今年で37回目を迎えたオアフ島・ノースショアを舞台とした伝統のトリプルクラウン
6週間に渡ってハレイワ、サンセットビーチ、パイプラインで3イベントが開催され、トータルポイントでタイトルが決まる。
最多獲得記録はサニー・ガルシアの6回。
アンディ・アイアンズ、デレク・ホーが4回、ジョエル・パーキンソン、ジョン・ジョン・フローレンスが3回と続く。
トリプルクラウンのタイトル、ワールドタイトルに加え、今年は2020年東京オリンピックの出場権やケリー・スレーターのフル参戦や、怪我で欠場が続いていたジョン・ジョン・フローレンスの復帰などが加わり、大自然の恩恵も受けて例年になく盛り上がったシーズンだった。
そんな2019年のトリプルクラウンを振り返ってみよう!
初戦『ハワイアンプロ』はポルトガルのフレデリコ・モライスが優勝!
ノースショアの玄関口でもあるハレイワで開催された初戦『ハワイアンプロ』
現地時間11月24日に迎えたファイナルデイは10ftクラスの新しい西北西ウネリ、冬のノースショアらしいダイナミックな舞台でマニューバー勝負となった。
過去10年の『ハワイアン プロ』を振り返るとジョーエル・パーキンソン、タジ・バロウ、ウェイド・カーマイケル、フィリッペ・トレドなどハワイアン以外の選手が優勝するケースが多い。
今年はポルトガル、イタリア、南アフリカ、オーストラリアと多国籍なファイナリストが揃い、パワーサーフィンが武器のポルトガルのフレデリコ・モライスが優勝。
この優勝でQS10,000ポイントを稼ぎ、クオリファイを確実にした。
「ハワイに帰って来れて嬉しいね。ハワイでは3度ファイナルに進出の経験がある。2位が2回、4位が1回。ハワイに戻って念願の優勝を成し遂げ、目標であったツアーにも返り咲いた。本当に嬉しいよ。昨年のパイプラインは足首の怪我で欠場したのさ。あの時は辛かったね。復帰した今年、最高の旅になったよ」
フレデリコ・モライス
なお、意外にも『ハワイアンプロ』無冠のケリーはQFまで強かったものの、SFであっけなく敗退して7位に。
『ハワイアン プロ』結果
1位 フレデリコ・モライス(PRT)
2位 レオナルド・フィオラヴァンティ(ITA)
3位 マシュー・マクギリヴレイ(ZAF)
4位 イーサン・ユーイング(AUS)
第2戦『ヴァンズ ワールドカップ オブ サーフィン』はジャック・ロビンソンの圧勝
第2戦はオープンフェイスのビッグマニューバーとインサイドセクションでのバレルが特徴のサンセットビーチを舞台とした『ヴァンズ ワールドカップ オブ サーフィン』
マイケル・ホー、ジョエル・パーキンソンが3度の最多優勝記録を持つこのブレイクはスタイルとパワーが要求される。
ファイナルデイとなった現地時間12月2日は公式10-12ftレンジのオフショア、パーフェクトコンディション。
ウエスタンオーストラリア出身の21歳、ロボことジャック・ロビンソンが見事なバレルライドの連続でトータル19.07の圧勝。
MCが’ジャック・ロビンソンショー’と称するほどの一人舞台だった。
「沢山の時間をここで費やしてきた。多分、サンセットは縁起が良い場所なんだろうね。おかげでファイナルは思い通りに戦えたよ。ここまでの積み重ねもあるよね。しばらくの間、ベストを尽くせるような機会に恵まれなかったんだ。だから、今回はチャンスを利用してベストを尽くした。最高のタイミングでピークに達したと思う」
ジャック・ロビンソン
この優勝でロボはQSランキング5位に浮上して念願のCT入りを決めた一方、優勝がリクオリファイの条件だったジークことエゼキエル・ラウが2位となり、ツアー脱落に…。
2戦連続ファイナル進出のイーサン・ユーイングはCT返り咲きを果たしたのに加え、トリプルクラウンのカレントリーダーの座を手に入れた。
今イベントでも無冠のケリーはガブリエル・メディナのキャンセルした枠で出場。
25位でフィニッシュしていた。
『ヴァンズ ワールドカップ オブ サーフィン』結果
1位 ジャック・ロビンソン(AUS)
2位 エゼキエル・ラウ(HAW)
3位 イーサン・ユーイング(AUS)
4位 コディ・ヤング(HAW)
最終戦『ビラボン パイプマスターズ』 イタロとガブリエルの一騎打ち
今年のパイプマスターズは前半戦、トライアルも含めてグッドコンディションに恵まれたが、中盤はトレードウィンドが強く、ウネリの向きも合わずに1週間レイデイが続いた。
ファイナルデイはウェイティングピリオド最終日の前日、現地時間12月19日。
トレードウィンドが強く、決してパーフェクトなパイプラインではなかったが、いくつかの素晴らしいバレルライドも生まれ、最終戦にふさわしい盛り上がりだった。
イタロ・フェレイラ、ガブリエル・メディナ、ジョーディ・スミス、フィリッペ・トレド、コロへ・アンディーノの5名によるタイトルレースはフィリッペ、ジョーディがR3(Round of 32)で敗れ、R4(Round of 16)ではコロへも敗退してしまい、イタロとガブリエルの一騎打ちに。
ガブリエルvsジョン・ジョン、イタロvsケリーというゴールデンカードを経て、この二人がファイナルで対戦。
優勝した方がワールドタイトルを獲得する最高のシナリオになった。
R4でカイオ・イべりとの因縁の対戦を計算されたインターフェアで切り抜けた場面では解説者のバートン・リンチに「プロサーフィンの歴史の中で最も賢い戦術かもしれない」と言われ、QFではパイプラインの目の前で生まれ育ったジョン・ジョンに対してプライオリティの妙技で圧勝したガブリエル。
ディフェンディングチャンピオン並びに昨年2度目のワールドタイトルを獲得した経験はイタロに勝るだろうとの声が大きかったが、ファイナルで先行したイタロのペースに呑まれてしまい、ここまでの集中力が切れてしまった様子。
逆にイタロはシェーン・ドリアンという素晴らしいコーチを持った自信と忍耐力で2本の7ポイント台を重ねて優勝。
初のワールドタイトル、パイプマスターを獲得して野獣のように感情を爆発させていた。
「優勝だなんて本当なの?嘘みたいだよ。このトロフィーを手に入れるために一生を捧げてきたのさ。これは亡くなった祖母と叔父に捧げる…。パイプには1ヶ月前に来てボードのテストとトレーニングを重ねていたよ。このトロフィー、自分にとって言葉では説明出来ないような大きな意味があるね。ケリー、ガブリエル、ヤゴ、全てのサーファーと良いヒートになった。彼らに沢山のエネルギーを与えられ、一日一日ベストを尽くしたんだ」
イタロ・フェレイラ
CT初優勝を果たした昨シーズンも然り、強い時と弱い時の差が大きかった過去のイタロ。
2019年も開幕戦で優勝、南アフリカで2位と結果を残しながらも成績に波があった。
しかし、9月に宮崎で開催された『2019 ISAワールドサーフィンゲームス』で大遅刻から金メダル獲得と奇跡的な「イタロ劇場」の主役となったのをきっかけに強運を引き寄せ、ヨーロッパレッグではフランスで2位、ポルトガルで優勝。
カレントリーダーとしてハワイ入り、同じビラボンチームのシェーンの元でどんな波でも練習を重ねた成果が最後に報われたのだ。
CT第11戦『ビラボン パイプ マスターズ』結果
1位 イタロ・フェレイラ(BRA)
2位 ガブリエル・メディナ(BRA)
3位 ケリー・スレーター(USA)、グリフィン・コラピント(USA)
5位 ヤゴ・ドラ(BRA)、ジャック・フリーストーン(AUS)、ジョン・ジョン・フローレンス(HAW)、ミシェル・ボウレズ(PYF)
2019 CT最終ランキング
1位 イタロ・フェレイラ(BRA) 59,740pt
2位 ガブリエル・メディナ(BRA) 56,475pt
3位 ジョーディ・スミス(ZAF) 49,985pt
4位 フィリッペ・トレド(BRA) 49,145pt
5位 コロへ・アンディーノ(USA) 46,655pt
キングケリーが47歳で3xトリプルクラウンを達成
1990年代、オッキーやサニーなどと争っていたまだ20代の全盛期の頃にマイケル・ホーに並ぶ2度のトリプルクラウンの座を手に入れていたキング・ケリー・スレーター。
47歳、現役最後の年と言われていた2019年、37年目となったトリプルクラウンにも久々にフル出場した。
初戦のハレイワで7位に入り、次のサンセットビーチはガブリエルがキャンセルした枠に滑り込み、25位。
トリプルクラウンのランキング10位で最終戦のパイプへ。
トップはイーサン・ユーイング。ケリーとミシェル・ボウレズは3位以上、ジャック・フリーストーンは優勝すればトリプルクラウン獲得というシチュエーション。
ライバルのジャックとQFを戦ったケリーはブザービーター、SF進出3位で見事に3xトリプルクラウンを達成した。
2020年東京オリンピックの出場権争いはジョン・ジョンに負けてしまったが、21年振りのトリプルクラウン獲得。
久々のトロフィー、それもスペシャルな贈り物に上機嫌で、「ガブリエルが贈り物をくれたみたい。来年もう一周するかもしれないね」と答えていた。
2019 トリプルクラウンランキング
1位 ケリー・スレーター(USA) 13,900pt
2位 イーサン・ユーイング(AUS) 13,750pt
3位 ミシェル・ボウレズ(PYF) 12,700pt
4位 エゼキエル・ラウ(HAW) 12,600pt
5位 フレデリコ・モライス(PRT) 12,200pt
2020年東京オリンピック出場権獲得者
2020年東京オリンピック出場の優先順位で最上位となる2019年CTランキング。
メンズは10名、各国最大2名の枠が用意され、最終戦の結果で全ての枠が埋まった。
最も注目されていたアメリカ代表の残り1枠。
ケリーとジョン・ジョンの争いはファイナルデイまでもつれ込んだ。
第5戦のブラジルで右膝靱帯を再発、欠場が続いていたジョン・ジョンだったが、シーズン前半の好成績でケリーのランキングを上回っていた。
更にオリンピック出場権獲得を確実にするために8月にはパイプラインでの復帰を示唆していた。
復帰後もフリーサーフィンは数回と最初のヒートはウォーミングアップのような状態だったが、QFまで残り、最終ランキングでケリーを一つだけ上回り、オリンピック出場の目標を達成した。
「最高の気分だね。このイベント、パイプマスターに戻ってきた目標が達成出来たし、嬉しいね。膝の回復のために出来る限り少ないヒート数でサーフィンしたかったんだ。オリンピックでアメリカを代表することが出来ることは本当に嬉しい。ここハワイでのみんなのサポートなしでは達成出来なかったさ。1ヶ月前までサーフボードに立つことさえ出来なかった自分が今日ここでガブリエルとQFを戦えた。これは自分の望む以上のものだったよ」
ジョン・ジョン・フローレンス
2020年東京オリンピック出場権CT枠10名
アメリカ
コロへ・アンディーノ、ジョン・ジョン・フローレンス
オーストラリア
オーウェン・ライト、ジュリアン・ウィルソン
ブラジル
ガブリエル・メディナ、イタロ・フェレイラ
フランス
ジェレミー・フローレス、ミシェル・ボウレズ
日本
五十嵐カノア
南アフリカ
ジョーディ・スミス
『Vans Triple Crown of Surfing』公式サイト:http://www.vanstriplecrownofsurfing.com/
(空海)