南アフリカ出身のベテラン、グラント・ベーカーが優勝したポルトガル・ナザレを舞台とした『Nazaré Challenge』から10日後、冬の巨大な北西ウネリが入ったマウイ島の「Pe’ahi」、通称「Jaws」で2018/2019シーズンのBWT(ビッグウェーブツアー)のセカンドイベント『Jaws Challenge』が開催された。
BWTのイベントは基本的に一日で終了するが、今回はパドルでは限界を超えたウネリと強いトレードウィンドによって危険と判断され、一日目はウィメンズのSFとファイナル。
メンズのR1だけが行われ、翌日の現地時間11月27日にメンズの残りヒートが無事に終了。
今年で4シーズン目を迎える「Jaws」でのイベント。ビリー・ケンパーが2連覇、 イアン・ウォルシュが1勝と全てマウイ島ローカルが制しており、今年もビリーの他、カイ・レニー、アルビー・レイヤー、タイラー・ラロンドと4名のローカルがファイナリストに選ばれ、ビリー・ケンパーがカイを逆転して3度目の優勝を決めた。
「数年前、スポンサーがいない時にワイルドカードでこのイベントに参加して優勝したんだ。あれからここでヒートを戦う度に優勝するのが目標なんだ。この波が大好きさ。血と汗と涙の結晶。これは自分のプライドと喜びでもある。本当にみんなに感謝しているよ」
ビリー・ケンパー
当たり前のように『Jaws Challenge』に参加していたビリーだが、前日にはオアフ島・サンセットビーチでトリプルクラウン第2戦『Vans World Cup』のヒートを戦い、巨大なバレルをメイクしてパーフェクト10をマーク。その後、マウイ島に戻るという驚くべきフットワークの軽さを見せていた。
(2日間はウネリが大き過ぎて『Vans World Cup』はオフだった)
更に一ヶ月前にはタヒチでワイプアウトした際に唇が裂け、お尻を強打。LAの病院でMRI検査を受けた時はこの冬にサーフィン出来るかどうかも一ヶ月前に分からないような状態だったそうだ。
医者や家族のサポート、トレーナーのカヘア・ハートの協力によって優勝するまでの復活を遂げたのは見事だ。
『Nazaré Challenge』と同じシルバーグレード、トレードウィンドが強く、パーフェクトとは言えなかったイベントだったが、参加した選手は死を恐れないほどの果敢なチャージを繰り返していた。
半分がワイプアウト、クリーンにバレルをメイクした選手は僅かという中、カイ・レニー、オアフ島のコア・ロスマンは9ポイント台のバレルを披露。
このサイトで何度もお伝えしている通り、カイはボードの下に付いている水中翼で揚力が生まれるハイドロフォイルでオアフ島とモロカイ島を渡る『Molokai 2 Oahu』の新記録を達成して優勝するなど世界一の実力を持ち、その他にもSUP、ウィンドサーフィンなど様々なウォータースポーツを全て一流にこなす真のウォーターマン。
また、もしメイクしていれば10ポイントもあり得たアルビー・レイヤーのバレルインも強烈だった。
「最高のバレルを見つけるよりもワイプアウトの方が多かったね。バレルに入るのが大好きなんだ。正直、自分のことをビッグウェーバーとは言えないね。スウェルを追ってどこかに行くなんてこともしないけど、ここはホームだから、他のサーファーのように大好きなバレルに入りたいんだ。ここでサーフィンすれば最高のバレルに入ることが出来ると思う。だからこそ、このリーフに多くの時間を費やしているのさ」
アルビー・レイヤー
ローカルのペイジ・アームが2シーズン連続で優勝していたウィメンズ。
ほぼ全てのライディングがワイプアウトという危険な状況。
ジャスティン・デュポンがワイプアウトの際に肩と右膝を脱臼するなど実際に負傷者も出たサバイバルゲームを、昨シーズン2位だったカーラ・ケネリーが制した。
「私が今までサーフィンしてきた中で最も難しい’Pe’ahi’だったわ。文字通り、目がくらんだわね。優勝のお祝いをするには、疲れ過ぎたわ。まだ実感も湧いていないの」
カーラ・ケネリー
2018/2019シーズンのBWTは残り1戦。
カリフォルニア・マーヴェリックスを舞台とした『Mavericks Challenge』
ウェイティングピリオドは2019年3月31日まで。
(空海)