ベルズでのサーフィンの歴史
1962年、まだASP(現WSL)が発足前、「Rip Curl」が誕生する前からの古い歴史を持つオーストラリア・ベルズでのコンテスト。
ベルズから近いトーキーで1969年に産声をあげた「Rip Curl」が1973年からスポンサーとなり、オーストラリア初のプロコンテストがここからスタート。
この素晴らしいライナップはすぐに世界中を回るプロツアーの中でも中心的な存在となる。
『Rip Curl Pro』と名が付いた初代のチャンピオンはマイケル・ピーターソン。
その後10年間はマイケル・ピーターソン、マーク・リチャーズ、サイモン・アンダーソンがイベントを支配。
サーフボードのフィンもツインフィンから3フィンのスラスターに転換、1981年に優勝したサイモン・アンダーソンのスラスターがベルズでのパフォーマンスを新たなステージへ上昇させ、世界的にも主流はスラスターに移り変わる。
50年以上続く伝統のイベントはサーフィンの歴史、プロサーフィンの歴史上で重要なページを占めると言っても過言ではないだろう。
若きヒーローの誕生
1980年代、『Rip Curl Pro』は春から秋にイベント開催の時期が変わる。
シェーン・ホラン、トム・カレンなどが秋の美しいスウェルでの勝負を制した。
1980年代後半に再び開催時期が春に変わった後は現在WSLのメインMCを務めるポッツことマーティン・ポッター、リッチー・コリンズ、ケリー・スレーター、サニー・ガルシア、マット・ホイ、オッキー、シェーン・ドリアンなどが表彰台でベルを鳴らしてきた。
このイベントでは後にレジェンドと呼ばれる若きヒーローも誕生。
1987年に17歳で優勝したニッキー・ウッド。
1994年、22歳で優勝したケリー・スレーター。
2001年、20歳の時にワイルドカードで出場して優勝したミック・ファニングがその代表だ。
名勝負
ベルズでは幾多の名勝負が繰り広げられてきたが、その中でも1986年のSF、オッキーとトム・カレンのヒートはこれからも語り継がれていくだろう。
二人のサーファーはスタイルvsパワー、レギュラー、グーフィーと対照的で、当時分かりやすいライバル関係にあった。
このヒートはトムが勝ち、ファイナルではトム・キャロルがグーフィーフッターとして初のトロフィーを獲得した。
まだライブ中継もないこの時代、鮮明な映像も残っていないのが残念だ。
ベルズビーチの特徴
オーストラリア南部のビクトリア州、ダイナミックな地形が特徴のグレートオーシャンロード沿いにあるベルズは南西ウネリと北西風がベスト。
4月〜9月が最もコンスタントな時期。
ベルズはインサイドのボウルズ、アウトのリンコンと2つのピークに分かれ、スウェルの向き、サイズ、潮でメインブレイクが変わる。
基本的にボウルズの方が波質は良く、リンコンは難しいと言う選手が多い。
見た目よりもクセがある波にバックサイドとなるグーフィーフッターの勝者は極端に少なく、キャロル、ダミアン、オッキーの他、バートン・リンチ、ウィルコ、イタロと優勝を手にしたのは長い歴史で僅か6名。
また、東側のウィンキーポップはボウルズ、リンコンよりも掘れたセクションが多く、コンテストでも使用されるが、見学のスペースが少なく、観客泣かせでもある。
ベルズは南アフリカのJ-Bayと同様にオフショアになる時は常に寒く、同じオーストラリアでも開幕戦が行われるゴールドコーストとは全く違う雰囲気。
また、このイベントはオーストラリア全土が大移動するイースターホリデーを利用して開催され、サーフランチでの『Surf Ranch Pro』を除くと唯一入場料を徴収するのが特徴。
ベルズのテーマ曲、’AC/DCのHells Bells’が流れる中、毎年このイベントを楽しみにしている観客で会場は賑わう。
表彰台ではオーストラリア先住民’アボリジニ’のペイントをしてトロフィーのベルを鳴らすのが恒例。
CTに参加している全ての選手が憧れる儀式でもある。
最多優勝記録とミック・ファニング
ベルズでの最多優勝記録はミック・ファニング、ケリー・スレーター、マーク・リチャーズの4回。
昨年は2015年にマーク・リチャーズの記録に並んだミックがベルズ戦を最後に引退。
5度目のタイトルは逃したものの、ファイナルまで残り、引退の花道を飾った。
ウィメンズは1977年からスタート
ウィメンズは1977年からイベントがスタート。
最多優勝記録はリサ・アンダーソン、ステファニー・ギルモアの4回。
レイン・ビーチェリー、カリッサ・ムーアが3回でそれに続く。
ステファニーが昨年に続き、もう一度ベルを鳴らすことがあれば、それはメンズ・ウィメンズを含めての最多優勝記録を達成したことになる。
CT第2戦『Rip Curl Pro Bells Beach』は4月17日〜27日に開催される。
WSL公式サイト:http://www.worldsurfleague.com/
(空海)
2018年ベルズ戦を最後にミック・ファニングが引退