現地時間9月10日、WSLはビッグウェーブアワードの残っていたアワード、「RIDE OF THE YEAR」の受賞者を発表。
同時に先に公開されていた「XXL BIGGEST WAVE」の受賞者、ブラジル出身のマヤ・ガベイラの乗ったポルトガルのナザレの波が73.5ftのギネス世界記録を更新したことも発表。
マヤは2018年にポルトガルのナザレで68ftの波に乗り、ギネス世界記録達成をした本人。
自身で記録を塗り替えたことが大きな注目を集めている。
今年2月に開催された『Nazare Tow Surfing Challenge』の中で山のような巨大なナザレの波に乗ったマヤ。
これは同部門のメンズを制したカイ・レニーの70ftを上回る大記録だ。
「私は以前からコンテスト向きではないと言っているけど、あの波は’Nazare Tow Surfing Challenge’の時で、いつもより勇気があってゾーンに入っていたの。ジェットスキーで牽引され、ロープを離した時、確信はなかったものの、これはいけるかもと思ったのよ。凄いスピードだった。波がブレイクした時の音を聞いてこれまで乗った波で最大だと思ったわ」
マヤ・ガベイラ
ウィメンズサーファーのレベルの高さを証明したマヤの大記録
「この世界記録がメンズの優勝者よりも大きな波だったことに本当に驚いている。今年最大の波に女性が乗ったことを意味しているのよ。私にとって何年も夢見てきたことで、現実的ではなかった。それが可能だと信じていた私だけど今まで実証出来なかったの。今回、達成したのは信じられないことよ。この世界は男性優位と見られているので、女性が代表することになったのは本当に珍しいケースよ」
マヤ・ガベイラ
なお、この波を記録した同イベントで優勝したジャスティン・デュポンも巨大なナザレの波をメイクしており、サイズ的にはマヤの波と2〜3ftしか変わりない。
このタイミングでギネス世界記録の更新を発表したのは、二人が信じられないほど接戦であり、記録更新の可能性を秘めていたため、データの審査が重要であると判断したのだ。
WSLはWaveCo サイエンスチーム、スクリップス海洋学研究所、南カリフォルニア大学航空宇宙機械工学科のメンバーを含む特別な科学チームを形成。
ビデオ、写真、カメラの位置やレンズのパラメータ、潮、太陽光、波の設定などのあらゆる環境条件に基づいて解析された。
更にナザレの崖の高さなどの幾何学的パラメータの推定に基づき、画像座標を実世界の座標に変換するために共線性方程式を使用。
サーファーの身長、サーフボードやジェットスキーの寸法、サーファーがしゃがんだ時の高さの推定値など画像の固定基準も科学的計算に利用した。
本来は8月24日だった発表日が9月10日まで遅れたのは、ここまで厳密に解析が行われていたのが理由だ。
「私はジャスティンの大ファンなのよ。彼女がナザレに取り組んでいる姿勢も含め、自分を追い込み続けた理由の一つだと思う。数年前の引退の危機の時も彼女の進化を目の当たりにして、あと数年は自分もついていかなければと思ったの。あんな大きな波になるとは思っていなかったけど、走り続けたし、ナザレでの時間を楽しんだ。あの波は特別だったし、かなり恐ろしかったわ」
マヤ・ガベイラ
ジャスティン・デュポンがWSLを痛烈批判
ちなみに今回のギネス世界記録更新にはすっきりしない問題が浮上。
マヤと同じく2月11日の『Nazare Tow Surfing Challenge』に参加し、ギネス記録が審議されていたジャスティン・デュポンが、今回のWSLの判断は誤審であるとSNSで痛烈に批判している。
実はマヤは最後まで波をメイクしていなく、通常であればカウントされない1本であったこと。科学チームによる「マヤの波は(ジャスティンより)大体2~3フィート高かった」という曖昧な表現にも不服を訴えているのだ。
「WSLは波を乗り切らなかったサーファーへ、ビッグウェーブの世界記録を授与すると公表したわ。この不公平な決定に私はとても傷ついたけど笑顔でいるって決めた。サーフィンを代表している団体がWSLだなんて、すごく残念だし恥ずかしい。“approximate(おおよそ)”なんて曖昧な言葉だらけの科学者の報告書を基にジャッジしてるんだもの。」
ジャスティン・デュポン(Instagram投稿より一部抜粋)
ジャスティン・デュポンが「RIDE OF THE YEAR」を獲得
それでも、この『Nazare Tow Surfing Challenge』で優勝していたジャスティン・デュポンは、すでに発表されていた「PERFORMANCE OF THE YEAR」に加え「RIDE OF THE YEAR」も獲得した。
現在29歳のジャスティンはこれからもビッグウェーブのレベルを押し上げていくサーファーになることは間違いないだろう。
「本当に特別な波だった。波の形もそうだけど、サイズや、あれを収めた映像、全てのアングル。誰もが本当に特別な波だと言ってくれたわ。全てがこの波を特別なものにしてくれたし、コミュニティの皆んながこの波について話してくれたことは大きな報酬だった。女性のためのパフォーマンスではなく、サーファーのためのパフォーマンスよ。それにカイとルーカスが私が乗ったこの波に乗りたいと切望していたことも、特別だったわ。’RIDE OF THE YEAR’を受賞したということは、あの特別な波で最高のラインを滑り、成功したってことね」
ジャスティン・デュポン
「2020 Red Bull Big Wave Awards」受賞者
■RIDE OF THE YEAR
Justine Dupont (Seignosse, France) at Nazaré, Leiria, Portugal on February 11, 2020
Billy Kemper (Haiku, Hawaii) at Jaws, Maui, Hawaii on January 23, 2020
■cbdMD XXL Biggest Wave
Maya Gabeira (Rio de Janeiro, Brazil) at Nazaré, Leiria, Portugal on February 11, 2020
Kai Lenny (Paia, Hawaii) at Nazaré, Leiria, Portugal on February 11, 2020
■PERFORMANCE OF THE YEAR
Justine Dupont (Seignosse, France)
Kai Lenny (Paia, Hawaii)
■BIGGEST PADDLE OF THE YEAR
Paige Alms (Haiku, Hawaii) at Jaws, Maui, Hawaii on December 12, 2019
Eli Olson (Haleiwa, Hawaii) at Jaws, Maui, Hawaii on December 12, 2019
■WIPEOUT OF THE YEAR
Keala Kennelly (Honolulu, Hawaii) at Jaws, Maui, Hawaii on December 12, 2019
『2020 Red Bull BIGWAVE AWARDS』(空海)