、リップカールストアでお買い物して帰る、でいいんだろう。そこで何があったかとか、誰がどうしたとかはあまり関係なさそうだ。
だけど、何があって誰がどうしたを見に行ってる人にとっては、これは由々しき問題だ。3年間、コロナでライブ観戦しかしていなかったわけだけど、3年ぶりに実際に見たその差、映像と現実の差というのは、本当に大きかった。何が一番違うって、スピードかな。前後左右の距離感、波の上下の距離感やきわどさが映像って実感しにくい。だから、そこを移動していく選手のスピードはほぼ体感できない、というか比較できないというか、とにかくわからんのだよ。マジで。だから、映像で選ぶトリプルクラウンとかオリンピック強化選手とか、まぁ、状況が状況なので、仕方ない一面はあるものの、本当にナンセンスだと思う。
だいぶ前のWSLの番組、The Lineupでシェーン・ドリアンがその映像競争に警鐘をならしていたけど、激しく同意。シェーンはパイプでの映像ゲットでSNSスターなんて彼の時代では考えられず、パイプにはこわもての先輩たちがいて、若いサーファーはガン締めされてナンボだったけど、今は本当に実力のない、危険なサーファーが一発の映像狙いで突っ込む、みたいなことが日常茶飯事だと、嘆いていた。
で、なんだっけ、あぁ、オーストラリアで考えたことか。ま、世の中こうして映像方向に走るのであれば、いっそジャッジも映像のみで採点するほうがいいんじゃないの?
そのほうがライブ観戦者にはわかりやすいだろうし……てなことも考えたわけです。まぁ、そうなったら私はもう試合見ないけど(笑)。