(神への祈りの後、感情を爆発させたフィリッペ)PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

キャロライン・マークス&フィリッペ・トレドが優勝!『Surf City El Salvador Pro』ファイナルデイ

2024年パリオリンピック出場を目指すCT選手にとって一年で最も忙しいだろうこの一ヶ月。

5月下旬のCT第6戦『Surf Ranch Pro』を終えた後、カリフォルニアからエルサルバドルに飛び、オリンピックの選手選考を兼ねたWSG、すぐにCT第7戦『Surf City El Salvador Pro』と連戦。更に6月後半にはブラジルでのCT第8戦『VIVO Rio Pro』が控えている。

エルサルバドルは2019年に当時37歳のブケレ大統領がサーフィンを国家成長戦略の柱にする政策を推し進め、その波の良さから立て続けにISA、WSLのイベントの舞台に使用されている。300キロほどの短い海岸線に50ものサーフポイントが点在しており、中でもWSGで使用されたエル・スンサル、ラ・ボカナ。CTの会場であるプンタ・ロカは夢のような波。ハイシーズンの3月から10月はWSG、CTを見れば分かる通り、ウネリもほぼ途切れなく続くのだ。

治安の面はかつて世界でもっとも殺人事件が多い国と言われた時と比べると良くなっているが、途上国を訪れる際の基本的な危機管理は絶対に必要。

日本からの直行便はなく、例えばアメリカのアトランタ経由で向かうと約16時間のフライト。9月〜10月が最も安く、LCCで約10万円と海外サーフトリップのハードルとしては高くない。
日本でもサーフィンツアーを扱っている会社があるので、興味がある方は調べてみては?

PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

カリッサとグリフィンが首位を維持

(イエロージャージ=首位のグリフィン)
PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

昨年、始めて開催されたCTイベントではグリフィン・コラピント(USA)、ステファニー・ギルモア(AUS)が優勝。
プンタ・ロカ本来のバレルは姿を現さず、アクション主体のコンテストになったが、今年も同じくエアーやレールゲームでの勝負になった。

エルサルバドルの後、ブラジル、南アフリカ、タヒチと残りは3戦。
ファイナル5の争いは佳境に入ったが、今回も上位陣の多くが良い結果を残し、大きなランキングの変動なく、首位もグリフィンとカリッサ・ムーア(HAW)が維持。
両者共に7戦中、4度もファイナルに進むコンスタントな結果を重ね、ブラジルでもこの二人がイエロージャージを着用することになる。

(熱狂的なエルサルバドルのファン)
PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

なお、ミッドシーズンカットを免れ、サーフランチで9位になっていた日本の五十嵐カノアは今シーズン初のQF進出で5位。ランキングは17位と変わらず。
今シーズン4度目の5位になったコナー・オレアリー(AUS)は2ランク上げて10位とファイナル5の可能性も出てきた。
ルーキーの和井田理央(IND)は9位でランクを1つ落とし、21位。キャリア最低ラインを彷徨うケリー・スレーター(USA)も悪い結果が続いている。

フィリッペの強さ

(エアーもレールゲームも完璧なフィリッペ)
PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

メンズサイドではグリフィンが2年連続でファイナル進出。QFでカノアと名勝負を演じたフィリッペ・トレド(BRA)と対戦して序盤から主導権を握っていたが、残り10分でフィリッペが4つのパワフルなターンで9.00をスコアして逆転に成功。更に8.33を重ねてグリフィンをコンビネーションに追い込んで見事にリベンジを果たした。

「グリフィン、勘弁してくれよって感じだったね。ここでは彼と毎回ファイナルで会うけど、楽しかったよ。自分はただひたすら集中していた。やるべきことをやっただけさ。昨日目覚めたら腰痛で違和感があったんだ。サーフィンをしても気になってしまって、午後は休んだのさ。今朝目が覚めたら、悪化していて歩くのも困難だったよ。チームのみんなには感謝している。母親にも一言言いたい。今日は母の誕生日なんだ。この優勝を捧げるよ」

(今年のグリフィンもまた強い)
PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

昨年、初のワールドタイトルを獲得したフィリッペは2連覇の道を確実に歩んでいる。

今年はサンセットビーチで優勝。ポルトガルを除く全てのイベントでQF以上をメイクしており、今回の2勝目でランキング2位に浮上してきた。
次のブラジルは過去4度、南アフリカは過去2度も制している相性の良い場所。このままの調子でいけばファイナル5はほぼ確実と言えるだろう。

「良い波でサーフィンする感覚やハイスコアを獲得する感覚。それに勝るものはない。誰でも課題や困難を抱えていると思う。それが自分のものよりも小さいとしても、進行中の過程や方法に信頼を寄せた方が良い。自信を持ち、神を信頼するんだ。神と良い関係を築かなければいけない。彼が私を今日ここに導いてくれた。正直、今日はサーフィンさえできると思っていなかったけど、今この場所にいる。本当に感謝しているよ」

優勝後、海から上がってきたフィリッペはチームの元に行く前にシリアスな表情で神への感謝をしていたのが印象的だった。

(優勝後、祈り、泣き、叫んだ)
PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

キャロラインの復活

(得意のバックハンドで勝利したキャロライン)
PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

ウィメンズサイドはディフェンディングチャンピオンのステファニーをSFで倒したタイラー・ライト(AUS)と今シーズン2度もファイナルに進みながら優勝を逃しているキャロライン・マークス(USA) が対戦。
マーガレットリバーで3位、サーフランチで2位と上昇傾向だったキャロラインがバックハンドで確実にスコアを重ねてタイラーを引き離し、タイラーのミスも重なって2021年のナラビーン以来の優勝。CT通算4勝目で、ランキングでもモリー・ピックラム(AUS)を抜いて3位に浮上した。

「昨年のこの時期は、私にとって人生で最も辛い時期を越えて初めてのイベントだった。とても感情的だったわ。若い女性やツアーに流れる新しいエネルギーにとても感銘を受けているの。本当に素晴らしい経験だった。2021年以来、CTで優勝していなかったので、本当に嬉しいわ。最高の気分よ」

(2021年以来の優勝)
PHOTO:© WSL/Aaron Hughes

2018年、16歳最年少でCTデビューを果たしたフロリダ出身のキャロライン。
まだ21歳ながらツアーでは中堅になる。
2022年は健康上の理由から欠場が続いたが、今年は完全に復活しており、ワールドタイトルに加えてオリンピック出場の2つの目標に確実に近づいている。

「私たちの旅を特別なものにしているのは、それを愛する人々と共有できること。兄弟たちは数年間イベントに来ていなかったし、今後はいつも一緒に連れて来るべきかもね。オリンピックとファイナル5が控えている。どちらにも出場したいと思っているわ。気分良く、やる気がみなぎっているわ。これまで努力してきたし、やってやるわ!」

(カリッサ・ムーア)
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

次の舞台は南米ブラジルのリオデジャネイロから東へ73km離れたサクアレマ。
6月23日〜7月1日に第8戦『VIVO Rio Pro』が開催される。
世界で最も熱狂的なサーフィンファンがいるブラジル。
今夏も盛り上がりそうだ。

(ファイナリスト)
PHOTO:© WSL/Beatriz Ryder

CT第7戦『Surf City El Salvador Pro』結果
1位 フィリッペ・トレド(BRA)
2位 グリフィン・コラピント(USA)
3位 イアン・ジャンティ(HAW)、リアム・オブライエン(AUS)
5位 イタロ・フェレイラ(BRA)、五十嵐カノア(JPN)、コナー・オレアリー(AUS)、バロン・マミヤ(HAW)

ウィメンズ
1位 キャロライン・マークス(USA)
2位 タイラー・ライト(AUS)
3位 ステファニー・ギルモア(AUS)、カリッサ・ムーア(HAW)
5位 ガブリエラ・ブライアン(HAW)、モリー・ピックラム(AUS)、ベティルー・サクラ・ジョンソン(HAW)、タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)

2023年CT『Surf City El Salvador Pro』終了後のランキング
1位 グリフィン・コラピント(USA) 42,890pt
2位 フィリッペ・トレド(BRA) 41,660pt
3位 ジョアオ・チアンカ(BRA) 36,320pt
4位 イーサン・ユーイング(AUS) 32,215pt
5位 ガブリエル・メディナ(BRA) 28,025pt

ウィメンズ
1位 カリッサ・ムーア(HAW) 45,575pt
2位 タイラー・ライト(AUS) 42,095pt
3位 キャロライン・マークス(USA) 39,040pt
4位 モリー・ピックラム(AUS) 36,780p
5位 ステファニー・ギルモア(AUS) 29,015pt
5位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA) 29,015pt

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/

(空海)

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