今年で3シーズン目となるニューフォーマットの『Rip Curl WSL Finals』
これはCTのトップ5がワールドタイトルをかけて争うプレーオフのようなシステムで、舞台はカリフォルニアのローワートラッセルズ。
9月8日〜16日のベストな一日を利用して開催される。
ウィメンズではルーキーのケイトリン・シマーズ(USA)や若手のキャロライン・マークス(USA)、モリー・ピックラム(AUS)が初のワールドタイトルを目指してローシードから戦い、トップシードに控えているタイラー・ライト(AUS)、カリッサ・ムーア(HAW)という二人の偉大なワールドチャンピオンに立ち向かう。
メンズはグリフィン・コラピント(USA)、ジョアオ・チアンカ(BRA)が『Rip Curl WSL Finals』初出場。
イーサン・ユーイング(AUS)、ジャック・ロビンソン(AUS)は2シーズン連続の出場、フィリッペ・トレド(BRA)は3シーズン連続の出場となる。
2023年のワールドチャンピオン、カリッサとフィリッペ は共にCTランキング1位で最後のラスボスとして挑戦者を待つことになる。
『Rip Curl WSL Finals』フォーマット
『Rip Curl WSL Finals』はCTランキングに基づいてシードが決まり、各対戦は35分ヒート20点満点で行われる。
ランキング5位と4位が対戦する最初のヒートのみ、4位の選手に最初にプライオリティが与えられる。
ワールドタイトルを決める最後の対戦は、2ヒート先に獲得した選手の勝利となる。
カリッサ・ムーア(HAW)
5xワールドチャンピオンで東京オリンピックの金メダリスト。
3年連続でNo.1のシード選手として『Rip Curl WSL Finals』に挑む。
2023年はパイプラインでの開幕戦で優勝、マーガレットリバー、サーフランチで2連勝、3位が3度と最もコンスタントな結果を重ねていた。
2021年の『Rip Curl WSL Finals』では5度目のタイトルを獲得したが、2022年はライバルのステファニーに抑えられ、2位で終えた。
ウィメンズサーフィンのパイオニアであり、ムーア・アロハ財団も設立している彼女が6度目のタイトルを目指す。
「出場できることに興奮しているし、本当に嬉しいわ。記念碑的な目標の一つで、年間を通じて徐々に取り組んでいる小さな目標の一つ。再び大きな舞台に立ち、ローワーズで競技できる機会を持てて本当に嬉しい。とても楽しみだわ」
フィリッペ・トレド(BRA)
カレントワールドチャンピオンで、2年連続のNo.1シード。
進歩的なサーフィンとエアーで知られ、2023年はサンセットビーチ、エルサルバドル、南アフリカのJ-Bayで優勝。
2年連続でワールドタイトルを獲得してサーフィンの歴史に名を刻むことを決意している。
ブラジリアンの彼だが、CT入りしてからは家族と共にサンクレメンテに移住しており、ローワートラッセルズは現在のホームでもある。
「多くの時間などを犠牲にして努力した結果だよ。飛行機での長時間の移動、沢山のお金を使ったことも含め、全てさ。私はとても恵まれている。神に感謝するよ。家族のサポート、全てのスポンサー、そして、素晴らしいイベントを開催してくれるWSLに感謝している。トラッセルズで皆さんに会えることを楽しみにしてるよ」
タイラー・ライト(AUS)
2xワールドチャンピオンながら、『Rip Curl WSL Finals』は初出場。
2023年はベルズビーチで優勝を含め、5イベントでファイナル進出。
過去5年間は病気や怪我などでフルシーズンを回っておらず、ワールドタイトルの争いに加わるのは久々となる。
彼女はサーフィンにおけるメンタルヘルスの意識向上、ジェンダー平等の提唱など自らの多大な影響力を利用してサーフィン界や社会全般で肯定的な変革を実現するために取り組んでいる。
「タイトル争いに参加するのは久しぶりね。おそらく5年ぶり。私にとって一番大切なのは、自分のプロセスに集中すること。自分が何をしたいか、どんな考えを持っているか。成功に向けて進化していくプロセスに焦点を当てている。このプロセスこそが私にとってサーフィンと競技に対する喜びが戻ってきた意味だと思う。だから、集中し続けているわ」
グリフィン・コラピント(USA)
『Rip Curl WSL Finals』の舞台であるカリフォルニアのサンクレメンテ出身。
25歳、故郷でワールドタイトルを獲得することは長年の夢だった。
2023年はサーフランチでの優勝の他、サンセットビーチ、マーガレットリバー、エルサルバドルで2位と好成績を重ね、No.2シードを獲得。
出場者の中で最もローワートラッセルズの波を知るアドバンテージを持っており、1990年のトム・カレン以来、カリフォルニアにワールドタイトルをもたらすことを目指している。
22歳の弟のクロスビーもトッププロで、今年はハンティントンビーチで開催された『Wallex US Open of Surfing』で2位。
2024年シーズンは兄弟でCTを回る可能性が高い。
「ファイナル5のことを考えると本当にストレスだった。過去2年間、6位と7位で僅かなポイント差で逃してきた経験から、PTSDになったこともある。ファイナル5入りが実現した今、とても興奮しているよ。目標を達成した。楽しみだよ」
キャロライン・マークス(USA)
2018年に16歳最年少でCT入りを果たし、翌年にはランキング2位と類い稀な才能を持つ21歳。
『Rip Curl WSL Finals』では唯一のグーフィーフッター。
2022年は欠場が続いたが、2023年はエルサルバドル、タヒチで優勝した他、サンセットビーチ、サーフランチで2位。
キャロラインがワールドタイトルを獲得すれば、2005年のチェルシー・ジョージソン(チェルシー・ヘッジ)以来のグーフィーフッターとなる。
「出場が決まって思い浮かんだ言葉は興奮ね。友達や家族の前でワールドタイトルを獲得するチャンスを持つことは本当に素晴らしい。昨年、5番目のシードから優勝したステフが凄い刺激になっている。彼女が不可能を可能になると示したのよ。今は本当に興奮しているわ」
イーサン・ユーイング(AUS)
『Rip Curl WSL Finals』2度目の出場。
故アンディ・アイアンズと比較されるほどスタイリッシュなサーファーである。
2023年はベルズビーチでCT2度目の優勝。彼の母、ヘレン・ランバートが1983年に優勝した特別なイベントであり、その母が早くに亡くなったこともあり、イーサンにとって一生忘れられない勝利となった。
その他、ブラジル、南アフリカでファイナル進出の2位。
最終戦のタヒチはイベント前のフリーサーフィンでワイプアウトした際に椎骨骨折して欠場。『Rip Curl WSL Finals』出場も危惧されていたが、順調に回復してリハビリに精を出している。
「昨年は自分自身納得いくようなパフォーマンスを発揮できなかった。再びこの舞台に上がり、ベターなサーフィンをしてワールドタイトルのチャンスを得ることが私の大きな目標だった。シーズン自体は良かったけど、このファイナルでのサーフィンが不快な経験となったのさ。今年はサーフィン全般を改善しようと努力している。ワールドタイトルのチャンスを得たのは本当に嬉しいね。全力を尽くすよ」
モリー・ピックラム(AUS)
オーストラリア・NSW州のアヴォカビーチから近いテリガル出身の20歳。
2022年のルーキーイヤーにミッドシーズンカットでCS落ちした後、2023年にリクオリファイを果たし、サンセットビーチで優勝。
ベルズビーチ、南アフリカで2位に入り、それ以外は全てQFをメイクしている。
サーフィン以外ではゴルフをプレイしていることが多く、精神的にもリラックスしてサーフィン競技の安定性にも繋がっていると話す。
「みんな知っている通り、昨年はCTに戻るために戦ったわ。自分自身を取り戻すことができたのは素晴らしい。私はまだ学んで成長している段階。これからの経験でもっと強くなれると思う。ファイナルの舞台に上がれたのは光栄よ。自分がやること全てに血、汗、涙。多くを捧げてきたと感じている。情熱的で努力家の人間なの。ワールドタイトル獲得のチャンスを得たのは最高ね」
ジョアオ・チアンカ(BRA)
モリー・ピックラム同様、2022年のルーキーイヤーにミッドシーズンカットでCS落ち。
すぐにCSでリクオリファイを果たし、ツアーに戻った後に開花した。
2023年はポルトガルで優勝、パイプライン、サンセットビーチ、マーガレットリバーで3位に入った。
兄のルーカス・チアンカはチャンボのニックネームでWSLのビッグウェーブツアーで活躍しており、互いに刺激しあって成長し続けているサーフィン一家だ。
「今年は自分にとって信じられないほど最高のスタートを切った。最初はカットされないようにだけを考えていたんだ。現在の課題に集中したことで、自分に望ましい展開となったのさ。自分はコンペティターとして大きな夢を抱くために生まれてきたんだ。昨年、自分の才能とサーフィンに信頼を寄せ、もっと大きな夢を見るべきだと自らに言い聞かせたよ。それが可能だと分かっていたからね。人生には予測できない出来事やチャンスがある。それを受け入れるべきなんだ。なぜ、神が今この場所に自分を導いたのかは分からないけど、全てを神の手に託す。そして、本当に感謝している」
ケイトリン・シマーズ(USA)
17歳、ルーキーとして唯一の『Rip Curl WSL Finals』進出。
16歳でクオリファイを果たしながら、まだ学生ということなどを理由に異例の辞退をして翌年には再びクオリファイしてCTデビュー。
デビュー3戦目となるポルトガルで早くも優勝、更にブラジルでも優勝。最終戦のタヒチでは2位とビーチブレイクからハードなバレルまで天才的なサーフィンで次世代で最も注目されている選手。
もし、今回ワールドタイトルを獲得すれば2007年のステファニー・ギルモア以来、二人目となるルーキーでのタイトルになる。
また、時間がある時は自分や弟、仲間のサーフィンを編集、監督して映像として公開するなど別の才能も持っている。
「シーズン当初、ファイナル5進出が目標ではなかったのは確かよ。最初はミッドシーズンカットを逃れることだけを考え、結構緊張していたの。それからポルトガルで優勝して、ファイナル5のことが頭に浮かんだわ。実現して本当に嬉しい」
ジャック・ロビンソン(AUS)
ニックネームはロボ。
2023年はロボにとってジェットコースターのようなシーズンだった。
開幕戦で優勝して第2戦で3位、次のポルトガルで2位に入り最高のスタートを切ったが、オーストラリアレッグから転落。ベルズのヒート中に、膝の軟骨である半月板を負傷してホームのマーガレットリバーを欠場。サーフランチでは復帰したものの、3戦続けて17位と最下位が続いていた。
しかし、南アフリカで5位、タヒチでファイナル5を争っていたガブリエル・メディナにファイナルで勝って『Rip Curl WSL Finals』最後のチケットを手に入れた。
「不思議な感情だね。良く分からないけど、運命だったと思う。最初のイベントで優勝した後、この瞬間を想像し続けていた。だからこそ、年間を通じて苦境に立たされても、立ち直ることができたんだ。側で助けてくれた人達に感謝したい。自分のチームは小さいけど、とても濃いメンバーなんだ。過去の経験や努力はこの瞬間を迎えるために用意されていたのだと思うよ。普通、タイミングは分からないものだけど、今回はそれを予測していたように感じるね」
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(空海)