現地時間6月7日、サーフシティ・エルサルバドルで8日間に渡って開催されていた『2023 Surf City El Salvador ISA World Surfing Games』が終了。
今年はWSGのメダルの他、2024年のパリオリンピックの選手選考、アメリカ大陸のオリンピック出場枠を決める『2023 Pan American Games』の選手選考も兼ねた重要な一戦となり、全世界が注目していた。
メキシコ2度目の金メダル
最終日に残っていた日本代表、波乗りジャパンは五十嵐カノア、稲葉玲王の2名。
稲葉玲王はリパチャージR11で4位敗退、総合8位でフィニッシュしたが、イベントを通してパワフルなグーフィーフッターとして強い印象を与えていた。
全てのラウンドを1位通過、ディフェンディングチャンピオンとしての貫禄を見せていた五十嵐カノアはR7も9.00を含むトータル17.80で2位以下を引き離してファイナル進出を決めた
ファイナルはカノアの他、メキシコのアラン・クリーランド、ペルーのルーカ・メシナスとミゲル・トゥデラのカード。
アランを除く3名は東京オリンピックの代表で、カノアは銀メダリスト。
前半はこの3名のオリンピアンがハイスコアを重ね、アランは8ポイント以上のエクセレントスコアを2本出さないと勝てない状況に追い込まれていたが、ラ・ボカナのレフトで8.50を出すとすぐにイベントを通してのハイエストとなる9.73をマークしてトータル18.23とこれもイベントを通してのハイエストとゲームを完全にひっくり返した。
終盤、ルーカがコンビネーションスコアを脱したものの、時すでに遅く、アランがメキシコ人として二人目となるWSGの金メダルを獲得した。
「最高のサーファーとの対戦で、最高のパフォーマンスを発揮しないと勝てないと思っていたよ。ずっと憧れた人もいたからね。この金メダルは全てを意味する。2017年にジョニー・コルソが初めて金メダルを獲得したのを見て以来、自分はそれを目指し、ほぼ毎晩夢に見てきたんだ」
タティアナが初のWSG金メダルを獲得
ウィメンズサイドはブラジルのタティアナ・ウェストン・ウェブ、カナダのエリン・ブルックス、フランスのジョアン・ディファイとヴァヒネ・フィエロがファイナル進出。
タティアナとジョアンは東京オリンピックの代表。エリンは15歳の天才で、2022年ISAワールドジュニアのU16チャンピオン。11ヒートにも及ぶリパチャージラウンドを勝ち上がってきた。ヴァヒネも今大会でヨーロッパのオリンピック枠を手に入れた天才と役者は揃った。
ヴァヒネ以外は7ポイント台を出してクロスゲームとなったが、もう一つの7ポイント台を重ねたタティアナが初のWSG金メダルを獲得した。
「ブラジルを代表してトップに立ったことは、私にとって本当に大きな名誉だわ。このイベントでは本当に楽しい時間を過ごせた。世界中の人々と一緒にいること、みんながWSGでサーフィンをしているのを見て本当に素晴らしいと感じたわ。アフガニスタンやラトビアにサーファーがいるとは思ってもみなかった。でも、サーフィンは今やオリンピック競技になり、世界中で普及しているのよね。私はサーフィンをしたいと思っているすべての人に言いたい。ぜひ、やってみて!本当に楽しいから」
タティアナはISAワールドジュニアのU18を2度も制し、CTでも常にトップに君臨するいわばエリート。
今回、63か国294名のサーファーがエルサルバドルに集まったが、参加することに意義があるというオリンピック精神で出場している国も多い。
タティアナのようなエリートのサーフィンを目の前で見ることは大きな意味を持ち、その国のサーフィンの発展に必ず繋がってくるだろう。
国別ではルーカとミゲルの二人のメダリストとチームの他のメンバーの活躍により、ペルーが金メダルを獲得。
銀メダルは僅差でフランス、銅メダルはブラジル、日本は4位でカッパーメダルを獲得した。
カノアとカウリ・ヴァーストが最後のオリンピック枠を獲得
今大会はアフリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの4大陸のトップ、男女8名が2024年のパリオリンピックの出場権を獲得する。
最終日はメンズのアジアとヨーロッパ枠が残っていたが、稲葉玲王が敗れ、五十嵐カノアがファイナルに進出したことでアジア枠はカノアが手に入れた。
「獲得できて本当に名誉だよ。まるで東京オリンピックが昨日のことのように思える。あのイベント、瞬間にたくさんの素晴らしい思い出があるんだ。オリンピックは自分の人生を変えた。再び自国を代表して、もう一つのメダルを獲得できる立場にいることは、自分にとって大きな意味があるよ」
なお、カノアはCT枠からオリンピックに出場する可能性もあり、その場合は今大会時点の稲葉玲王が出場権を得られる。
日本は2022年のWSGの結果により、3名まで出場権が与えられる可能性がある。
ヨーロッパ枠はフランスのカウリ・ヴァーストが獲得。
21歳の彼はすでに枠を手に入れたヴァヒネ・フィエロ同様、フランス代表ながらタヒチ出身でパリオリンピックの舞台であるチョープーをホームとするサーファー。
チョープーでのCTにもワイルドカードで出場して結果を残しており、パリオリンピックには欠かせない人物。
早くもメダル獲得が期待されている若手なのだ。
「自分にとってオリンピック出場は本当に特別なことだよ。出場するために一生懸命努力してきたのさ。自国でオリンピックに出場するチャンスを得ることが大きな夢だった。それを実現するために全力を尽くしたんだ。そして今、出場できて本当に嬉しい。やり遂げたよ」
なお、エルサルバドルではすぐにCT第7戦『Surf City El Salvador Pro』が6月9日〜18日の期間で開催される。
『2023 Surf City El Salvador ISA World Surfing Games』結果
団体総合結果
1位 ペルー
2位 フランス
3位 ブラジル
4位 日本
メンズ個人結果
1位 アラン・クリーランド(MEX)
2位 ルーカ・メシナス(PER)
3位 ミゲル・トゥデラ(PER)
4位 五十嵐カノア((JPN)
…8位 稲葉玲王(JPN)
…22位 脇田泰地(JPN)
ウィメンズ個人結果
1位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)
2位 エリン・ブルックス(CAN)
3位 ジョアン・ディファイ(FRA)
4位 ヴァヒネ・フィエロ(FRA)
…13位 松田詩野(JPN)
…31位 前田マヒナ(JPN)
…37位 都筑有夢路(JPN)
オリンピック出場権を獲得した選手
ジョーディ・スミス(RSA)
ビリー・ステアマンド(NZL)
五十嵐カノア(JPN)
カウリ・ヴァースト(FRA)
ウィメンズ
松田詩野(JPN)
サラ・バウム(RSA)
サフィ・ヴェット(NZ)
ヴァヒネ・フィエロ(FRA)
CT枠ですでに出場権を得ている選手
タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)
ブリッサ・ヘネシー(CRI)
ジョアン・ディファイ(FRA)
テレッサ・ボンバロ(PRT)
『2023 Surf City El Salvador ISA World Surfing Games』公式サイト
https://isasurf.org/event/2023-world-surfing-games/
(THE SURF NEWS編集部)
▼パリ五輪サーフィン特設ページ