PHOTO: © WSL/Thiago Diz

ステファニー・ギルモアがケイトリン・シマーズの偉業の裏側を語る

CT歴僅か2年、18歳の史上最年少記録まで打ち立ててワールドタイトルを獲得したケイティことケイトリン・シマーズ。

トラッセルズでのあの歴史的な瞬間に立ち会っていたステファニー・ギルモアにジャーナリストのショーン・ドハティがインタビュー。
ショーンはオーストラリア南部、グレートオーストラリア湾で石油の掘削を計画していたノルウェーの石油大手エクイノール社に対して行われた反対運動の中心人物でもある。

ステファニーはケイティと同じコーチだったためにツアー中は一緒に行動することが多かった。
そして、ウィンメンズでは最多の8度のワールドタイトル獲得記録を持ち、今シーズンを休んだために客観的な立場にあったステファニーだからこその視点でケイティの偉業の裏側を語っている。

ケイティを応援していたんだよね?

みんな心の中ではケイティのファンだと思うわ。

彼女がサーフィンに対して持っている独特の視点をみんな本当に楽しんでいるし、とても興味深いキャラクターでもある。
何を考えているか(Z世代らしく)分からないけどね。
もっと彼女のことを知りたいと思うけど、何がそうさせているのかは分からない。
表面的なものだけですべてを知ることができなく、多面的で奥深い子なんだと思う。

トラッセルズでのケイティにとって未知だったのは、その日のプレッシャーをどう扱うかだったと思うんだよね。特にファイナルの最初のヒートで後半に逆転されて負けた時。あれはまずいなと思った?

ケイティのキャリア全体。まだたったの2年だけど、プレッシャーのかかる場面で何度も立ち上がってきた。
私はケイティがプレッシャーの中でもかなり強いことを知っていたから、最初のヒートを負けたことが実は一番良かったことだと思う。
覚えているのは、ケイティのお父さんが私の方を見て、「彼女に何か話すつもり? トムはどうだ?」って話しかけてきたことね。
私もケイティのコーチ、トム・ウィタカーと一緒にやっているから、私は「正直、これが一番良かったことだと思う」って答えたのよ。

(トラッセルズで見せたケイティのサーフィンは革新的だった)
PHOTO: © WSL/Pat Nolan

私は2年前(ステフの8度目のタイトル獲得時)の最初のヒートのことを思い出した。
その時は「ただリラックスして楽しんでいるだけだし、すべてうまくいっている」と思っていたの。
でも、突然残り1分になっていて、スコアが必要になっていた。それはまさに究極のアドレナリンラッシュで、「絶対にこれを成功させなければ」と思った。

今回のケイティにとっても、もし彼女がワールドチャンピオンになりたいのなら、この瞬間が必要だったんだと思うの。
次のヒートで彼女は立て続けに8ポイント台のスコアを出した。その後、トム・ウィタカーが「これが私の最高の仕事だったかもしれない」と言っていたわ。
最初のヒートでケイティが悔しがっていたのは分かっていたし、トムもこの後どうなるのか気にしていた。
彼女は崩れるか、もしくは立ち上がるか、どちらにも転ぶ可能性があった。

(ケイティとコーチのトム・ウィタカー)
PHOTO: © WSL/Thiago Diz

彼女がタイトルを決めた時、どんな雰囲気だった?

彼女はあらゆる感情を感じていたと思う。
言葉で表すのは難しいんだけど、ケイティにとっては、多分私が感じたのと似たような感覚だったんじゃないかな。
肩の荷が下りた感じというか。
もちろん、とても嬉しくて、最高の気分だったと思うけど、みんなが彼女はいつかワールドタイトルを取るだろうと期待していたからね。
だから、さっさと決めてしまって、重荷が取れた感じもあったんじゃないかな。

彼女はそういうタイプの人なんだよね。あの「Maps to Nowhere」という映像で、人生最高の波に乗った後、「気分はどう?」って聞かれて、「うん、まあまあだったわ」って答えていたような子だから。

まさにそうだね。彼女の家族全員と地元オーシャンサイドのみんながビーチに集まっていたことも、特別な瞬間をさらに盛り上げたんじゃないかな。

PHOTO: © WSL/Thiago Diz

そうね。でも、あの後にロッカールームで、彼女の親しい友人たち、トム、彼女の弟やボーイフレンド、メイシー、そして私で、ちょっとした静かな時間を過ごしたの。
みんなで座って笑い合ったわ。シャンパンをかけてお祝いしたいって思ったんだけど、「カリフォルニアではまだシャンパンは飲めない(カリフォルニア州の飲酒は21歳以上)よね」ってなって(笑)
彼女の感情が溢れていたのは分かったわ。自分が達成したことに完全に感動しているようだった。あれは本当に最高の瞬間だった。

彼女はまたライブ中に放送禁止用語を言ってしまったの。まあ、ケイティは完全に許容されるものにしちゃったけどね。
もうタブーですらないわ。

二人で一緒にサーフィンすることは多かった?ちょうど入れ違いみたいな感じだったよね。あなたがツアーを離れるタイミングで、彼女がツアーに上がってきたから。

私たちはトムと一緒に仕事をしていたし、彼女のツアー初年度が私の最後の年だった。
その年は少し一緒に旅をしたり、一緒に過ごしたりしたわ。
彼女はとても内向的で、トムと私が取り組んでいたことに飛び込んでくるようなことはしたくなかったみたい。
他の人のスペースをとても尊重しているし、もちろん自分がやりたいプログラムがあるんだと思う。
それが、ケイティの一番印象的なところだと思う。
彼女は自分自身をよく理解していて、周りの人にどう見られたいか、自分のサーフスタイル、物事へのアプローチの仕方をしっかりと分かっているわ。

一緒に楽しいサーフセッションもした。フィリピンに旅行したり、フランキーとココと一緒に、4人でみんな違うボードを乗りながら楽しんだりね。
彼女はすごく若いけど、実はすごく成熟している。私たちが共に尊敬しているミュージシャンについても話すし、本当におおらか。
一緒に過ごしていてすごい楽しいわ。

PHOTO: © WSL/Brent Bielmann

フリーサーフィンでは、彼女が波をどう読むかにいつも感心させられる。スウェルの角度をどう読むか、そして波がリーフにどこで当たるかをちゃんと見極めている。
いつも最高のポジションにいて、スムーズにエントリーしたり、深いバレルに入ったりしている。

私たちがクラウドナインでサーフィンしていた時、私はかなりリラックスしていて、ただ水の中でみんなとおしゃべりしていたの。
フランキー、ココ、私で「あんまり波が良くないね」って言っていたんだけど、ケイティは10本もバレルを決めていた。
「あの波はどこから来たんだ?」って感じだったわ。
彼女が大きな水域で動き回る様子もすごく印象的だし、小さく見えないんだよね。

ケイティがワールドチャンピオンになったことは、現代サーフィンについて何を示していると思う?

今の若い子ってロボットのようなサーフィンをしている選手が多い。
まるで、決まったやり方があって、すべてが同じサーフィンに溶け込んでいるかのように感じるの。

でも、ケイティには特別な何かがある。
それが彼女の個性で、他の選手と差別化しているんだと思うわ。
ほとんどのワールドチャンピオンは何かしら特別なものを持っているけれど、今は特に若いサーフィン選手たちが私にはほとんど同じように見えるし、過剰にコーチされているように感じる。
彼らは仕事のためにサーフィンをしているように見えるんだよね。

最終的には、サーフィンは楽しむべきものだと思うし、それがケイティにとって一番大事なことだと思う。
彼女がサーフィンを心から愛していることが、すごく伝わってくるの。
私の個人的な経験から言うと、それが私が長い間ここにい続けられた理由であり、成功の秘訣でもあるのよ。

PHOTO: © WSL/Brent Bielmann

彼女を応援しているビーチの観客は、オーシャンサイドの仲間たちが多かったけど、ほとんどがティーンエイジャーで、みんなめちゃくちゃ盛り上がっていた。
サーフィンはもう年配の人たちに占領されているけど、あの子たちや、ケイティが優勝するのを見て、私には若い子たちがサーフィンを取り戻そうとしているように感じたわ。

彼らは本当にクールな子たちなんだよね。例えばケイティはTikTokをやっていないし、Instagramにもほとんど投稿しない。
毎日、食事やワークアウトの様子をInstagramに公開するよりも、質の高いコンテンツを作って、少しずつリリースすることを好んでいる。

彼女は本当にサーフィンに集中して、目の前のことに集中しているのよ。
それが彼女がこれからインスパイアする子たちや、みんなにとって、カッコいい部分だと思う。
ブランドが何を求めているかにこだわらず、ただカッコいいことを作っていくこと。そういう意味では、彼女はかなり反抗的なところもあるわ。

彼女はデーン・レイノルズに似ているって感じる?

彼女は間違いなくデーンを尊敬していて、彼のキャリアの道のりを見ていると思う。

でも、彼女はもっと競争心が強いように見えるかな。
デーンは自分自身と競っていたけれど、競技自体は与えられた使命だと感じながらやっていたと思う。
でも、ケイティは、例えば一回戦で負けた時ですら、かなり感情的になっていたのを見たことがあるわ。
多分、それは周りの人が見ていない部分だと思う。

分からないけど、彼女はワールドタイトルをいくつか獲った後に、「もういいや、サーフムービーを作りたい」って言うかもしれない。
そんなことがあっても驚かない。彼女は本当に競うことが好きだし、そのショーマンシップが好きなんだと思う。
もしかしたら、彼女はタイトルを十回獲るかもしれない。誰にも分からないわよね?
彼女には無限の可能性が広がっているわ。

確かにそうだよね。ケイトリン・シマーズの見えない才能。彼女は明らかに一般的なツアーサーフィンの選手ではない。現在のサーフィン界で彼女がかなり大きな文化的影響力を持つようになるのも、難しくない。

その通り。彼女には多くの要素があるし、彼女が何をしているかにも多くの側面がある。
それが一番クールな部分だと思うわ。
彼女はサーフィン以外にも多くの興味を持っているし、サーフィンに関すること全般、文化、歴史、映画などにも関心がある。
彼女が映像制作に大きな情熱を持っているのが分かる。女性のサーフムービーがあまりにも少ないという現状に不満を感じているだろうし、それを変えたいと思っているんだろうね。
彼女はとても良い意図を持っていて、それが長い道のりに彼女を導くと思う。
彼女は単にトロフィーを集めたり、お金を稼いだりする以上のものを持っているからね。

あなたはカリフォルニアで過ごす時間が多いと思うけど、ケイティにはカリフォルニアのスケーターやスラッカー(のんびり屋)っぽい雰囲気がある。カリフォルニアの人たちは彼女をどう感じているの?

Image:toastedmedia

みんな彼女のことを大好きだと思う。彼女はただクールなのよ。
彼女はスケートの世界にものめり込んでいて、サーフィンの前に駐車場で友達とスケートしたがっている。
今、まさに楽しんでいるんじゃないかな。素晴らしいのは、彼女が世界チャンピオンになった今でも、ただの子供でいたいという気持ちが見て取れることね。
そして、それを誰も邪魔できないのが本当にクールだわ。

SLxSW: Steph Gilmore on Caity Simmers
https://www.surfline.com/surf-news/slxsw-steph-gilmore-caity-simmers/211906

(空海)

※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。