5月31日に発売された「ザ・サーファーズ・ジャーナル」日本版13.1号の読みどころを同誌のコントリビューティング・エディターも務める李リョウが紹介。
スマグラーズ・ブルース
『神聖なサーフボード』にドラッグを隠すなんて、なんという罪深い話。でも現実に起こったんです。激動の60年代、ジミヘンがストラトキャスターでグイングインやっていた時代。ビートルズもサージャントペパーズなんていう、ぶっ飛んだアルバムをリリースしました。サーファーもすでに、未知の波を求めて世界をノマドしていた…ということは…訪れる先々にサーファーやヒッピーがいるわけだから…ほしい?あるの?あるよ、的な会話があったかどうかはわかんないけどお。やがてドラッグが金になって旅には好都合ということを不良たちが思いつくのは必然。需要と供給です。『じゃあさ~サーフボードに隠して入れちゃえば~わかんないでしょ~』という浅はかな奴らがいた。けっこうズッコケ話も満載で、一押しです。これはジャーナルでしか読めません。
ターコイズウォーターを駆けるフィッシュ
インスタグラマーならこのサーファー知っている人多いかも? あなたは知ってた? ボルコムに認 められて金もらってるらしい。フリーサーファーがスポンサー獲得って理想形のサーフィン・ライ フかな? ということで、どんな奴か?と私も気になって翻訳中にネットで検索してみましたが、このウイリアム・アリオッティ君、サーフィン上手ですね~あたりまえか~でもね~正直な話、プロのフリーサーファーの絶対条件ってハンサムってことかな~と思ったりする。さて、この記事は このウイリアム君のルーツに迫っています。生まれはカリブの小島でかなりマイナーなところ、この筆者もサーフコミュニティーがあるのを知らなかったと書いています。もちろん波は悪い、オン ショアで毎日グチャグチャらしい。しかしジャンクでも毎日波はあるってことが重要なんだな。どんな波でもやる気と目標さえあればサーフィンって上手くなるんだね。ケリーやイタロも同じだ。ちなみに今号のフロリダの記事にも、小波の重要性についてケリーが語ってます。チェケラ~。
プラットフォーム・ゲイルの灯り
サーファーズジャーナルって、シレッと面白いショートストーリーを掲載します。しかも派手な写真とか使わないから、見逃してしまって数年経ってから『こんな記事があったんだ~』とつぶや くこともしばしばです。いわゆるベテランサーファー向けというか通好みですね。アルアルな誰々さんのインタビューとか、ここに行きました~波良かったで~す的な記事も大切だけど、箸休め的な役目でしかないのに、ショートストーリーが秀逸だと、専門誌にありがちな編集上の緩みをグッと引き締めてくれる。さて、カリフォルニアのチャンネル海峡なんかに行くと、石油掘削のタワーが水平線上に浮かぶのを見るけど、それにまつわる実話です。これは星4つ。
スペースコースト
サーフィンの世界では、カリフォルニアがメジャーでフロリダはマイナーという認識が潜在してい ると思う。でもそれは誤解だってことが、この記事を読むとわかる。フロリダが西海岸の影響を受けて育ったサーフカルチャーってことは否めないけど、アメリカという一つの国で単純に括るのは間違っているんじゃないかなあ。さて、サーフィンはともかくとして、フロリダは有数のウェル シー(富裕層)な地域。寒いニューヨークで成功して、暖かいフロリダで余生を送る、というのがアメリカのサクセスストーリーと言っても良いだろうね。だから経済的に豊か、コカインで有名なコロンビアも近い、NASAもある、デイトナスピードウェイ、ケリースレーターの出身地そしてセバスチャンインレット。やっぱりここはマイアミバイスだあ!ってフォローになってません。そんなフロリダのサーフィンヒストリーで読み応え十分です。ちなみにケリーが小波で練習することの重要性について語ってます。説得力あります。
アンダーカレント
映画『シャイニング』ってご存知ですか? スティーブン・キング原作、監督はスタンリー・キュー ブリックのホラー映画です。紅葉の美しい山道をVWが走るシーンから映画はスタートします。あのオープニングシーンは何故か忘れない。なんでだろう?って考えることあります。たぶんもしかしたら亡霊の視線かもしれないなって思うんだよね。そんな不気味さを観客の無意識下にキューブリックが何らかの裏技で…というのも、この映画は終始そんな謎解きのようなカットがけっこうある。さて、あのオープニングを撮影したのがグレッグ・マクギリバリーだったとは、恐れ入り屋のクリヤキンです。マクギバリー氏は「ファイブサマーストーリー」というサーフィン映画でデビューしたシネマトグラファーで、後にハリウッドで大成功したレジェンドです。IMAXやナショ ナルジオグラフィックなどのすごい映像も撮ってます。この記事はマクギバリー氏がまだ売り出し中の若い頃にキューブリック氏の依頼を受けて撮ったというお話です。サーフィンとは直接関係ない話だけど、楽屋ネタ的な面白さがある。映像プロデューサーが本業の井澤編集長も「へ~」の 連続だったと思う。つまり、初対面から仕事の仕切りまでどうやって撮影が進んだのかというところがこの記事のキモです。ギャラを断ってベストな日まで待ち続けたなんて、さすがはサーファーだなあ。ところで、キューブリックはファイブサマーを観たのかな?
インタビュートム・キャロル
パワーサーフィンという言葉がピッタリの人ですね。知らない人はいないと思うけど元世界チャンピオンです。シングルフィンの時代にすごいハックをかましてました。勢い余ってスピンアウトするようなサーフィンが持ち味でしたね。そういう意味では、スラスターの恩恵を受けたサーファーの一人じゃないかな、つまりパワーを掛けてもフィンが抜けなくなったから、この人の全盛期はサーフィンに凄みありました。トム・カレンがいなければ、もう1~2回は世界タイトル取っていたんじゃないかなと思う。しかしながら、シングルにこだわってツインフィンに乗るMRを否定していたなんて知らなかったですね。オーストラリアでもそんな風潮があったんだな。じつは私も若い頃にツインフィンをバカにして乗らなかったことがあったんですよ~笑。さて、このインタビューはかなり突っ込んだ内容になってます。ドラッグ中毒だったことも正直に話しています。日本の雑誌でありがちな、あたりさわりのない内容ではありません。あなたがサーファーだったらぜひ一読ください。
(李リョウ)
THE SURFER’S JOURNAL(ザ・サーファーズ・ジャーナル)日本版13.1号
●世界でも選りすぐりのフォトグラファーによって捉えられた、サーフィンの美しく迫力に満ちた瞬間。
●新旧様々なライターたちに綴られる、本質的でバラエティに富んだストーリー。
最も信頼されるサーフィン誌として世界中のサーファーたちから愛され、書店では買うことができないライフスタイル・マガジン。
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