現地時間9月29日、ベルズ、ハンティンンビーチと続いた2024年LTの第3戦『Abu Dhabi Longboard Classic』が3日連続で行われてファイナルデイを迎えた。
舞台の「Surf Abu Dhabi」はケリー・スレーターの「サーフランチ」のテクノロジーを利用したウェーブプール。
UAEという場所柄、隣接した施設も豪華で、当初の予定よりも大分遅れて今年10月に一般公開が予定されている。
レベルに合わせて4種類の波が用意され、ケリーが乗ったあの波も「Kelly’s Wave」としてお金さえ払えば誰でも乗ることが可能。
ペルシャ湾に面しているために風によって波に変化はあるが、基本的には完璧な波。
今回のコンテストは、恐らくロングボードに合わせて「Kelly’s Wave」と一つ下の「Point Break」の間辺で調整されていたと予想される。
一生に一度は体験したい500mのパーフェクション。
サーファーとして夢のような施設が誕生した。
田岡なつみがランキング4位でチャンピオンシップへ
今イベント終了後に決定したチャンピオンシップ出場のトップ8は以下。
QFでケリス・カレオパア(HAW)に敗れた田岡なつみはシードを一つ落として4位でチャンピオンシップへ。
10月にエルサルバドルで開催される『Surf City El Salvador Longboard Championships』でワールドタイトルを争うことになる。
【ウィメンズ】
1.ソレイユ・エリコ(USA)
2.レイチェル・ティリー(USA)
3.アリス・レモーン(FRA)
4.田岡なつみ(JPN)
5.ゾエ・グロスピロン(FRA)
6.ホノルア・ブロムフィルド(HAW)
7.ケリス・カレオパア(HAW)
8.ソフィア・コーヘーン(HAW)
【メンズ】
1.テイラー・ジェンセン(USA)
2.ジョン・マイケル・ヴァン・ホーエンシュタイン(HAW)
3.ロジェリオ・Jr・エスクイエヴェル(PHL)
4.カイ・サラス(HAW)
5.ベン・スキナー(GBR)
6.カニエラ・スチュワート(HAW)
7.スティーブン・ソーヤー(ZAF)
8.チェイス・リーダー(USA)
9ポイントを量産したアリス・レモーン
メンズサイドではカニエラ・スチュワート(HAW)が前日のQFで唯一9ポイント台を出していたが、ウィメンズではアリス・レモーン(FRA)がレイチェル・ティリー(USA)とのQFで最初の9ポイントを出し、更にSFでもケリス・カレオパア(HAW)を相手に9.10をスコア。
このカードはケリスも9.17を出すクロスゲームとなり、0.33ポイント差でアリスがキャリア2度目のファイナル進出を決めた。
同じフランスのゾーイ・グロスピロンとのファイナルは、ライトの1本目で8.67を出したアリスが先行。ゾーイは1本目のライト、レフトで7ポイント台を2本揃えたが、アリスがライトの2本目で9.43のハイエストスコアを出して大きく引き離した。
逆転を狙うゾーイの2巡目。まずはライトで8.50とまずまずのスコアを出すが、ニード8.77で乗ったレフトはノーズを引っ張り過ぎてしまい、ワイプアウトで1.50。
フランス人対決はアリスに軍配が上がった。
「信じられない。めちゃくちゃ楽しかったし、ゾーイと一緒にファイナルを共有できたことは最高だったわ。競技という感じが全然しなくて、ただフリーサーフィンのように楽しんだ。エルサルバドルの前にここで優勝できたことはとても意味があり、本当に嬉しい。エルサルバドルでも頑張るわ。素晴らしいファイナルになることは間違いないわね」
2021年のマリブ戦以来の優勝を決めたアリスは田岡なつみを抜いて3位のシードでチャンピオンシップに挑むことになる。
24歳、まだ若いゾーイ・グロスピロンはLTで初のファイナル進出を果たし、チャンピオンシップ出場でワールドタイトル獲得のチャンスも手に入れた。
チャンピオンシップが開催されるエルサルバドルは、彼女の姉が住んでいる特別な場所でもある。
「凄く興奮しているわ。アリスとファイナルを戦えて、素晴らしいサーファーと一緒にこの場所にいれたことが本当に嬉しい。素晴らしいショーだった。次のエルサルバドルが楽しみ。特に姉に会えるのが嬉しい。私はこの場所で内に秘めた炎を持っていた。良いパフォーマンスをして、自分のサーフィンを見せたかったし、この経験を最大限に楽しみたかった。トップ10入りが目標だったけど、それを超えてエルサルバドルへの出場が決まった。夢が叶ったわ」
僅か1戦でチャンピオンシップ出場を決めたスティーブン
メンズサイドはベスト4の内、3名がハワイアン。
南アフリカのスティーブン・ソーヤーがカニエラ・スチュワート、新鋭のジョン・マイケル・ヴァン・ホーエンシュタインが昨年のワールドチャンピオン、カイ・サラスを倒してファイナルに進んだ。
ファイナルの1巡目はスティーブンがライトで8.67を出したが、レフトはバレルを狙い過ぎてしまいワイプアウトで2.83。
一方、ジョンは手堅く6ポイント台をまとめてリードする。更に2巡目のライトで8.23を出してスティーブンに大きなプレッシャーをかけた。
追い込まれて迎えた2巡目のスティーブン、ライトでミスをして4.27。しかし、残るレフト1本でハング10からバレルもメイク、長いノーズライドを決めて観客に敬礼するパフォーマンスまで披露。このライディングに8.77がコールされ、見事に逆転に成功した。
「サーファーの夢だね。この波、施設、おもてなし。全てが最高だよ。波は速かったけど、経験を積んで徐々に慣れてきた。コンテストには最高の環境だね」
スティーブンが最後に優勝したのは2018年の台湾戦で、まだLTは1戦のみでタイトルを決めていたため、その年のワールドチャンピオンになった。
今年は開幕戦、第2戦を休んでいたが、今回の優勝でチャンピオンシップ出場を決めた。
QFで浜瀬海とのバレル合戦に競り勝ったことでも分かる通り、スティーブンは誰よりも「Surf Abu Dhabi」のバレルを上手く乗りこなしていた。
出身地のJ-Bayの波で培ったポイントブレイクの技術がここで活かされたと言えるだろう。
「必要なのは2本の波だけ。2本失敗して、2本成功させた。それが勝因さ。最後の波は、後ろに置いていかれないように、ちょっと後ろに歩いて、前にジャンプして勢いをつけた。3つのバンプを越え、後はバレルに入って、波が上手く繋がっていった。すべてがスムーズに運んだのさ」
21歳、ツアー2年目のジョンは開幕戦に続き、2度目の2位。
チャンピオンシップではセカンドシードを手に入れ、更に昨年のエルサルバドルでは2位と得意の場所でもあるため、ワールドタイトル獲得の可能性も十分にある。
「昨年はトップ8に入ることが目標だった。一生懸命やってきて、今は2位にいる。信じられない。本当に言葉が見つからないよ」
2024年のワールドタイトルを決める『Surf City El Salvador Longboard Championships』は10月9日〜13日のウェイティングピリオドを設け、最も良い1日を利用して開催される。
LT第3戦『Abu Dhabi Longboard Classic』結果
1位 スティーブン・ソーヤー(ZAF)
2位 ジョン・マイケル・ヴァン・ホーエンシュタイン(HAW)
3位 カニエラ・スチュワート(HAW)、カイ・サラス(HAW)
5位 ロジェリオ・Jr・エスクイエヴェル(PHL)、浜瀬海(JPN)、サム・クリスチャンソン(ZAF)、デクラン・ワイトン(AUS)
ウィメンズ
1位 アリス・レモーン(FRA)
2位 ゾーイ・グロスピロン(FRA)
3位 ホノルア・ブロムフィルド(HAW)、ケリス・カレオパア(HAW)
5位 メイソン・シューマー(USA)、ソフィア・コーヘーン(HAW)、レイチェル・ティリー(USA)、田岡なつみ(JPN)
WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/
(黒本人志)