2015年の3度目のワールドタイトル獲得から4年、パワーサーフィンの代名詞と言われるハワイアンのカリッサ・ムーアが2019年は圧倒的な強さでリサ・アンダーソン、ウェンディ・ボータ、フリーダ・ザンバに並ぶ4度目のワールドタイトルを獲得した。
オーストラリアから始まり、バリ島、ブラジル、南アフリカ、カリフォルニア、フランス、ポルトガルと渡ってきたトップ17の最後の決戦の場所はハワイのマウイ島。
アッパーイーストに位置するホノルアベイはオアフ島のノースショア同様に冬がハイシーズンとなり、コンディションが決まった時は他の島からサーファーが集まるほどの人気スポットで、数名でこのラインナップを貸し切れるコンテストはそれだけで夢のようなこと。
コンテストは6日間のレイデイの後、ノースよりのウネリが入った現地時間12月1日に開幕して翌日の2日に終了。
選手や関係者にとって長い旅とも言えるシーズンのクライマックスがこの2日間に凝縮された。
タイトルレース
ポルトガルで優勝した17歳のキャロライン・マークスの活躍で最終戦までもつれ込んだタイトルレース。
全てのイベントでQF以上をメイクしていたカリッサ・ムーアが有利なのは変わりなかったが、2位のレイキー・ピーターソン、キャロラインにもチャンスは残されていた。
しかし、カリッサが黙々と自分の仕事をこなす中、レイキーはR3(Round of 16)で敗退してレースから脱落。
キャロラインはQFで4度の最多優勝記録を持つステファニー・ギルモアに抑えられ、チャンスを失った。
皮肉なことに今シーズンのここまでのステファニーとキャロラインの対戦成績は3勝0敗でキャロラインは無敗だった。
今回のシチュエーションは17歳の若きアスリートには重過ぎるプレッシャーだったのだろう。
その瞬間をロッカールームで待っていたカリッサは嬉しさに泣き、そしてタイトルレースの重圧から解放された喜びを爆発させていた。
「最高の気分よ。次はSFだし、感情を抑えて集中力を保つのが大変だったわ。信じられない。長年の成長と学習、積み重ねてきたことのおかげよ。全てが旅であり、この瞬間を本当に楽しみにしていたの。まだ実感はわかないけどね。ここには家族や友人が一緒にいるので、このタイトルの喜びを皆んなと共有するのを楽しみにしているわ」
カリッサ・ムーア
「この瞬間を本当に長い間夢見ていたの。ワールドタイトルを獲得した経緯は全て違うけど、間違いなく今回の4度目は最も難しかった。タイトルを争ったレイキーとキャロラインは信じられないほど素晴らしいサーフィンで私を刺激してくれた。そして、素晴らしいサポートチームがいなければ、私はここにいなかったでしょう。今年の旅には愛を感じ、それが強く突き動かしたと感じるの。少し違うことを試したかった今年、私の非営利団体’ムーアアロハ’(カリッサが行うサーフキャンプやキッズを育てる活動)、が目的意識を与えてくれた。今回のタイトルで物事が一周したように感じる。来年はオリンピックでデューク・カハナモクの足跡を辿る。そんなことを考えただけで最高だわ。私はハワイアンとして東京でアロハスピリットを広めたいと思っている。アメリカ、特にハワイを代表することは光栄だし、誇りに思うわ」
カリッサ・ムーア
ステファニーがホノルアベイの最多優勝記録を塗り替える
2007年のルーキーイヤーに初優勝してから3年連続でこのイベントを制し、合計4度の最多記録を持っていたステファニーが今年もスタイリッシュなサーフィンでスコアを重ねて優勝。
SFではカリッサ、ファイナルではが18ヶ月振りに復帰したタイラー・ライトを倒して自身の記録を塗り替える5度目の優勝、ツアー通算31勝目を上げた。
「キャロラインとのヒートでは自分自身がリードして良いポジションにいると気付き、ワールドタイトルレースに参加しているようなスリリンングな気持ちを思い出したわ。今年は多くの危ういことがあり、新しい道具を試したの。皆んなにとって素晴らしいイベントとシーズンになった。もちろん、タイラーが戻ってきたことは本当に良かったわ。今日、ファイナルを共有するのに彼女以上ふさわしい人は思いつかなかった。彼女のサーフィンは今まで以上よ。来年、また’危険過ぎる’彼女とこの舞台で会えるのを楽しみにしているわ」
ステファニー・ギルモア
2020年東京オリンピックに出場するCT枠の8名が確定
2020年東京オリンピックの選手選考も兼ねていた今年のCT。
ウィメンズのCT枠は8名で、すでに決まっていたサリー・フィッツギボンズ、ステファニー・ギルモア、タティアナ・ウェストン・ウェブ、ジョアン・ディファイに加え、最終戦で残りの4名がブリッサ・ヘネシー、カリッサ・ムーア、キャロライン・マークス、シルヴァナ・リマに確定した。
アメリカ
カリッサ・ムーア、キャロライン・マークス
オーストラリア
ステファニー・ギルモア、サリー・フィッツギボンズ
ブラジル
タティアナ・ウェストン・ウェブ、シルヴァナ・リマ
フランス
ジョアン・ディファイ
コスタリカ
ブリッサ・ヘネシー
素晴らしい復帰戦となったタイラー・ライト
南アフリカで何かしらのウィルスに感染、最終的には「ウイルス感染後疲労症候群」と診断され、18ヶ月もコンテストから離れていた2xのタイラー・ライトが復帰。
R3(Round of 16)ではタイトルコンテンダーのレイキー・ピーターソンを倒し、QFでジョアン・ディファイ、SFでタティアナ・ウェストン・ウェブを抑えてファイナル進出。
深いボトムターンからのレイバックなど復帰前と全く変わらないライディングで最終戦を盛り上げていた。
タイラーは今シーズン1戦のみの出場だが、2020年はWSLからワイルドカードを与えられて出場することが予想される。
「今日、ここにいられるのは本当に幸運だし、感謝しているわ。ほんの数ヶ月前には、まだ先が見えない場所にいたのにね。私を支えてくれた人々を感謝したい。特にガールフレンドのアレックスの存在は大きかった。彼女は最悪の状況の時も私の側でずっと見ていてくれたの。ここでサーフィンをして健康で幸せな気持ちになったわ。本当に大変な時期があっただけに、この瞬間をとても楽しんでいる。オリンピックはウィメンズの全ての枠が決まり、男女賞金同額化の最初の年を迎えた。それは私達のスポーツの大きな瞬間よね。今年は一人のファンとして見ていたけど、ますますこのスポーツが好きになったわ。この大きな枠に関わっている全ての人に感謝したい」
タイラー・ライト
2020年のルーキーは?
これで2019年のWSLはウィンメンズCT、QS共に全てのスケジュールが終了。
(ロングボードは台湾で最終戦が開催中)
ランキングも確定して2020年のトップ17も決定。
先日もお伝えした通り、都筑有夢路はQSランキング8位で惜しくもCT入りは届かず。
新たにCT入りするのは、QSランキングトップのイザベラ・ニコルス。
オーストラリアレッグから好成績を重ねていた彼女はオーストラリア・クイーンズランド州のクーラムビーチ出身。
2016年にポルトガル・エリセイラで開催されたワールドジュニアで前田マヒナを抑えて優勝している。
QSでは2015年から毎年惜しいポジションにいたが、2019年はオーストラリアレッグから好成績を重ね、シーズン後半は10,000『ABANCA Galicia Classic Surf Pro』で5位、6,000『Port Stephens Toyota Pro』で優勝して文句なしのCT入りを確定させた。
セージ・エリクソン、キーリー・アンドリューの2名は返り咲き、ブロンテ・マコーレー、ブリッサ・ヘネシー、メイシー・キャラハンの3名はCT選手なので、ルーキーとしてデビューするのはイザベラ一人のみ。
CTというのはそれだけ狭き門なのだ。
なお、シルヴァナ・リマ、ココ・ホー、ペイジ・ハレブの3名はCTから脱落。
2020年はQSからやり直すか、引退を強いられるだろう。
ウィメンズCT第10戦『ルルレモンマウイプロ』結果
1位 ステファニー・ギルモア(AUS)
2位 タイラー・ライト(AUS)
3位 タティアナ・ウェストン・ウェブ(BRA)、カリッサ・ムーア(HAW)
5位 サリー・フィッツギボンズ(AUS)、ジョアン・ディファイ(FRA)、ニッキ・ヴァン・ダイク(AUS)、キャロライン・マークス(USA)
2019 Women’s Championship Tour 最終ランキング
1位 カリッサ・ムーア(HAW) 59,940pt
2位 キャロライン・マークス(USA) 55,545pt
3位 レイキー・ピーターソン(USA) 55,125pt
4位 ステファニー・ギルモア(AUS) 49,810pt
5位 サリー・フィッツギボンズ(AUS) 48,950pt
WSL公式サイト:http://www.worldsurfleague.com/
(空海)