2016年、2020年の東京オリンピックでサーフィンが初めて種目として採用されると発表された年のISA世界ジュニアサーフィン選手権で史上初の団体カッパーメダルを獲得して表彰台に上がった日本代表「波乗りジャパン」
宮崎県のお倉ヶ浜で開催された2017年には16歳以下ボーイズで安室丈が日本人選手として史上初の金メダルを獲得。団体でも一つ上の銅メダルを獲得した。
更にカリフォルニアのハンティントンビーチで開催された2018年には18歳以下ボーイズで上山キアヌ久里朱、安室丈がワンツーフィニッシュ、16歳以下ガールズでは松田誌野が2位、脇田紗良が3位、18歳以下ガールズで野中美波が3位、16歳以下ボーイズで伊東李安琉が4位と全てのクラスで個人メダルを獲得。
史上初の団体金メダルを獲得して大きな話題になっていた。
今年もISAジュニアの舞台はカリフォルニア。 サーフィンカルチャーが根付き、サーフショップやホテル、レストラン、カフェなどが立ち並ぶ華やかなハンティントンビーチに、44カ国から合計343名の18歳以下のサーファーが集まった。
日本代表「波乗りジャパン」は初日から18歳以下のボーイズ&ガールズが全てラウンドアップと好調なスタートを切った。
イベント前半 日本代表は暫定1位
ハンティントンビーチは沖に向かって伸びるピアのおかげで地形が安定しており、イベント前半は平均コシ〜ムネサイズ。
日中はオンショアが吹き込んでいたが、コンテストには十分なコンディションを維持した。
イベント前半から強豪国は良いリズムで勝ち上がり、コンテスト2日目はアメリカ代表が特に強く、2018年に最年少12歳で『ISAワールドサーフィンゲームス』に参加していたケイトリン・シマーズを始め、2017年の金メダリスト、アリッサ・スペンサー、ソーヤー・リンドブラッドがハイスコアを出して余裕のラウンドアップ。
日本代表「波乗りジャパン」は16歳以下のガールズの中塩佳那がここまでのハイエストヒートスコア15.83を出して圧勝。
一方、昨年の金メダリスト、18歳以下ボーイズの上山キアヌ久里朱、同クラスの金沢呂偉はR2で敗退して早くも敗者復活戦のリパチャージ行きを強いられていた。
コンテスト3日目は本格的にリパチャージがスタート。
リパチャージで敗れると後はなく、44カ国343名の選手の内、早くも24名の選手がコンテストから脱落。
日本代表「波乗りジャパン」は16歳以下のボーイズのメインラウンドR2で矢作紋乃丞がこのクラスでは2番目のトータルスコア15.87を出して注目を集めていた。
コンテスト3日目を終了した時点でリパチャージに回ったのは、18歳以下のボーイズの上山キアヌ久里朱、金沢呂偉。
16歳以下のガールズ、松岡亜音の3名のみ。
その他の選手は全てメインラウンドR3行きを決め、団体ではオーストラリア、ブラジル、アメリカなどに並んで暫定1位。
イベント中盤、一時暫定8位までランクダウンした日本代表
ムネ〜カタサイズの新しい南よりのウネリとオフショアによって整った期間中最高のコンディションに恵まれたコンテスト4日目。
メインラウンドのR3が進んだこの日はスウェーデン、ドイツ、コスタリカ、イタリア、イスラエル、モロッコ、メキシコ、ニカラグア、カナダなどのサーフィンが伝統的ではない国の活躍が目立っていた。
日本代表「波乗りジャパン」はR3でも揺るぎない強さで18歳以下のボーイズでは安室丈がR4進出、ベスト16入り。
その他のクラスも全てラウンドアップ。
リパチャージでも18歳以下のボーイズの金沢呂偉、上山キアヌ久里朱が次に進んでいた。
コンテスト5日目も南よりのウネリが続く中、メインラウンドのR4とリパチャージが進行。
日本代表「波乗りジャパン」は18歳以下のボーイズで安室丈が3位でリパチャージ行き。
16歳以下ボーイズでは松原渚生がこのクラスのハイエストスコア9.33を出して圧勝した一方、岩見天獅は3位、矢作紋乃丞は4位でリパチャージ行き。
18歳以下ガールズでは野中美波、松田誌野が共に2位でR5進出、脇田紗良は4位でリパチャージ行き。
16歳以下のガールズはR3とR4が行われ、中塩佳那が2ラウンドを勝ち上がり、都築虹帆はR3で敗退してリパチャージ行き。
リパチャージでは18歳以下のボーイズR3で金沢呂偉が15.17のハイエストヒートスコアで圧勝。
16歳以下のガールズR2で松岡亜音が4位敗退、初のISAジュニアは61位でフィニッシュした。
コンテスト5日目終了時点で1名の敗退者を出した日本代表「波乗りジャパン」は暫定8位までランクダウン。
イベント後半で日本代表が盛り返す
イベント中盤に入った南よりのウネリは弱まってしまい、後半はサイズダウン傾向となったハンティントンビーチ。
コンテスト6日目はリパチャージを中心に進行。
日本代表「波乗りジャパン」は18歳以下ボーイズでリパチャージに回っていた上山キアヌ久里朱、安室丈がR7まで勝ち上がった一方、金沢呂偉はR4で3位敗退。
16歳以下ボーイズは松原渚生のみメインラウンドを勝ち進み、岩見天獅、矢作紋乃丞はリパチャージR6で同ヒートに重なり、終了間際に岩見天獅が4位から2位に浮上した一方、矢作紋乃丞は2位から4位に転落。
岩見天獅のみR7進出を決め、矢作紋乃丞はここで敗退。
18歳以下ガールズは松田誌野、野中美波の2名がメインラウンドを勝ち進み、脇田紗良はリパチャージR6へ、
16歳以下ガールズはメインラウンドR5で中塩佳那が3位となり、リパチャージR8へ。
都築虹帆はリパチャージR5で敗退。
コンテスト6日目の時点で日本代表は3名がメインラウンド、5名がリパチャージに残り、4名が敗退。
団体では暫定2位に浮上した。
トップは元CT選手のブレット・シンプソンをコーチに最強の布陣で挑む開催国アメリカ。
唯一、12名中10名がイベントに残り、2位の日本に890ポイント差をつけてリードしていた。
アロハカップで銅メダル獲得した日本代表
コンテスト7日目にはISAの名物にもなっている国別対抗リレー「アロハカップ」が開催。
ルールを簡単に説明すると参加国は前回大会の上位8カ国。
今年は日本、ハワイ、南アメリカ、フランス、アメリカ、オーストラリア、スペイン、ブラジル。
各国、ボーイズ2名、ガールズ2名の合計4名が1チーム。
一人2本のスコアが加算され、合計8本のトータルスコアで勝負が決定。
スタートとゴールは設置されたテントで、選手は波に乗った後、そのテントでバトンタッチをしなければいけない。
各ヒート45分の制限時間内で良い波をセレクトする技術が鍵。選び過ぎてもタイムロス、悪い波に乗ってしまうとスコアが伸びず、4名の時間配分も重要になる。
もし、タイムオーバーした場合はペナルティでポイントが減点される。
昨年3位、2017年の宮崎県お倉ヶ浜では金メダルを獲得している日本代表はSFを1位通過。
ハワイ、アメリカ、スペインとのファイナルでは2番手の上山キアヌ久里朱、3番手の安室丈がスコアを7ポイント台を出してトップに立つ場面もあったが、最後はアメリカ代表のアンカー、タロウ・ワタナベが必要なスコアを出して優勝。
トップから3位までの差が僅か0.40ポイントと言えば、このレースがどれだけ白熱していたかが分かるだろう。
アメリカは2年連続で「アロハカップ」の金メダルを獲得。2位はスペイン、3位に日本、4位はハワイ。
本戦の方はメインラウンドのR5とリパチャージが進行。
16歳以下のボーイズで松原渚生、18歳以下のガールズで松田誌野、野中美波が勝ち上がり、R7まで進んだリパチャージでも18歳以下のボーイズで安室丈、16歳以下のボーイズで岩見天獅、18歳以下のガールズで脇田紗良がラウンドアップを決めていた。
最終日を前にして団体2位。
トップのアメリカとの差は585ポイントに縮まり、最終日での逆転のチャンスも十分に残されていた。
最終日 日本代表が団体銅メダルを獲得
現地時間11月4日、8日間に渡って行われた18歳以下の世界一を決める『2019年ISA世界ジュニアサーフィン選手権』はいよいよ最終日。
日本代表「波乗りジャパン」は18歳以下のボーイズで安室丈。18歳以下のガールズで脇田紗良、野中美波がファイナル進出。
安室丈はディミトリ・プロス、トミー・コールマンの二人のアメリカ代表、メキシコ代表のアラン・クルランドとのファイナルで先制していたが、波選びに苦戦。後半、ファーストプライオリティを持ってテイクオフしたレフトもハイスコアを出すポテンシャルはなく、4位でフィニッシュ。
それでも3年連続で出場したISAジュニアの全てでメダルを獲得と日本代表の中心選手として活躍していた。
18歳以下のガールズのファイナルは野中美波が序盤にスコアを重ねてリード。
ハイタイドに近づいたハンティントンビーチは極端に波数が減り、順位も動かなかったが、セットが入り出した後半に脇田紗良が2位に浮上。
しかし、ハワイ代表のガブリエラ・ブライアンが6.57、終了間際には7.50を出してトップに立ち、野中美波は2位に転落。
バックハンドで6.00を返した野中美波だったが、ニードスコアには届かず、ガブリエラ・ブライアンが優勝。
野中美波は昨年の銅メダルを上回る銀メダルを獲得した。
団体金メダルはアメリカ 2位にハワイ
昨年、開催国ながら日本に続く2位に終わったアメリカ。
今年は6名がファイナルに残り18歳以下ボーイズではディミトリ・プロスが金メダルを獲得。
見事に団体金メダルを獲得、アロハカップでも金メダルを獲得して完全制覇となった。
「チームアメリカのサポートは素晴らしかったよ。みんながビーチで自分に声援を送ってくれたんだ」
ディミトリ・プロス
3位は、強豪国の一つであるハワイ。セス・モニーツを始め、当時ハワイから出場していたタティアナ・ウェストン・ウェブ、前田マヒナなどの強豪が揃っていた2014年には国別金メダルを獲得するなど実績がある。
今年は18歳以下のガールズでカウアイ島のガブリエラ・ブライアン、16歳以下のボーイズでマウイ島のジャクソン・バンチが共に金メダルを獲得。
2017年以来の団体銀メダルを手に入れた。
「ハワイが二つのメダルを獲得したことは素晴らしい。間違いなく、私の人生で最高の日よ。ジャクソンが9ポイントを出したのを見て、同じハワイ代表としてモチベーションが上がったわ」
ガブリエラ・ブライアン
「金メダルを獲得出来て最高の気分さ。このイベントの過去のチャンピオンを振り返ると何人ものCT選手が勝っているよね。本当に信じられないよ。自分もここで優勝出来て興奮している。出来れば彼らのようになれることを願っている」
ジャクソン・バンチ
今年のISAジュニアには松田詩野、ペルーのダニエラ・ローザスと2名の2020年東京オリンピックの出場選手が参加。
すでに2024年パリオリンピックでもサーフィンが競技として承認されているため、今年のISAジュニア参加選手の中からは更に多くのサーファーがオリンピックの舞台に上がることになるだろう。
そして、忘れてはいけないISAのスローガン’サーフィンを通じてよりよい世界を’
今回参加した44カ国の中にはISAの奨学金制度を利用して12名が参加。
サモアのように僅か1名で参加したまだサーフィンが一般的ではない国もある。
彼らはメダル獲得という目標よりも自らが国際的な大会に出場することで母国でのサーフィンの普及を促し、素晴らしい文化が根付いたこのスポーツで世界がより良い方向に歩むことを望んでいる。
サーフィンがそれだけの偉大な力を持っていることをISA会長のフェルナンド・アギーレ氏を始め、関係者は深く理解して今大会は行われた。
2020年東京オリンピックで実際にサーフィンが世界中の人々の前で披露された後は興味を持つ人やサーフィンを始める人も多くなるだろう。
その数だけ世界には笑顔が溢れ、未来に希望が持てる国も増えてくるのではないだろうか。
『2019 ISA World Junior Surfing Championship』結果
団体
1位 アメリカ
2位 ハワイ
3位 日本
4位 スペイン
個人
18歳以下ボーイズ
1位 ディミトリ・プロス(USA)
2位 アラン・クルランド(MEX)
3位 トミー・コールマン(USA)
4位 安室丈(JPN)
…15位 上山キアヌ久里朱
…33位 金沢呂偉
16歳以下ボーイズ
1位 ジャクソン・バンチ(HAW)
2位 タジ・リンドブラッド(USA)
3位 アフォンソ・アントゥネス(POR)
4位 ライアン・ハックルビー(USA)
…6位 松原渚生
…8位 岩見天獅
…21位 矢作紋乃丞
18歳以下ガールズ
1位 ガブリエラ・ブライアン(HAW)
2位 野中美波(JPN)
3位 ノア・リア・クラップ(GER)
4位 脇田紗良(JPN)
… 5位 松田誌野
16歳以下ガールズ
1位 ノア・リア・クラップ(GER)
2位 ゾーイ・ベネデド(USA)
3位 ベティ・ラウ・サクラ・ジョンソン(HAW)
4位 ケイトリン・シマーズ(USA)
…9位 中塩佳那
…19位 都築虹帆
…61位 松岡亜音
国別対抗リレーレース
「アロハカップ」結果
1位アメリカ
2位スペイン
3位日本
4位ハワイ
『2019 VISSLA ISA World Junior Surfing Championship』公式サイト
(THE SURF NEWS編集部)