今やヨーロッパのサーフィンの中心地はポルトガルと言われているが、CTではフランスの方が歴史は古く、1980年代から30年以上も続き、バートン・リンチ、オッキー、トム・カレン、デイブ・マコーレー、ポッツ、ダミアン・ハードマン、トニー・レイ、ゲーリー・エルカートンなど偉大なレジェンド達が美しいビーチブレイクを制していた。
記録を並べると最多優勝はミック・ファニングの4回。
アンディ・アイアンズ、ガブリエル・メディナが2回、ケリー・スレーターが2回。
そして、2019年は自国の選手が初めてこのイベントで優勝トロフィーを手に入れる快挙を成し遂げた。
カリフォルニアのサーフランチでの『フレッシュウォータープロ』の後、約2週間後の現地時間10月3日に始まったCT第9戦『クイックシルバープロ』並びにウィメンズCT第8戦『ロキシープロフランス』
期間中はハリケーンの影響もあり、ウネリは十分に続き、風向きを見てコンディションが良い日を狙って5日間を利用、メイン会場の「La Graviere」でのバレル勝負、バックアップ会場の「Les Culs Nus」でのオープンフェイスでのマニューバー勝負。どちらも素晴らしく、ビーチには連日2万人以上の観客が集まり、世界トップのサーフィンコンテストを楽しんでいた。
トップ5モーメンツ
イベントを通してのトップ5モーメンツ。
5位:セス・モニーツのサポーター
ルーキーとは思えない活躍を続けているハワイのセス・モニーツのバレルとフローター、エアーリバース。彼のライディングも凄かったが、勝利の後のインタビューで姉のケリア・モニーツを始めとしたサポーターによる設置されていたブースを倒しそうになってしまうような興奮ぶりの方が注目されていた。
4位:コートニー・コンローグのパーフェクト10
「La Graviere」でのバレル勝負となったR3。興奮しながらバレルにチャージし続けていたコートニーはレフトで究極の一本を手にいれる。バックハンドでのグラブレール、プルイン、両手を高々と上げてのアピール。5人のジャッジ全てが10ポイントを出した真のパーフェクトスコア。更にフロントサイドでも深いバレルをメイクしてトータルでも完璧に近いスコアを出した。
3位:レオナルド・フィオラヴァンティの復活
今シーズン返り咲きを果たしたイタリアのレオナルド・フィオラヴァンティだったが、シーズン序盤のマーガレットリバー戦、「The Box」のフリーサーフィンで右肩を脱臼してしまい、手術の末に4戦連続欠場。イタリア出身ながらフランスで育ったレオナルドにとってホームでの復帰はベストなタイミングであり、ケリー・スレーターまで倒してSF進出。キャリア最高の3位という結果を残し、完全復活、観客を熱狂させていた。
2位:カリッサ・ムーアがトップの座を固める
10戦中ベスト8の結果で争われるウィメンズCT。今シーズンのカリッサは一つも取りこぼすことなく、全てQF以上をメイク。その内、ファイナル進出は4回。優勝が2回。フランスでも彼女の勢いは止まらず、バックアップ会場の「Les Culs Nus」ではパワフルなビッグマニューバー、メイン会場の「La Graviere」ではコートニーに並ぶバレルのスキルを見せた。
1位:長年の夢を叶えたジェレミー・フローレス
2010年と2017年にパイプラインマスターを制し、2015年にタヒチで優勝。ツアーで最もチャージする選手として13年目のキャリアを送るジェレミー。
今年のフランスは特にバレルが多かったこともあり、彼にとって最高の舞台となった。特にファイナルデイは信じられないようなバレルをいくつも抜けて完全優勝。フランス人として初の自国優勝を成し遂げた。
ファイナルはジェレミーvsイタロ
ファイナルのジェレミーの対戦相手は宮崎木崎浜で開催された『ISAワールドサーフィンゲームス』で奇跡の金メダル獲得劇を披露したイタロ・フェレイラ。
フランスvsブラジル。
40分のファイナルは開始直後にジェレミーがまるでバックドアのようなバレルをメイクして9.67をスコア。もうこの時点で優勝は決まったかのようなボルテージとなる会場。イタロもいくつかのターン、バレルを披露するものの、あの宮崎のような勢いはなく、得意のエアーもメイクに至らず…。
最後もバレルでジェレミー劇場は閉幕。両手を上げてビーチを埋め尽くすファンの元に戻り、フランス国旗を掲げながらビーチ凱旋。興奮に溢れた喝采を浴びた。
優勝直後、インタビュアーのロージー・ホッジに「ジェレミー、あなたはパイプマスター、タヒチで優勝しているけど、このホームでの一勝は特別なんじゃない?ただの優勝ではなく、フランス人として初よ」と問われたジェレミーのコメントは以下。
100%そうだね。本当にフランスで優勝したの?やった〜!!フランス人として初めての優勝を誇りに思う。長年フランスを代表して戦ってきたんだ。この優勝は100%、ピエール・アグネス(ジェレミーの長年のスポンサー、昨年遭難事故で亡くなったボードライダーズCEO)に捧げるよ。100%さ。何故なら彼がいなかったら、今の自分はいないんだ。ピエール・アグネスは悲劇的に私たちの前から去った。この優勝は100%彼に捧げる。本当に嬉しいよ。
ジェレミー・フローレス
五十嵐カノアはシーズン2度目の17位
ルーキーイヤーからフランスとの相性は悪かった五十嵐カノア。
今年もR3でヒート開始直後にアーリーウープをメイクしたオージーのジャック・フリーストーンに僅差で敗退。
シーズン2度目の17位でフィニッシュ。CTでは11戦中ベスト9イベントのポイントで争われるため、今回の17位は捨て試合になる。
ランキングは前回と変わらずの6位。次のポルトガル、最終戦のハワイは得意なイベントであり、2020年東京オリンピックの選手選考の条件であるトップ10入りが現実的になってきた。
なお、『フレッシュウォータープロ』でワンツーフィニッシュを決めたブラジリアンのガブリエル・メディナ、フィリッペ・トレド、3位のジョーディ・スミスは早いラウンドで敗退。
トップ3の順位は変わらず、次の戦いはポルトガルへ。
『MEO リップカールプロポルトガル』は10月16日〜28日に開催される。
CT第9戦『クイックシルバープロフランス』結果
1位 ジェレミー・フローレス(FRA)
2位 イタロ・フェレイラ(BRA)
3位 ジャック・フリーストーン(AUS)、レオナルド・フィオラヴァンティ(ITA)
5位 ライアン・カリナン(AUS)、マーク・ラコマー(FRA)、エイドリアン・バッカン(AUS)、コロへ・アンディーノ(USA)
2019 Men’s Championship Tour
『クイックシルバープロフランス』終了後のランキング
1位 ガブリエル・メディナ(BRA) 48,015pt
2位 フィリッペ・トレド(BRA) 45,730pt
3位 ジョーディ・スミス(ZAF) 43,515pt
4位 イタロ・フェレイラ(BRA) 42,400pt
5位 コロへ・アンディーノ(USA) 41,250pt
ウィメンズはカリッサがトップの座を固める
サーフランチでは見事なバレルライドとエアーリバースで完勝したカリフォルニアのレイキー・ピーターソン。カリッサとのSF、ランキング1位と2位の直接対決はカリッサに軍配が上がった。
ファイナルではキャロライン・マークスが「La Graviere」の速い波にてこずる中、カリッサはライト、レフト両サイドでバレルをメイク。コンビネーションの圧勝でシーズン2勝目。
CTでは通算23勝目、フランス戦ではステファニー・ギルモアの3度の最多優勝記録に並んだ。
「本当に特別な一年を送っている。毎年、毎イベント、全てにおいて多くのことを学んでいるように感じるわ。全力でサポートしてくれた夫のミッチ・ロス。素晴らしいチーム、家族、友人、スポンサー、ファンのお陰で特別なイベントになった。経験が少ないこのLa Graviereでの勝負は期待していなかったけど、最後に二本のバレルを抜けることが出来たの。目の前で応援してくれた観客と喜びを分かち合えたのは特別な気分だった」
カリッサ・ムーア
もし、フランスでレイキーが優勝していればタイトルの可能性が広がったが、そのチャンスを逃したレイキーはポイント差を広げられてしまい、カリッサの4度目のワールドタイトル獲得が濃厚になってきた。
早ければ次のポルトガルで決まるだろう。
ウィメンズCT第8戦『ロキシープロフランス』結果
1位 カリッサ・ムーア(HAW)
2位 キャロライン・マークス(USA)
3位 レイキー・ピーターソン(USA)、ジョアン・ディファイ(FRA)
5位 マリア・マニュエル(HAW)、タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)、サリー・フィッツギボンズ(AUS)、コートニー・コンローグ(USA)
2019 Women’s Championship Tour
『ロキシープロフランス』終了後のランキング
1位 カリッサ・ムーア(HAW) 57,260pt
2位 レイキー・ピーターソン(USA) 49,935pt
3位 サリー・フィッツギボンズ(AUS) 46,815pt
4位 キャロライン・マークス(USA) 46,020pt
5位 コートニー・コンローグ(USA) 41,080pt
『Red Bull Airborne France』はカリフォルニアのイアン・クレーンが優勝!
今シーズンからシリーズ化されたエアリアルに特化したコンテスト『Red Bull Airborne』
ファーストシーズンはゴールドコースト、バリ島、フランスで開催。
CT選手とフリーサーファーがミックスされ、ジャッジもエアリアルだけを見てスコアを出すWSLでは異例のイベントだ。
ゴールドコースト、バリ島の2戦はイタロ・フェレイラ、ジャック・フリーストーンとCT選手が制していたが、フランスではカリフォルニアのイアン・クレーンが難しいファーストセクションを抜けてインサイドで高さのあるグラブエアーをメイクして優勝。
2013年のジュニア以来の優勝を決めたイアンは狂ったように興奮していた。
その他にもハワイのマット・メオラがクローズセクションでのビッグエアー、同じくハワイのフィン・マクギルがディープなバレルを抜けてからのエアーを披露するなどビーチに集まったギャラリーの前で素晴らしいショーを披露した。
「最高だね。フランスのビーチで担がれるなんて、もう狂っちゃいそう。これは確実に自分のサーフィンライフで最高の瞬間さ。ホセゴーに来るのは初めてだけど、大好きになったよ。今日はエアーの着地が難しい波だった。最後はバッチリ決まったね。あのエアーは大きかったから、絶対に成功したかったんだ」
イアン・クレーン
WSL公式サイト:http://www.worldsurfleague.com/
(空海)