アンディ・アイアンズ、ジョエル・パーキンソン、エイドリアーノ・デ・ソウザ、ジョーディ・スミス、ジャック・フリーストーン、ガブリエル・メディナもタイトルを獲得したことがあるWSLのジュニアイベント『Jeep World Junior Championship』、通称「WJC」は、数年先のCTを先行上映、そして、水晶玉を見ているようだ。
世界中から集まった72人の18歳以下のジュニアサーファーの可能性は無限大。
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のカイアマ、バンボビーチ。
アベレージなビーチブレイクで繰り広げられたハイレベルな戦い。
イベント終了後、WSLがピックアップした5つのキーポイントを紹介してみる。
■フィン・マクギル
アフリカ、オーストラリア・オセアニア、ヨーロッパ、アジア、ハワイ・タヒチ、ノースアメリカ、サウスアメリカ。
7つのリージョナルのハワイ・タヒチから参加して世界の頂点に立ったフィン。
彼を紹介する上で忘れてはいけない2016年のパイプマスターズのトライアル『Pipe Invitational』での優勝。
16歳にして成し遂げてしまった偉業。
しかし、周囲の期待をよそにマイペースでサーフィンライフを送っている。
ホームのノースショア、パイプラインが今シーズン最高の波になっている時にオーストラリアのビーチブレイクにいることは酷だったろうが、目標であるワールドチャンピオンに「WJC」の参加は欠かせなかった。
スケートボードによる足首の負傷、フライトミス、バックドアでのダスティ・ペインのアクシデント。
数々の困難を乗り越えて優勝した彼はQSのハイグレードのシード権を得ることに成功した。
■ヴァヒネ・フィエッロ
多くの強豪を倒して優勝したダークホース。
タヒチ・フアネヒ島出身のグーフィーフッターの可能性に気付いていたメディアは少ないだろう。
しかし、スタイリッシュなライディングを武器とした彼女はすでにQSで2016年の269位から2017年は一気に28位までランキングを上げている。
本格的にQSをフォローして一年目で出したこの数字がポテンシャルの高さを十分に示している。
彼女の才能はサーフィンだけではなく、4つの言語を操る頭脳。
QSのハイグレードのシード権を得て、タヒチアンの女性としては初のCT選手を目指す。
■ホームでのアドバンテージはなかったか?
「WJC」の過去のタイトル獲得国を振り返ると意外にもオーストラリアは少ない。
ジョエル・パーキンソン、ジャック・フリーストーンが共に2回獲得、昨年のイーサン・ユーイング。
多くはハワイ、ブラジルが獲得している。
今年はオーストラリア・オセアニアのリージョナルチャンピオン、サンシャインコースト出身のリーフ・ヘイゼルウッド。
ウィメンズではディフェンディングチャンピオンのメイシー・キャラハンが注目されていたが、リーフはR2で敗退。
メイシーはQFで敗退、他のオージーも開催国として誇れるような活躍の場は無かった。
それでも長期的に見ればリーフもメイシーもCT選手の候補であることに異論は無いだろう。
■ジャパニーズ・ライジングサン
ここ数年の日本人選手の活躍は世界的にも注目されている。
大野修聖が切り開いた道を大原洋人が更に先に進んだ。
その下の世代が昨年、宮崎県のお倉ヶ浜で開催された『2017 VISSLA ISA World Junior Surfing Championship』で壁を壊し、今回の「WJC」ではそれが明確になった。
まずは日本人として初のファイナル進出、2位で表彰台に上がった安室丈。
SFに進出した西優司。
ウィメンズで日本人初の3位に入った川合美乃里。
体格やライディングのライン的に見るとまだ線は細いが、確実に課題をクリアしていけば更にその先に進めるだろう。
日本で生まれ育ち、日本国籍の選手がCTの舞台に上がることも、もう夢ではないのだ。
(日本人の両親を持つ五十嵐カノア、母親が日本人のコナー・オレアリーと現在二人がCTで活躍しているが、国籍は日本ではない…)
■多くの番狂わせ
2013年のガブリエルを始め、多くのタイトルを獲得しているブラジル。
今年はサウスアメリカのリージョナルチャンピオンで、元CTサーファー、ギルヘルム・ハーディの甥でもあるマテウス・ハーディや、ミゲル・プーポの弟、サミュエル・プーポなどすでにQSで活躍している強豪が揃ったが、共に無名の選手に敗退。
また、イベント前にはフィンよりも注目されていたバロン・マミヤ、昨年3位に入ったコディ・ヤングと他のハワイアンもQFで姿を消してしまった。
QFで安室丈に敗れた和井田理央もイベント前には安室丈よりも注目されていた一人。
しかし、ジュニアサーファーの実力は未知数であり、例えWSLの専門家の意見だとしてもオッズは信じられない。
だからこそ「WJC」は面白いのだ。
COVER PHOTO:© WSL/Dunbar