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パリ五輪サーフィン競技の会場となるタヒチのチョープーとは

2024年パリ五輪サーフィン競技の会場となるフランス領ポリネシアのタヒチに位置するサーフスポット「チョープー(Teahupoʻo)」。

サーフィン界のワールドツアーであるCT(チャンピオンシップツアー)のイベント会場にもなっています。

ただ、この会場は他のCTイベント会場と異なり、かなり癖のある危険な波として知られています。

そこで今回は、オリンピック会場となっているタヒチのチョープーに関する情報をお届けします。

タヒチがオリンピック会場になった背景

Photo: WSL / KIRSTIN SCHOLTZ

タヒチを含むフランス領ポリネシアとは、南太平洋に浮かぶ100個超の島々から成るエリア。

オリンピック開催都市パリからは遥か遠く、パリ五輪の開催が決定した際にはサーフィン競技の会場として噂されていたのはフランス南西部に位置するホセゴーでした。

ホセゴーはワールドツアーイベントの会場にもなっていたほどワールドクラスのサーフスポットが点在しているためです。

なのですが、夏季オリンピックは7~8月開催となるので、問題となるのが時期でした。

一般的に世界的なサーフシーズンは、4~10月の南半球のウインターシーズン(秋~冬)、11~3月の北半球のウインターシーズンに分けられます。

日本で言えば秋は台風、冬は寒波をもたらす大型低気圧と、波の発生源となる低気圧の活動が活発になり、サイズのある波が発生しやすくなるためです。

一方、オリンピック時期のフランスは北半球と言う事で、サーフィンに関してはオフシーズンとなるのでコンテストを成立させるための波が発生しない恐れもあります。

そこで白羽の矢が立ったのが、ちょうどサーフシーズン中となる南半球のタヒチだったのかもしれません。

タヒチのチョープーとは

オリンピック会場となるのが現地名で「Teahupo’o(テアフポ)」で、現地名表記の英語読みとして最も一般的となっているのが「チョープー」、英語表記にして「Chopes(チョープス)」との呼び方もあります。

チョープーの波は筒状になってブレイクするバレルやチューブと呼ばれるタイプで、岸側から見ると左手から右手へとブレイクしていくレフトハンダー。

しかし、ただのバレルではなく、一般的なバレル以上に底ボレするタイプである事から「スラブ(slab)」と呼ばれています。

via youtube

スラブになる理由としては、波がブレイクするラインナップと沖合の水深の差が非常に大きいため。

一般的なビーチブレイクであれば、水深は岸に向かい徐々に浅くなってくるので、スウェルは緩やかにエネルギーを失っていきます。

一方、チョープーでは45メートルの深海を移動してきたスウェルが、突如として1.8メートルの岩棚にヒットすることで逃げ場を失ったエネルギーが一気に隆起してスラブを形成することになります。

真ん丸の形状となったスラブは見た目的には自然美そのものですが、波がブレイクしている場所はほぼ水深がなく危険そのものなので「最恐ブレイク」と呼ばれたりもします。

真価を発揮した時のチョープー

いかにチョープーが凄まじいサーフスポットであっても、肝心のスウェルが入らなければ真価を発揮するには至りません。

ワールドツアーイベントであっても、本来のチョープーとはかけ離れたコンディションで開催せざるを得ない時も珍しくないので。

となると気になるのが、チョープーがビースト(野獣)モードに突入した時のコンディション。

私の記憶の限りでは、コードレッドの時がサーフィン可能な過去最大サイズだったと思います。

コードレッドとは海が荒れすぎていたのでタヒチ政府が発令した全船舶の航海中止令で、そんな中、チョープーのラインナップに向かったサーファーによって繰り広げられた2011年のスーパーセッション。

上記のセッションは、波が大きすぎて人間のパドリングでは乗れないので、ジェットスキーの力を借りて波に乗る「トウインサーフィン」でした。

ですが、ワールドツアーやオリンピックでは自らの腕でパドリングして波に乗る「パドルインサーフィン」となるので、上記動画ほどのビッグサイズでコンテストが行われる事はありません。

となると、現実的にどれほどの波での開催がパドルインサーフィンでは最大級になるかと言うと、波のサイズとパフォーマンスの点で最も称賛されているのが、2014年のケリー・スレーターとジョンジョン・フローレンスによるヒート。

パドルインでのマックスサイズと言えるほどのコンディションにて、波に対して背中を向けて乗るバックサイドのバレルではトップレベルの二人による圧倒的なパフォーマンスは見ていて鳥肌が立つほどです。

オリンピック期間にも、これほどのサイズのスウェルが入る事を期待したいところです。

まとめ

サーフィンは自然相手のスポーツと言う事で、波運によっても大きく結果が左右されます。

チョープーでは波がサイズアップするほど実力の差が出やすくなるので、それほどサイズが無ければ逆に番狂わせが発生しやすくなります(可能性としては、チューブは一切なしのコンテストもあり得る)。

そのように時の運にも左右されることから、そういった要素を排除して均した結果でワールドチャンピオンを決めようとワールドツアーがあります。

なのですが、オリンピックは完全に一発勝負と運の要素が大きくなるにも関わらず、金メダリストはワールドツアーのチャンピオンよりも世間的には注目を集める事になります。

そういったギャンブル的要素も含め、開催も間近に迫ったパリ五輪のサーフィン競技を楽しみにしたいところです。

(World Surf Movies)

▼パリ五輪サーフィン特設ページ

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